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細野晴臣夢日記
HARUOMI HOSONO DREAM DIARY

2007年の3月に、
細野さんと横尾忠則さんのお宅にうかがい、
この夢日記の、さし絵をお願いしました。
そして待つこと4年。
こんにちは、ハリーです。
(ハリー細野じゃなくて、「ほぼ日」のハリーです。
 ややこしくてすみません)
あれから4年がたちました。

この間、風のたよりに
「まだ動きなし」
「そろそろ描きそうだ」
「いよいよ描くらしい」
「やっぱりやめたらしい」
「なぜか細野さんの顔写真を集めているらしい」
など、さまざまな噂が聞こえてきました。

時間が経つというのは、おそろしいもので、
さいしょはしきりに気をもんでいたのが、
「いつか描いてくれたらいいな」を経て、
やがては「描いてくれら、もうけもの」という境地に至り、
このごろは、そんなことさえすっかり忘れて‥‥。

で、ついこないだのことです。
細野さんのマネージャー
谷本さんから電話がかかってきました。

「横尾さんの絵、とうとうできたんです!」

うお! ほんとですか!
夢のさし絵が、4年の歳月を経て、いま完成‥‥。

あまりに度はずれの、雄大な時間の感覚に、
なんだか頭がくらくらしてきました。
ふつうなら呆れるところでしょうが、
むしろありがたい気持ちになってしまうのが、
我ながらおもしろい。

「ただ、どうやら夢の絵じゃないみたいで‥‥」

いやもう、描いてくださったのなら、なんでもいいです。
というわけで、細野さんともども、
いそいそと横尾さんのアトリエに向かいました。


細野さんと横尾さん、おはぎを食べるの図

すぐにでも拝見したいところですが、そこは二人とも大人。
おはぎを食べて談笑したり、すきなCDをさがしたり、
なかなか本題に入りません。


細野さんと横尾さん、CDを物色するの図

そしてようやく、そのときが来ました。

横尾 6月に岡山県立美術館で個展をやるんですよ。
学芸員のひとが、この絵もぜひ展示したいって。
細野さんの了解を得ないといけないところだけど、
まあ、もうカタログに載っちゃったからね。
事後承諾ということで(笑)
細野 ぼくはまだ見てもいないのに(笑)
横尾 じゃあ、見ますか?
細野 ぜひ。
横尾 持ってくるから、目をつぶって。
細野 はい。
横尾 1、2、3、はい!



細野 うわーーーーーっ!!!
ははははははははは!


あまりにすごいんで、もういちどご覧ください。
せっかくだから、絵だけをさらに拡大して。
細野 まずは笑うね(笑)
ふっふっふっふっふ。
横尾 これ見たひとは、だれでも笑うね。
細野 胸が、すごいよね。
横尾 両性具有者だからね。
細野 この、持ってる楽器は?
横尾 マルセル・デュシャンの抽象絵画があって、
そのなかの形態の一部を引用したの。
だから、ほんとは楽器じゃない。
あと、iPadと、たばこのチェリーも入れたよ。
細野 これは記念になるね。
チェリーはもう生産中止ですから。
これ、タイトルは?
横尾 『ハーレム・ミュージシャン』っていうの。
細野 すごいタイトルだ。
横尾 ほら、ここに女性がいるでしょ?
ちょっと色の浅黒い、異国的な。
細野 ほんとだ。足がある。
横尾 もともと、細野さんの夢の絵を
描いてほしいという話だったけど。
細野 もう、まったく関係ない絵ですね(笑)
横尾 だって4年もたつとさあ、やっぱりね(笑)
細野 (笑)
いいんです。
描いていただければ、もうそれだけで。
横尾 でもこれはもう、
夢でしか、ありえないじゃないですか。
細野 たしかに、現実ではありえないですね。
横尾 だからこれはやっぱり、夢の絵。
細野さんの夢であるし、同時にぼくの夢でもある。
細野 ああ、なるほど。
いやあ、でも、すごくうれしいな。
注文すれば、4年たっても描いてくれる(笑)
横尾 生きてるあいだに描けてよかった(笑)
細野 みんなに見せたい。
横尾さん、ありがとうございました!

というわけで、結果的に、
なんだかすごくいい締めになりました。

4年の歳月を経て、
「細野晴臣夢日記」、ここに堂々完結です。
ご愛読、ありがとうございました!

絵:横尾忠則
解説
ついに、やっと、とうとう‥‥
足掛け4年の歳月をかけてこの「夢日記」に
ピリオドをうつことができる。
時間がかかっても来るべき時は来るものだ。
横尾忠則さんに依頼していた最終回の絵が完成したのだ。
それは既に「夢日記」のアイディアを飛び越えた、
というよりも忘れたかのような絵だった。
そりゃそうである。4年の歳月は物事を抽象化して当然だ。
その2007年、
ほぼ日サイトで連載していたのが「夢日記」だったが、
その最終回を飾るにふさわしい絵を
横尾さんに依頼しようということになり、
ぼくの見た夢を元にしていただくため、
「二匹のアナコンダ」というテーマでお願いしたのだ。
当初はマンガのような目をしたアナコンダなどを
盛り込んだ構図を考察されていた記憶があるが、
1年2年3年と経ていくうちに夢の痕跡は消えていった。
もうこれは待つしかない。
ぼくも毎月必ず催促に伺う約束をしながら
つい忘れたりした。
ところが今年になって「待ち」の状況に変化が訪れ、
頻繁に横尾さんのアトリエを訪ねる機会があり、
絵の話をすることが多くなった。
ぼくが舌を出した写真は
その時に横尾さんが撮影したものだ。
その後、絵の作業が加速されて今日に至る。
出来上がったという知らせは横尾さんのtwitterで知った。
そこに絵の写真があり、
題は「ハーレム・ミュージシャン」!
すごい。
しかしこれはいったいどういうタイトルだ?
自分自身知り得ない本質を透視したような
絵やタイトルこそ、心地よい悪夢だった。





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細野晴臣
Haruomi Hosono
いわずと知れた「YMO」はもちろん、
「エイプリル・フール」「はっぴいえんど」などのバンド、
「トロピカル3部作」をはじめとするソロ活動、
日本初のサウンド・プロデュース集団
「ティン・パン・アレー」のオーガナイズなど、
気がついたらいつも、新しい音楽の最前線にいて、
「いい音」をつくりつづけている、ナイスな音楽家。

公式ホームページ:Daisy World Wide Web
リリース情報 いまいちばんかっこいい音楽は、こういうのかも。
4年ぶりのソロアルバム「HoSoNoVa」。


「フライング・ソーサー1947」以来、4年ぶりとなる
細野さんの新作ソロアルバムが出ました。
細野さんのボーカルを全面的にフィーチャーした12曲は、
メロディもサウンドもシンプルですが、
これまでに細野さんが聴いてきた
たくさんの音楽から受け取った、
ゆたかな滋味が、たっぷり、ぎっしりつまっています。
立ち止まることなく、音楽の旅をつづける細野さんの
いまの姿、とてもかっこいいです。



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