公演が終わって、気が抜けてぼんやりしてしまったけど、
ようやく現実に戻ってきました。
いま、zAkさんと原田郁子さんがつくってくれた
劇中使用曲のCDを聴きながら書いています。
とにかく、こんなにも人と一緒になにかをつくる、
という経験が初めてでした。
体力気力とも消耗する大変な作業だったし、
迷惑をかけたけれども、
ひとりではなしえなかった成長があったと思います。
言いたい放題しても、
絶対に耳をそらさなかった藤田さん、本当にありがとう。
自分の作品が、こんなにもたくさんの人に
共有してもらえているということだけでも、幸せな2年間でした。

ひとりで『cocoon』を描いているときは、
戦争が怖くて夜に作業することができなかった。
でも、その怖さを忘れてはいけないな。
波のように、ひいて、また寄せるように、
幸福のあとで、誰かの痛みに立ち戻らなければいけない。
つくったものを、こんなの違う、と、
死んだ女の子に突き返されても、
またつくって見せにいくことをやめることはできない。

結局のところ、舞台はどうだったのか? ということに関しては、
冷静になにかをいうには、
私は、中に入りすぎてしまったと思います。
途中までは納得できない部分もあったし、
その答えをみつけることもできなかったけれど、
最後の数日間のステージは、
そういう疑問さえ吹き飛ばす空気がありました。
主演の青柳いづみさんの鬼気迫る表現から
目を離すことができなかったし、
全員の気持ちがぎゅっと濃縮されたうねりのような、舞
台の奇跡みたいなものをみてしまった。
やっぱり、すごい舞台だった、のでしょう。




千秋楽の翌々日、打ち上げをしました。
これでお別れだとおもうと寂しいですが、楽しい会でした。
舞台でメソメソしたキャラだった橘烽ウんが、
やっぱりメソメソしていて面白かった。
自分のことで恐縮ですが、この日、誕生日でした。
私のために「cocoon」の寸劇をやっていただき、
本当に感無量でした。
優しくて格好良くて大好きだった菊池明明さん扮するマユと、
二人のシーン(「ささくれできたって本当?」のくだり)を
演じることができて。
自分のつくりだしたキャラクターと
向かい合って会話をするという、魔法のような時間でした。
スタッフ、キャストの皆さん、
ほんとうに、ありがとうございました。
そしてこの稽古場日記を読んでいただき、
ありがとうございました!
ぜひ、原作を読んでいただきたいなあと思います。
どれだけマームとジプシーが原作や今日マチ子、
出会った役者さんやスタッフの個性に向かい合ってきたか、
なにをすくいとったか。
彼らの才能はもう誰もが知るものです。
2年間の愚直さこそ評価されるべきだと思っています。



この公演中、ずっと、
この舞台にとっての繭ってなんなんだろう、と考えてきました。
この舞台をつくりあげてきたことこそ、
じぶんたちの大きな繭だったんじゃないかな、とも思っています。
いま、繭がなくなって、またひとりひとりに戻って歩き出した。
そんなかんじです。

ひとりになったら、描いていくことしかできないけど。
描いていくしかないんだな。




2013-08-23-FRI

プロローグ
今日マチ子からのご挨拶
2013年6月14日
第1回
マンガ「cocoon」が始まるまで
2013年6月25日
第2回
マームとジプシーとの2年間
2013年6月28日
第3回
マームとジプシーと沖縄へ
2013年7月02日
第4回
マームとジプシーと
オーディション
2013年7月05日
第5回
役者さんたちと夏の沖縄へ
2013年7月09日
第6回
物語を組み立てはじめる
2013年7月12日
第7回
『mina-mo-no-gram』
について
2013年7月16日
第8回
『cocoon』から
『アノネ、』へ
2013年7月19日
第9回
あと2週間!
2013年7月23日
第10回
男子とユリイカ。
2013年7月26日
第11回
音をつくる。
2013年7月30日
第12回
枠とコマ。
2013年8月02日
第13回
本番直前!
2013年8月06日
第14回
幕開けと〆切
2013年8月09日
第15回
これじゃあ、ダメだ!
2013年8月13日
第16回
「cocoon」と繭
2013年8月16日
第17回
配役表
2013年8月20
最終回
手をのばしつづける。
2013年8月23日
第15回
これじゃあ、ダメだ!
2013年8月13日








『アノネ、』(上)
秋田書店 998円



『アノネ、』(下)
秋田書店 998円










※公演は終了しました。

マームとジプシー8月公演
「cocoon」
日程:2013年8月5日(月)〜18日(日)
会場:東京芸術劇場シアターイースト
原作:今日マチ子『cocoon』(秋田書店)
作・演出:藤田貴大
音楽:原田郁子(クラムボン)

※詳細は「マームとジプシー」の公式サイトまで。