『cocoon』の続編のような気持ちで描いたのが
『アノネ、』という作品です。
アンネ・フランクやホロコーストを題材に、
同じくフィクションという形をとりました。
『cocoon』は、
描いた当時は精一杯やりきったつもりですが、
どうしても物語としての面白さが伝わりにくかった。
沖縄戦、ひめゆり学徒隊、というような
悲劇的な題材にひっぱられてしまい、
「戦争マンガ」「平和教育的なマンガ」というように
読まれてしまうことも多かったのです。



わたしが本当に描きたかったのは、
歴史の悲劇のなかで、
封印されてしまった少女の気持ちでした。
いまの女子高生とおなじように、
恋をしたり、くだらない話をしたり、
嫉妬したり、イライラしたり、
しょうもない子だったはずなのに、
教科書のなかにとじこめられてしまったこと。
さいわい、『cocoon』は「マームとジプシー」により
舞台化されることになりました。
だから、彼らに、わたしができなかったこと、
少女達をあらゆる戦争漫画の文脈から
離れて自由にさせること、を託しました。



そんなもろもろの反省を経て『アノネ、』を描きました。
世界一有名な少女、アンネ・フランクと、
20世紀の大悪人として
憎まれつづけるアドルフ・ヒトラーを、
フィクションの世界に引き入れました。
どちらも歴史の中に封印される前は、
一人の少年少女であったはず。
もういちど、彼らを自由にできたら。
少しでも彼らの気持ちを想像し、寄り添うことができたら。
『cocoon』も『アノネ、』も、
戦争の恐ろしさを駆け抜けたあとは、
ただのラブストーリーとして
読んでもらえればいいな、と思っています。
そして、次の作品では、
被害者としての少女ではなくて、
加害者となってしまった人間の気持ちを描きたい。
来年にむけて準備しているところです。





2013-07-19-FRI



『cocoon』と同じく、
少女の目線から戦争が描かれている
ストーリーマンガ。
下巻の帯に元AKB48の前田敦子さんが
推薦コメントを寄せていることにも注目です。
ぜひ、手にとって見てみてください。


『アノネ、』(上)
秋田書店 998円



『アノネ、』(下)
秋田書店 998円