『cocoon』舞台化をきめてから
いままでの2年間に、
「マームとジプシー」と共同作業をすることで
お互いを理解を深めていったことを、
第2回「マームとジプシーとの2年間」で描きました。
2012年夏の「マームと誰かさん」で舞台を共作したあと、
今度はマンガでやってみよう、と
取り組んだのが
「mina-mo-no-gram(ミナモノグラム)」です。

共作とはいえ、藤田さんがテキストを書き
それをもとに私がマンガを描く、
という流れを考えていたものの、
いざはじめてみると
テキストがなかなかあがってこない‥‥!
結局、私の仕事場で二人で考えて
その場でつくる、という合宿方式になりました。
机で向かい合って1日中カンヅメです。
ふたりで話をちょっとずつ考えながら、
藤田さんがテキストを書き、
それにあわせてマンガのネームを描き、
それをみながらまたテキストを調整し‥‥という感じで
1ページずつ進めていきました。



『cocoon』にむけて、
マンガと演劇のリズムを探っていくこと、
ふたりがそれぞれに大切にしていることを
探るのが目的でもありました。
演劇の身体の動きをマンガに取り入れるために、
実際に役者さんの動いている写真を撮ったりしました。
ふだんのマンガを描くよりも
10倍以上の時間がかかったけど、
わたしにとっても新しい表現や可能性を
みつけられた作業でした。



『mina-mo-no-gram』では、
マームとジプシーの作品に登場する
実際の役者さんたちを、
マンガのなかでも出しています。
青柳いづみさんは
『cocoon』でも主人公・サンを演じ、
マンガの中でも主人公「青柳いづみ」として登場します。
これはとても奇妙なことで、
マンガの中の彼女は青柳いづみであり、
藤田貴大でもあり、
今日マチ子でもあるのです。
「ほんとう」と「おはなし」を
行ったり来たりしている作品になりました。

とはいえ、マンガと演劇の共作ではありますが、
マンガ本として、
ひとりの女の子の17才から27才までの
痛すぎる日々を描きました。
アルバムには残らないけど、
ずるずると思い出してしまうこと。
親友との別れ、恋愛の終わりのみっともなさ、
十分に大人なのにうだつの上がらない自分‥‥
誰もがわかるようなできごとを、
全く新しい感覚で描けたと思います。



詳しくは
「ユリイカ8月号」の今日マチ子特集
ヒップホップ・グループ
「Rhymester(ライムスター)」の
MC・宇多丸さんと対談しましたので、
そちらも是非。

最後に、
『mina-no-mo-gram』にいただいた
宇多丸さんの帯コメントを。

「人は、絶えず“記憶”に囚われ、
 同時にそれを書き換え続けてもいる——
 ——そうした意識の流れそのものが、
 水というモチーフを中心に可視化され、
 新たなグルーヴ=物語を織り成してゆくスリリングさ!
 異ジャンル間の真摯な対話が探り当てた、
 フレッシュな表現領域がここにある。
 宇多丸(Rhymester)」




2013-07-16-TUE



女性コミックス誌『もっと!』(秋田書店)で
連載されていた、
今日さんと藤田さんの共作
『mina-mo-no-gram』の単行本が
発売されました!

『mina-mo-no-gram』は、
『もっと!』vol.1からvol.3まで
掲載された3部作で、
その第1回目は100ページという大長編マンガでした。
1ページマンガを得意としていた今日さんにとって、
これだけでもかなりの挑戦作です。

それだけでなく、
『mina-mo-no-gram』では、
藤田さんの演出の特徴である、
同じ場面を別の角度から何度も繰りかえす
「リフレイン」が表現されていたり、
演劇の台本で
セリフ以外の人の行動や情景が書かれた「ト書き」が
コマに散りばめられていたり、
藤田さんの舞台ならではの
エッセンスが練り込まれているんです。

マンガ家の今日さんと劇作家の藤田さん、
2人のエッセンスが
ぎゅっとつまった1冊です。
ぜひ、手にとってみてください。