【よこく3】
			中野さんのトマトができるまで(後編)

永田農法との出会いから30年、
トマトひとすじの農家として
地道な努力を続けてきた中野さん。
その姿を間近でみていた長男・勝さんは、
中野さんの栽培方法を継承しつつも、
さらに究極のトマトをつくるために、
日々、さまざまな工夫をしています。
ハウスのなかに夕陽と同じ色のLEDを設置し、
その光の効果について効果検証したり、
2014年には、39棟のハウスすべてに
念願の「雨どい」をつけたり。

「水分を極限まで控えて育てているので、
 いちばんの大敵は雨なんです。
 ビニールハウスなら
 雨がふっても大丈夫と思うかもしれませんが、
 ハウスの端っこには、どうしても
 流れ落ちた水がたまります。
 その水を、端のほうに植えてあるトマトが
 根を伸ばして吸い上げて、水っぽくなってしまうんです。
 それで手作りの雨どいをつけて、
 雨水を遠くに排出するようにしました。
 結果は大成功、本当につけてよかったです」
(勝さん)

さらに2015年は、雨どい効果に加えて、
5月の天候がとてもよかったこともあり、
はじめての平均糖度10度を記録!

中野さんがトマトを切って断面図を見せてくれました。
「ふつうのトマトはゼリー状の部屋が
 4部屋くらいしかありませんが、
 このトマトは部屋数がたくさんあるんです。
 しかも果肉が厚くて、1つ1つの部屋が小さいから、
 ゼリー部分が流れ出てこないんです」

輪切りにしてみると、トマトの部屋数がたくさん。

そのトマトをまるごと使った
トマトジュースが、おいしくないわけがありません。
味見させていただくと、
濃厚で、あまくて、とろっとしていて‥‥。
トマトのさわやかな香りが、
口のなかいっぱいに広がります。
巷に「あまい」といわれているトマトジュースは
数多くありますが、このトマトジュースは
あまいだけでなく、
後味がさっぱりとしていて、
すごく「特別なもの」という感じがします。

その理由を中野さんが教えてくれました。

「ミニトマトであまいジュースを
 作っているところは多いけれど、
 大玉トマトでここまであまくて、
 おまけにそれをジュースにしているところは
 ほとんどないと思います。
 大玉トマトならではの酸味が入っているから、
 飲んだときにくどさを感じず、
 さっぱりしているんです」

「今年はすごくいい年で、糖度も10という
 最高レベルのものができました。
 ただ、これは自分たちの技術の問題だけじゃなくて、
 天候のおかげということも大きいんです。
 それに、こっちは10度になったと
 誇らしげに言ったとしても、
 9度の方がいいという方もいるでしょうし、
 そのあたりは好みがありますから、
 単純に糖度だけを追い求めてはいけないと思います。
 ただやっぱり、どうにか一定のレベルの
 ジュースにしなければ、と思いながら作った結果として、
 お天気に恵まれ、そして、おいしいものができた。
 そのことがうれしいです」

淡々と語ってくださる中野さん。
それでも、たくさんの方の
「おいしい」という声が何よりの励みになるとおっしゃいます。


			全国からの「おいしい」という声が
			ご一家のもとにも届いています。

			「本当にあまいです」

			「濃厚なのに、くどくない!」

			「塩分が入っていないので、
			 健康に気をつけている友人にプレゼントしました」


			赤いので還暦祝いにもおすすめです。

ひとくち飲むと、
もぎたてのトマトのさわやかな香りが
口内いっぱいにひろがります。

また、未開封で約2年保存できるため、
ワインのように寝かせてから飲むという
たのしみかたもできるんです。


			「すぐに飲むと、さわやかな酸味をよりたのしめる。
			 しばらく置くと、まろやかな味わいになって、
			 それもまたおいしいですよ」

			※開封したら、すぐに飲みきってくださいね。
			(中野さん)

© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN    illustration : Sayaka Hano, Kyoko Tsuda(logo-mark)