── このすごい望遠鏡で
個人的に、調べてみたいことって何ですか?
平松 私は、人間のルーツに興味があるんですが、
それに関連して
地球や太陽系のルーツを調べたいです。
 
── なるほど。
平松 たとえば、太陽の何倍も重たい星の場合は
一生がもっと短いんです。

1億年で死んじゃう星とかも、あるんです。
── 1億年。
平松 そんな星では、生命の進化は期待できない。
── 1億年じゃ、短すぎて。
平松 もっと暗い星なら、寿命は長いかもしれないけど
そのかわりに光が足りず
まわりの惑星は、寒い世界になってしまいます。

そこでも、生命が生まれる可能性は、あまりない。
── ええ、ええ。
平松 つまり、生命が誕生する条件が整うためには
やはり「真ん中の星」が、とても重要なんです。
 
── 太陽って、本当にありがたい存在なんですね。
平松 私たちの太陽は「一人っ子」ですけど、
たとえば「双子の星」が太陽の場所にいるような
惑星系もあるんです。

そうすると、
そのまわりを回る惑星系には
また、いろいろと複雑なことが起きてくるんです。
阪本 太陽の隣の恒星、三つ子だもんね。
── そうなんですか。

双子の太陽をまわる惑星の日没、の想像図。幻想的というか何というか‥‥。
©NASA/Ames Research Center/Kepler Mission

阪本 ぼくらは太陽系に住んでいますから
「中心の星がひとつだけ」が当たり前みたいに
思いがちですけど、
じつは、必ずしもそうじゃないんです。

双子もいれば、三つ子もいる。
平松 銀河系の恒星の半分以上は、双子や三つ子です。
── それでは、阪本さんのご興味は?
阪本 僕はポワポワ系。
 
── ‥‥と、おっしゃいますと。
阪本 星間分子雲の研究を専門にやってたんです。
宇宙の霞みたいなのが好きで。
── 宇宙の霞。
阪本 星雲の一種で、ほとんどが水素分子の塊。
そんなのが、宇宙に浮いてるんですよ。
── へぇー‥‥。

ポワポワ系とは、たとえばこのような。
©NASA/JPL-Caltech/WISE Team

阪本 そこから星が生まれてきたりするんですけど、
最初の興味は
やっぱり「目で見えないものが見えた」こと。

僕、学生のころに
世界最小の電波望遠鏡をつくったんですけど
それで天の川を観測したら
僕の大好物である
ポワポワした雲たちのうごめきが見えて。
── はー‥‥。
阪本 ま、相当マニアックな話ですけどね。
── そうなんですか、天文学のなかでも。
阪本 もちろん銀河の観測をしたり
自分の興味で
他にもいろんなことをやってはいるんですが。
── でも、いちばん好きなのが‥‥。
阪本 ポワポワ系。
 
── わかりました。

あの、時間もなくなってきたようなので
若干唐突ではありますが、
「宇宙の果て」って、あるんでしょうか。
阪本 よく聞かれますよ、その質問。

講演会などをやっていて出てくるのは
「宇宙の果てはあるんですか。
 あるとしたら
 その先はどうなっているんですか」
という質問と
「130何億年前に
 宇宙がはじまったと言いますけど
 その前は何だったんですか?」
という質問。
── だって、気になりますもの。
阪本 ただ、
「いわゆる『果て』というのはないし
 前がないから、始まりなの」
としか、答えようがないんですよね。
── ‥‥そりゃそうかもしれませんが。
阪本 そこから「時間がはじまった」んだから、
「その前」はないんです。

そういう「特異点」だということであって‥‥。
 
── つまり「ひとまず、そのように考える」と?
阪本 そうですね。

ですから「はじまりの前は?」と聞かれても
今、たまたま
「聞く側」と「聞かれる側」に立っているだけで
ホントは「俺も聞きたいよ!」と‥‥。
── あはははは(笑)。
阪本 まあ、なかなか、言えないんですけどね。
飲んでたらアレだけど。
── なるほど、シラフでは少し難しいと(笑)。

ちなみに、僕らの生活レベルに落ちてくる
発見や研究なんかも、
宇宙の分野には、当然あるわけですよね。
阪本 ありますね。
平松 自動車の衝突防止レーダーみたいな装置が
最近、よく話題に上りますが‥‥。
── ぶつかりそうになるとブレーキがかかる、
というやつですね。
平松 あれって、90ギガヘルツくらいの電波を発して、
それが前の車に反射して
返ってきたところをキャッチすることで
距離を測っているんですけど、
もともとは、宇宙から来る電波を捉える装置を
民生用に応用しているんです。

あるいは、ALMA計画の電波望遠鏡が捉える
サブミリ波を使って「歯の診断」をしたり。
 
── そんなところに、身近な「宇宙」が。
平松 そういった技術の「極み」を結集しているのが
ALMAの電波望遠鏡なんです。
阪本 われわれが相手にしている宇宙からの信号って、
だいたい弱い。

そういう微弱なものを
まあ、力づくで‥‥というかな、
限界ギリギリまで追い詰めていくことによって、
民間では到底ペイしないような研究開発を
やっているんです。
── なるほど‥‥。
阪本 最近、ニュースになりましたけど
JAXAが、X線やガンマ線を検出する装置を
開発していたんですね。

2014年に打ち上げられる
X線天文衛星に積むカメラだったんですが
これを使うと
放射性物質で汚染されている箇所を
可視化することができる。
── つまり、汚染部分が「見える」と。
阪本 震災後、共同研究がはじまったようです。

まあ、そのように
もともと狙っていたわけじゃないんですが
応用できることは、いろいろあって。
── 宇宙への興味を突き詰めていたら
近所の地上で役に立ってしまった‥‥みたいな。
阪本 われわれの業界には「宇宙」と聞いただけで
夢中になって研究しちゃう人が、多いんです。

そういう意味では
ブレイクスルーを起こす可能性の高い分野だと
思います。
 
平松 人が「突き動かされてる感じ」がありますね。
── そういえば「ベテルギウスが爆発するかも」と
ニュースでやってたんですが
その時期が「来年か、1万年後か」みたいに
ものすごい幅があって。
平松 そうですね‥‥来年なのか、1万年後なのか
わからないんですが、いずれは。
── 来年と1万年後とじゃ、だいぶ差がありますが。
平松 ベテルギウスくらいの星になると、
数千万年くらいの「寿命」があるんですよ。
── つまり、それくらいのちがいというのは
「誤差の範囲」であると?
平松 もうすぐ、爆発するのはわかっているんですが
その「もうすぐ」が、
人間の「もうすぐ」ではない、ということです。
阪本 宇宙関係者が「ついこの間」って話してるのを
よく聞いてると
6500万年前の話だったりするからね。
平松 まだ、恐竜とかいた時代です。
── 小さいころに
「いずれ、太陽も消滅する」ということを知って
ものすごいヘコんだ覚えがあるんですが、それも‥‥。
 
平松 50億年先の話です。
阪本 だから、同じことを子どもたちに聞かれたときは
「考えてごらん、そのころ君らは
 50億10歳になっているんだよ」と。
── ‥‥諦めもつくだろうと?
阪本 そう。「じゃ、ま、いっか」みたいな(笑)。
── こうやって、
おふたりが興味を持たれている問題って、
大きな宇宙の謎の中の一部分だと思うんですが、
それらを、ひとつひとつ解明してゆくことで
どこへ繋がって行くんでしょう?
阪本 どこ?
── つまり、宇宙の謎ってバカでかすぎて、
ひとつひとつの問題意識を
どれだけ積み上げたら、
宇宙の全体像に迫れるのだろう‥‥と言いますか。
阪本 今のが「何の役に立つのか」という意味なら‥‥。
── ええ。
阪本 お腹はいっぱいにならないです。
 
── ははあ。
阪本 たとえば‥‥そうだなあ、
宇宙の多様性が、どう生まれてきたのかを
突きとめる、と言ってもね。
── ええ。
阪本 それって、もちろん重要なことなんですけど
他方で、ま、どうでもいいことだとも言える。
── そうですか。
阪本 だってさ、日本人がどこからやって来ようと
いいじゃないですか。

今、こうやって、ここにいるんだし。
── そりゃあ、まあ。
阪本 ご先祖さまが、うんと寒いところにいたとか
知ったこっちゃないですよ。

あるいは、スペインのほうに
「日本」を意味する「ハポン」という
姓の人がいて、
彼らがナントカ侍の末裔かもしれないという
新聞を読みましたけどね、最近。
── あ、ぼくも読みました。
阪本 僕らが生きてく上では、どうでもいいでしょ、
そこについては、ハッキリ言って。
 
── たしかに、ええ。
阪本 ただね‥‥。
── はい。
阪本 大いなるロマンを感じるじゃないですか。

そんなことなんですよ。
僕らのやっていることって、つまり。

©ESO/B. Tafreshi

<おわります>

2012-10-02-TUE
 




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