ほぼ日の學校 ただいま製作中!あたらしい學校ができるまで。

akiko.kusaoi

100年前の演奏が
すぐそこに……

2021/06/21 20:48
SPレコード愛好家・三浦武さんによる
「はじめての蓄音機」を
昼の部と夜の部の2回開催しました。
お客様にとっての「はじめての蓄音機」であり、
三浦さんが32年前に蓄音機にはまった
きっかけとなった「はじめての」
レコードの紹介でもありました。

若き日の三浦さんの心をとらた、
伝説のヴァイオリニスト
ジネット・ヌヴー(1919-1949)の
1948年録音のラヴェルの曲。
蓄音機から流れる演奏が終わると
客席からは
「ふぅ」とも「うー」ともつかない
ため息のような声が漏れ、
自然と大きな拍手が起こりました。

「ヴァイオリンの音というより
ヴァイオリンが鳴っている部屋の
雰囲気を録音している」と三浦さんが評する
アナログの極みの蓄音機。
初めてその音に触れた方からは
「まるで演奏家がそこにいるような
生々しさ」
「空気ごと運ばれたような豊かな響き」
といった感想が聞かれました。

この他、90年前、100年前の
名演奏を次々と堪能しました。
マイクという機器がなかった100年前、
大きなラッパの前で楽器を鳴らし
その空気の振動を刻み、編集もなく、
その場限り、一度限りの名演奏を
封じ込めたSPレコードの力を
見せつけられる思いがしました。

蓄音機で聴く名演奏の楽しみは
もちろんのこと、
この日の楽しみは三浦さんの
語りでもあります。
演奏家でも評論家でもない三浦さんの
お話の特徴は、「人」を語ること。
どの演奏家が誰に教えを受けたのか、
誰の演奏が誰に影響を与えているのか、
クラシックでもロックでも
系譜をたどらずにいられない
という三浦さんは
演奏の合間にそうした話を
たっぷり盛り込んでくださいます。

演奏家がいた場所の手触りを
感じることのできる蓄音機。
「演奏家に出会っている気が
するでしょう」と
おっしゃる通りだと思いました。

夜の部に参加した
スズキ・メソード会長でもある
背中が本当に楽しそうに
揺れているのが印象的でした。
終了後感想を聞くと、
「ジョルジュ・エネスコ(1881-1955)の
演奏で聴かせてもらったヘンデルの
『ヴァイオリンソナタ四番ニ長調』は
子供のころ骨の髄まで叩き込まれた
曲だけれど、エネスコの演奏スタイルは
習ったものとはまったく違うもので、
すばらしく衝撃を受けた。
蓄音機も、当時の空気というか
音圧そのままに音が立ち上がってきて
すばらしかった。
今日はエネスコと出会えてうれしかった」

たくさんの方が感銘を受けた「手回し演奏会」
(蓄音機は手でぜんまいを巻くのです)
また催したいと思います。
次回をお楽しみに!