気仙沼のほぼ日便り

気仙沼にはじめて行ったときは、
あまり気がついていなかったのですが
3度目ぐらいでしょうか、
「これは‥‥。」と、
おどろいたことのひとつに
冠水というのものがあります。

辞書によると、冠水とは
「洪水などによって、
 田畑や作物、道路が水をかぶること」。
気仙沼市の発表によると
市の浸水面積は市域の5.6%。
そして、その一部は、いまも冠水しています。
地元の人に聞いたところ、
そのほとんどが、水産加工業をはじめとする
お店が立ち並ぶ商業地や住宅地だった
とのことです。

プレートが移動しているとか、
地盤が沈下しているとか、
ニュースやテレビで目にして
頭で知っていたつもりになったことが
この冠水を目にすると
体に突きつけられるような感覚があります。

冠水の理由は、いくつかあるのでしょうが
そのひとつには、
地盤沈下しているということがあげられます。

気仙沼の地盤沈下の高さは、
大きなところで、マイナス74cm。(※)
ダイニングテーブルとか事務机より
ちょっと高いぐらいですね、
その高さ分、広い範囲で、
土地が沈下しているということになります。

冠水は、その日の潮汐によって、
しみ出す水の量がことなります。
なので、気仙沼に行ったひとが
必ず目にするものではないのかもしれません。
しかし、満潮は日に二度あり、
大潮は月に数日間あるという自然の摂理も
また、現実です。

一度、意識してから
あちこち見ていると
そのときは冠水していない場所でも
以前はなかったとおぼしき場所に
藻が発生している、
つまり、そのときたまたま水が引いている状態
の場所があることや
海と自分の高さの位置関係がなんかおかしい
ということには、気がついたりします。

そしてなにより
冠水しているところの近くにある道路は
トラック何台分(何十台、何百台分)もの
土砂が運ばれ、人々の力で盛り土をして、
やっと通れるようになっているところだ、
ということにも、気がつきます。
盛り土の高さは、50cmぐらいから
高いところでは、1m近くでしょうか。

盛り土で道路を作ることはできても
浸水した気仙沼の一部のエリアは、
いまも建築制限が解除されておらず
(先日、来年の3月までの
 建築制限のエリアが発表されました)
被災した方々が、
同じ場所で事業を再開するのは
難しい状況にあります。

わたしたちがすでに知り合っている
気仙沼の地元の人たちの
あたたかさや明るさ、
内面からにじみ出る強さにふれるたびに
3月11日より前からの知り合いだったような
親しみや懐かしさを感じることがあるのですが、
個人的には、冠水を見ると、
「ああ、こういうことがあって
わたしたちは知り合ったんだな」と
現実に引き戻されます。

そして、同時に
気仙沼のほぼ日で、できることはそう多くはない。
けれど、
できることから少しずつやっていこうと
あらためて、思ったりしています。

津波の大きな傷跡の残る船や建物、
瓦礫、自動車に目を奪われていて
すぐには、
気がつくことができなかったのですが
冠水という現実が大津波の跡として
いまも残っているということを
お伝えしたいと思い、
今回は、冠水のことを書きました。
それではまた、次回。

(※参考:
 国土地理院
 平成23年
 東北地方太平洋沖地震に伴う
 地盤沈下調査