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宮本茂 × 糸井重里、対談2005

 

任天堂は京都にあって、
宮本茂さんも京都にあるので、
そこから突然、ニンテンドーDSのような
「新しいおもちゃ」が届くと
ぼくらは「いつの間にこんなものを?!」と
驚いてしまうわけですが、宮本さんの話を聞くと
多くのことがすとんと腑に落ちるのです。
宮本茂さんを、糸井重里が訪ねました。
これまでのこと。これからのこと。
そして、ぜんぶの根っこのようなこと。
全9回のゆったりとした対談をお届けします。
担当は「ほぼ日」の永田です。

糸井 『ピクトチャット』のたのしさに
代表されるんですけど、
ニンテンドーDSっていうマシンは、
その、なんだろう、久々にさ、
「バカを言い合った結果」みたいな感じが、
この遊び全体にありますよね。
宮本 ああ、そうですね(笑)。
糸井 いままでって、何が出てもさ、
やっぱり、利口な印象があった。
宮本 ああ。
糸井 これは久々にね、ちょっとバカ(笑)。
あの、うちの事務所に
『バンブラ』の開発者の人たちが来て、
背広姿で一生懸命演奏して行ったんだけど、
あれもバカでよかったなあ。
こう、すっごい真面目な顔してさ(笑)。
宮本 あれも、もう、つくりはじめてから
5年ほどになるのかな。
ああやって、演奏してみせると、
すっごくウケるんですけど、
「どうやって売ろう?」っていうところで
行き詰まっていたソフトで。
糸井 あれもニンテンドーDSに
うまくはまりましたよね。
なんかこうね、子どもっぽくって大人っぽくて、
なんだか原始的なおもしろさがあるんですよ。
宮本 そうですね。やっぱり、
あえてつくりすぎないというか、
そのまんまでいってるんでね。
そのぶん、こう、不安はすごくあるんですよ。
シリーズもののソフトを
つくってるわけじゃないので。
糸井 だって、遊びの材料を出してるだけだもんね。
宮本 そう。これを、みなさんで遊んでねって
それだけ言ってるわけですから。
糸井 それは、だってさ、宮本さん、
そういうものをつくりたくてつくりたくて、
ずーっとやってきたんじゃないですか。
宮本 そうそう、そうなんですよ!
糸井 ねぇ(笑)。
宮本 いままでそういうものがつくれなかったんで、
ストーリーを書いたりとか、慣れないことを
ずっとやってきたわけなんですよね。
糸井 そうだよね。
いや、これ、大事な話だよね。うん。
宮本 あ、もちろん、
そっちのほうもやりますよ(笑)?
両方やりますよ、両方。
ちょっと得意分野になった
ところもあるので(笑)。
糸井 いやいやいや、そうですよね。
でも、これ、ほかのことというか、
シリーズものもつくりながら、
並行してこういうこともやってたの?
宮本 そうですね。まあ、実際には、
担当のディレクターとデザイナーがいますので、
ぼくはもう、最初の仕様書をつくるという
役割だったんですけど。
ええと、『ピクトチャット』の最初のやつは、
いまもあるかな‥‥(手帳を探る)。
糸井 あ、まだ持ってるんだ。
宮本 うん。なんか、その、ええと、
長い、退屈な会議がありましてね。
それで、「退屈やなあ」と思いながら、
「こういうことかなあ」って感じで
ちょこちょこと書いて‥‥
あ、そうそう、これですね。
── うわ。
宮本 こうやってレイアウトしたものを
渡してつくってもらったら
話がすぐに進むかなと思って。
糸井 これ、いまのまんまじゃない(笑)。
── いきなり完成形に近いですね。
宮本 まあ、こういうものって、
いろんな話をしてると進まないんですよ。
「もっと絵のモードを増やして」とか
「ペンはこうして」とか話してると、
盛り上がってしまうので(笑)。
だから、もう、これでいいから、
ちょっと進めてみよう、と。
まだこのころは画面を4つに
割ってみたりしてたんですけどね。
糸井 あ、ほんとだ、ほんとだ。
宮本 まあ、こういうことができればええねやろ、
っていうので、こう描いて、
で、会議終ったらもういちばんに行って、
「こういうことやりたいんで」って言って
なんか、つくってよ、って(笑)。
糸井 え? このコンセプトがまったく
話し合われてないときに、
もう、この形を思ってたの?
宮本 まあ、「こういうようなことをやろうね」
とは言ってたんですけどね。
やっぱりその、完成形というか、
パッケージが決まってないとか、
さっきの話じゃないですけど、
「そういうことやっておもしろいのか?」
っていう人がいるとか、
あるでしょ、いろいろ(笑)。
だから、もう、描いて渡したんです。
すると現場でも、いろいろ考えていたので
一気につくってしまったんです。
糸井 たしかに、これを文字で書類にしても、
やっぱり伝わんないよね。
宮本 うん、そうですね。あと、まあ、
こういう企画に関わってくるスタッフは、
たいていいつも「やりたがっている」ので、
そういう進めかたができたんです。
糸井 はーーー。


続きます!
2005-03-25-FRI