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宮本茂 × 糸井重里、対談2005

 

任天堂は京都にあって、
宮本茂さんも京都にあるので、
そこから突然、ニンテンドーDSのような
「新しいおもちゃ」が届くと
ぼくらは「いつの間にこんなものを?!」と
驚いてしまうわけですが、宮本さんの話を聞くと
多くのことがすとんと腑に落ちるのです。
宮本茂さんを、糸井重里が訪ねました。
これまでのこと。これからのこと。
そして、ぜんぶの根っこのようなこと。
全9回のゆったりとした対談をお届けします。
担当は「ほぼ日」の永田です。

── いままでずーっとお絵かきソフトを
つくりたがってきた宮本さんが
『ピクトチャット』っていうかたちに
たどり着いた経緯をおうかがいしたいんですが。
宮本 そうですね。まず、あの、
お絵描き系のものというのは、企画を説明すると、
「で、どうすんの?」って言われるんですよね。
糸井 あはははははは。
宮本 描くとこまではおもしろい、と。
でも、「で、それをどうすんの?」って言われる。
「どうすんの?」って言われてもね(笑)、
「楽しいでしょ?」って言うと、
「まあ、そういうのが楽しい人もあるけど」
って言われてね。で、だいたいこう、
エディターをつくってくんですよね。
その、描いたもので作品をつくって、
こう、人に見せられると。
で、「ああ、おもしろい」ってなるんです。
糸井 つまり、「描いた絵に額縁がつきますよ」
ってことですよね。
宮本 そうですそうです。そうすると、その、
エディターを覚えるのが
難しいってなってくるしね。
それから、見せられるけど、
見せる場所がないっていうのもあります。
糸井 それからやっぱり、
「誰もが自由に絵を描けるほど
 クリエイティブじゃないから、
 あり物の材料を組合わせるだけで
 遊べるようにしましょう」って、
必ず誰かが言い出して(笑)。
宮本 そうそう、そういう話になってくる。
「はー、また同じ迷路に入っていくなー」
といつも思ってて。
糸井 入るね、入るね(笑)。
宮本 昔、あの、ピクショナリーっていう
ボードゲームがあったんですよ。
糸井 はいはいはい。
── はいはいはい。
宮本 スゴロクのような盤の上を進みながら、
カードを引いて、指定された絵を描いて、
まあ、ジェスチャーゲームの
ジェスチャーの代わりに絵で伝えるゲーム。
あれにすごいみんな盛り上がったことがあって。
で、あれは、意外な人が、
絵で伝えるのがうまかったりするんですよ。
あの、絵のうまい人は、絵はうまいけど、
わりと、パッとこう一瞬で図形をとらえるとか、
特徴をとらえる能力が、意外と低い。
ところが、絵は描けへんけど、
ピクショナリーはうまいっていう人がいてね。
糸井 伝わる絵が描けちゃう人がいるんだよね。
宮本 ええ。形で特徴を伝えるのが
うまい人がいたりして。
それからまあ、とても絵にならないものとかを
絵に描いてみるとおもしろかったり。
で、ああいうのって、こう、
絵というものを消費してくからおもしろいわけで。
糸井 そうですね、うん。
宮本 ね。残すもんじゃなくて。
だからそれは、きちんと絵を描くこととは
対極にあるなと思ってて。
で、このニンテンドーDSという
通信も簡単にできるという機械を見ると、
ああいう、絵を消費するたのしみのための材料は
もう、ほとんどそろってたんですね。
だから、これはもう「早くつくろう」と。
糸井 ああ、なるほど。たしかにそのたのしさですね。
いや、マシンを手に入れてすぐやったんだけど、
感動したよ、これ。
宮本 あ、そうですか(笑)。
糸井 たいした遊びもしてないんだけどね。
どこかから、誰かの、
くだらない絵が飛んできたっていう
それだけなんだけど(笑)。
あのね、まず永田君とぼくでやったんだけど、
永田君は最初、ぼくの隣でやってたの。
それでもおもしろかったんだけど、
そのうち彼が「じゃあちょっと‥‥」とか言って
便所の前まで行ったんだよ。
宮本 ああ(笑)。
糸井 なんの意味もないんだよ、それ(笑)。
離れたからといってさ。でもね、
「便所の前からこんにちは」っていうのが
送られてくるとね、もう、それだけで、
「おーーーっ!」って思う(笑)。
宮本 そうなんですよ。
でも、この企画の話を最初に説明するとね、
「いや、そんな、絵なんて、
 残せないとおもしろくないですよ」とか、
「カラーで描けないとつまらない」とか‥‥。
糸井 言うよね(笑)。
宮本 「そんな、声の聞こえるところにいるんだから、
 しゃべりゃいいじゃないですか」とか
言うのがふつうの考えなんですよ(笑)。
糸井 言うね、言うね(笑)。うん。
宮本 ところが、試作品をつくって、
実際にやらせてみると、
ぜんぜんそうじゃないですよね。
「どこまで届くか行ってみよう」
とか言って歩く人がいたり(笑)。
糸井 そうなりますよね。あと、なんていうの?
やってみてわかったこととしては、
「持ち絵」っていうのを
誰しも持っているっていうおかしさで。
宮本 「持ち絵」?
糸井 カラオケで「持ち歌」ってあるじゃないですか。
だから「困ると描く絵」みたいなものがあって。
宮本 あー(笑)。
糸井 そういうのが、苦し紛れに
押し出されてくるっていうのが
おっかしいんですよね。
それをみんなで遊べるんですよ。
宮本 うん。これ、誰かがお題を出したりすると、
急に盛り上がったりするんですよ。
アメリカの連中とやってたときは、誰かが
「レッツ・ドロー・マリオ
 (マリオを描こう)!」
って言ったら、ものすごく盛り上がって。
糸井 ああ、なるほど。ぼくらはまだ、
そんな難しいことなんかしてませんよ。
というか、それをやられると、
ぼくはつまらないかもしれない。
宮本 あ、そうですか?
糸井 いやいや、たんにぼくの性格ですよ。
その、「ドロー・マリオ!」って出たときに、
いろんなマリオが出てくるんだろうなって、
ほら、答えがさ。
宮本 ああ、思い浮かぶから(笑)。
糸井 うん。答えがなんか見える。そうじゃなくて、
「なんか言わなきゃ、描かなきゃ!」
っていうほうがバカなことが出てきて
ぼくはたのしいんですよ。
なんか言わなきゃいけなくって、
ほんとに適切なものが出なかったときの、
自分の思いまで乗っかるんですよね。
で、しょうがないからイカ描いちゃった、
みたいなさ。
宮本 ああ、わかる(笑)。
── で、「おまえ、またイカかよ!」って(笑)。
糸井 そうそう(笑)。
── こないだ糸井さんとやっておかしかったのは
あれでしたね、ぼくが糸井さんに、
「あ~、糸井さんだ。サインください!」
って描いて送ったら‥‥。
糸井 ぼくが「糸井重里」って描いて返した。
宮本 (笑)


続きます!
2005-03-23-WED