宮本茂 × 糸井重里、対談2005

 

糸井 なにか変わったものをつくっているというのは
話に聞いてたんだけど、
実際に、ニンテンドーDSを触ってみて、
「ああ、こういうものをつくってたのか!」
って思いましたよ、ほんとに。すごいね。
宮本 ありがとうございます。
糸井 いや、これでね、かなりえらいことが
起こるんだと思うよ。たぶん。
宮本 そうですね。でもね、ぼくら心配性なんで、
やっぱり、ここまでのものをつくっても、
「みんなが1万5千円も出してくれるか?」
みたいなところは、気になってて。
糸井 宮本さんは、その、
「5円分でもいいから
 しつこく価値を足していく」
ような発想をね──。
宮本 やめたほうがいいですか(笑)?
糸井 しすぎ。
宮本 ははははははははは。
糸井 あのね、たしかにね、
それが大事な時期もあった(笑)。
宮本 まあそうですね(笑)。
とくにこのニンテンドーDSは、
これまでの価値で考えられなくて、
「価格が見合うかどうか?」
みたいなことより、
もっと雑に「2台買ったほうがいいです!」
みたいなことが言えそうな、変な機械ですね。
糸井 うん。それと「5円を積み重ねる」のと、
ぜんぜんちがう(笑)。
宮本 そうなんですよね。なんか、
「PSPより5千円安い」とか、
「実際は1万円ほど安い」とか、
そういうんじゃなくて。
糸井 うん、そんな話にしたくないですよね。
宮本 そうそう。そういうんじゃないよな、
っていう。
糸井 なんていうの? 勝負させようにも、
そもそもこれまでのゲーム機とは
試合ができないような気がするんですよ。
たとえば、同じプロレスだとしても、
女子プロレスの人とさ、ハルク・ホーガンは
試合ができないじゃないですか。
あ、でもアメリカには
そういうのもあるんだよな。
いまの例はちょっとまずいか(笑)。
宮本 (笑)。でもいま実際に、
そういうことになってるんですよ。
たとえばアメリカではニンテンドーDSが
すごくよく売れてるんですけど、同時に、
SP(ゲームボーイアドバンスSP)も
売れてるんです。
糸井 あー。
宮本 同じくらいに売れてるっていう。
だから、これまでのゲーム機と
食い合うものじゃなくて、
違う軸のものなんですよね、ほんとうに。
糸井 とくに日本って、何かと何かが拮抗して、
抜いたり抜かれたりっていうケースって、
じつはあんまりないんですよね。
宮本 そうですね。
糸井 なのに、そういう拮抗に備えているというか、
はずれるのを、すごくこわがってますよね。
だから、つくるほうが、必要以上に
「これははずれませんよ」ってものを
つくろうとして、はずしてみたり(笑)。
宮本 ああ、そう、そうですよね。
ぼくらも、そういうことをずっと感じてて。
糸井 実際、ニンテンドーDSをつくってるときに
「これは失敗してはいかんぞ」的な
ムードっていうのは、あったんですか?
宮本 いや、ないですね。どっちかいうと、
「失敗したらあかんぞ」というよりは、
なびかないように、
なびかないように、っていう。
糸井 びびらないように。
宮本 びびらないようにっていう。
だから、まあ、
「腰引かずにバット振ろう!」
みたいなのがね、
最近のモットーなんですよね。
思いっきり振ったら、
当たれば飛ぶというのが、
ほんとに最近、身にしみてきてて(笑)。
糸井 そうですよね。
宮本 うん。だから、
『マリオ』とか『ゼルダ』とか、
シリーズものなんかをつくってると、
だんだんそれが
うまくできるようになるでしょ。
そうすると、だんだんと
「新しいもので思い切り振る」ということが
できにくくなるんですよ。
だから、びびらないようにしてましたね。
糸井 うんうんうん。
あの、シリーズものをずーっとやってると、
自分の中に欲求不満とかも、たまるでしょ。
その、なんていうんだろう、それはそれで、
イヤでやってるわけじゃないけども、
自分のちがう脳ミソを動かしてみたいな
っていう感覚って、ありますよね。
宮本 そうですね、うんうん。
同じノウハウをずっと使い続けてるのってね、
「そのなかで新しいことをやる」
っていうこと自体が、
あんまりたのしめなくなるんですよ。
それがね、やっぱりいまはほら、
ぜんぜん違うことをやってますから。
糸井 うん。


続きますよー。次回の更新をおたのしみに!
2005-02-25-FRI