宮部みゆき、『メトロイド』の開発者に会う。

 
大のゲームファンで、大の『メトロイド』好きという
宮部みゆきさんが、
『メトロイド』シリーズの生みの親である
任天堂の坂本賀勇さんと対談します。
第2回目は、宮部さんとゲームの出会いから。
坂本さんの緊張ぶりにもご注目を。



── 宮部さんは、ゲームで遊び始めてすぐに
『メトロイド』と出会ったそうですが。
宮部 はい。アクションゲームとしては、
『スーパーメトロイド』が
初めてちゃんとクリアしたゲームだったんですよ。
坂本 ああ、そうですか。すごく光栄です。
宮部 最初に『マリオコレクション』をやったんですけど、
やっぱり私の腕じゃ反射神経がついていかなくて。
当時小学生だった、うちの姪や、
そのお友だちとかのほうがよっぽど上手いんです。
それで、彼らから、
「おばちゃん、アクションゲームは無理だよ」
なんて言われて、
私も「そうだねー」なんてうなずいてて。
そのあとに『トルネコの大冒険』をプレイして、
あれは、まあ、反射神経はいらなかったので
コツコツコツコツ遊んでたんです。
そんなときに『スーパーメトロイド』のCMを見て
「これやりたい!」って強烈に思ってしまって。
坂本 いきなり、ですね(笑)。
宮部 ええ(笑)。私にゲームという娯楽を
勧めてくれた友だちがいるんですけど、
その人も「まだ早い」って言ってて(笑)。
「もうちょっと易しいゲームをいくつかやって
 慣れてからやったほうがいい」って。
でも、すごく楽しそうで、かっこよかったから、
どうしてもやりたくて買ってきてしまったんです。
坂本 いや、僕も、止めたかもしれません(笑)
宮部 (笑)。案の定、ものすごく苦労したんですけど、
コケの一念でとうとうクリアーしてしまって。
クリアーできたときは、
すごくうれしかったんですよ。
とくにスペースジャンプですごい苦労して。
でも、できるようになったときの喜びって、
すごいじゃないですか!?
だからもう、大好きなゲームなんです。
坂本 ありがとうございます。
── 『スーパーメトロイド』は名作ですけど、
当時としてもかなり難度の高いゲームでしたから、
初心者が簡単に手を出せるようなものでは
なかったですよね。
坂本 そうですね。
なんかスポーツを始めてみようかなって思って、
いきなりトライアスロンをやるようなもんですよ。
宮部 そうだったのかー(笑)!
坂本 かなり珍しい(笑)。驚きですね、本当に。
どちらかというと
『メトロイド』のファンというのは、
プレッシャーを喜びに変える人というか、
難度の高さに対して発奮できるタイプっていうか。
とにかくこう、前へ行きたいっていう強い人。
それからやっぱり、自分に厳しい人じゃないかな、
と思うんですけれども(笑)。
宮部 私、自分に甘いんだけどな(笑)。
坂本 いやいや(笑)。
── それほどまでに宮部さんを惹きつける
『メトロイド』の魅力ってなんでしょう?
宮部 ひとつは、世界観がしっかりしていることですね。
これはもうね、有名なことですが、
サムスって女性じゃないですか。
銀河のために戦うバウンティハンター(賞金稼ぎ)
なんだけども、女性だっていうのが、
当時はそうとう新鮮でしたね。
私は30歳を過ぎてからゲームを始めたんですけど、
そういった大人から見ても魅力的な世界でした。
ハリウッドの映画でも、
こんなに世界観ちゃんと考えてない映画だってあるよ、
っていうぐらいしっかり考えられてて。
それでいて過剰な説明があるわけではない。
そのへんのストイックな感じも魅力ですね。
── ……いかがですか、坂本さん?
坂本 いや、もう……ありがとうございます。
宮部 あとはやっぱり発見とか探していく楽しみですよね。
抜け道を探すときもそうですし、
「あ、ここが通れる」とか、
「ここでタンクが取れるのか」っていう
楽しみがあっていいんですよね。
たとえばお家で、キューブにアドバンスをつないで
画面で見てても楽しいと思うんですよ。
お子さんがやってるのを、
お母さんが見ててもお父さんが見てても、
「ちょっとこっち行ってみない?」とかね、
「こっちじゃないの?」とかね。
複数で対戦するようなゲームじゃないんですけど、
みんなでいっしょに楽しめる、
そういう魅力のあるゲームだと思うんです。
実際、私も、よく姉といっしょに
わいわい言いながら楽しみましたから。
こんなにストイックで、
設定もばりばりにSFなんだけど、
なぜかそれぞれのプレイヤーの心に残る。
そのへんが、私が『メトロイド』を
すごく大好きな理由なんです。
── ……どうですか、坂本さん?
坂本 いや、もう、ホント……感激です。
── ……もうちょっとなんとか言ってください。
坂本 ……ありがとうございます。
── いや、僕じゃなくて宮部さんに言ってください。
坂本 ああ(笑)。

── ええと、じゃあ、宮部さんとしては、
『メトロイド フュージョン』が出たときは
かなり盛り上がった状態で?
宮部 それはもう!
発売日には、私、自分のホームページに
「祝 サムス・アラン再臨!」って4倍角で
でかでかと書いたくらいで(笑)。
もう、うれしくてうれしくて、
寝床まで持ち込んじゃったりして。
ゲームボーイアドバンスSPって、
ほら、フロントライトだから、
明かりを大きくしなくても布団の中でできるので。
もうちょっと進んでから寝よう、
もうちょっと進んでから寝よう、
って思いながら布団の中でやってるうちに、
「あー2時だ」とかっていう(笑)。
翌朝起きたら目が真っ赤だったので、
これからは布団の中でやるのは
やめようって思ってたんですけど。
でも、ある日、風邪をひいてしまって。
たいしたことなかったんですけど、
「……風邪引いた(笑)」とかって思って。
大喜びでパジャマに着替えて、
また布団の中に持っていったっていうね。
それぐらい楽しく、やってしまいました。
── ……制作者としてはどうですか?
坂本 もう……感激です。どうしたらいいんでしょう?
── どうしたらいいでしょうと言われましても(笑)。
宮部 なんか、私ばっかり、すいません(笑)。
思いのたけをしゃべってしまって。
坂本 いえいえいえいえ。
── あの、宮部さんが挙げられた、
発見の喜びとか、世界観の裏打ちとかいう
『メトロイド』の魅力について、
坂本さんの中ではどの程度意識されてるんですか?
坂本 やはり発見っていうところは、すごく大事で。
単純に行き止まりがあるとしても、
その場所だけで悩ますんじゃなくて、
じつは違う場所から大きく回らせるとか……。
宮部 そうそう、(指で示しながら)
こーんなふうに回らせたりとかね!
坂本 はい(笑)。
そういうところっていうのは、
すごくやっぱりこだわって作っている部分で。
世界観については、その、正直、
初代のディスク版のときは
大まかな設定だけができていて、
僕はそこに途中から関わったんですけど、
「もう、来月出さなならんし」ということで
慌ててまとめたという部分もあるんですけど(笑)。
まあ、シリーズを重ねるごとに、
そのへんをきちんと継承しながら
整理して、かたちづけていってるという感じですね。
宮部 今回の『メトロイド フュージョン』もそうですけど、
『メトロイド』シリーズって、
こっちが悪でこっちが正義っていう
単純な構造じゃないですよね。
たとえば、マザーブレイン
(1作目の最後に登場するコンピュータ)だって、
何かものすごく、意志や感情があって。
わざと悪いことをしてるというよりは、
ある種、非常に強力な、
支配する権力の象徴みたいなものとしてあって、
いわゆる悪役という感じじゃない。
だから、怖いんだけども、プレーヤーとして、
ちょっと感情移入ができるっていうか。
こういう存在は、もしかしたら世界のどこかに
あるんじゃないかとか。人間の中にも、
こういうものはあるんじゃないか、とか。
そういうふうに思いながらプレイできるところが、
私が『メトロイド』を好きな理由でもあるんですね。
また、名前がホント秀逸だなと思うのが、
マザーブレインって「母であって支配者」でしょ。
それを、9年前のゲームでやってるっていうのは、
すごい先見の明だなと……。
坂本 …………。
── ……坂本さん、黙ってないで。
宮部 また、『スーパーメトロイド』をプレイしてて
私は思ったんですけど、
これは支配しようとする女と、
開放しようとする女の戦いなんじゃないか、と。
それがもうね、「かっちょいーー!」って思って。
私べつにフェミニストじゃないんですけど。
で、今回は、サムスがエックスに
寄生されてしまったことで命が危なくなって、
それをベビーが救ってくれた、
ってとこから始まるじゃないですか。
そこだけでもうファンとしては、
「うう〜っ!」ていう感じなんですよね。
で、ラストの場面なんかも……。
坂本 ……………。
── 坂本さん、しっかりして!

次回へ続きます!

宮部みゆき
小説家。代表作に『模倣犯』、『理由』、
『火車』、『蒲生邸事件』などなど……。

↑宮部さんのサイトはこちらからどうぞ。

坂本賀勇
任天堂開発第一部課長。
代表作に『メトロイド』シリーズ、
『カードヒーロー』などなど……。
2003-04-16-WED