宮部みゆき、『メトロイド』の開発者に会う。

 
作家の宮部みゆきさんが、
「365日のうち360日はコントローラーを握る」
というほどゲーム好きであることを
みなさんはご存じでしょうか?
「こないだ、持っているゲームの攻略本の
 数を数えたら300冊以上あったの」

というほどゲーム好きであることを
みなさんはご存じでしょうか?

そんな宮部さんに、
ゲームのおもしろさを刷り込んだのが、
1994年にスーパーファミコンで発売された
『スーパーメトロイド』。
完成された世界観とシビアな難度を誇る
この硬派なアクションゲームは
宮部さんを虜にしました。
以来、宮部さんは、このソフトの続編を
強く強く待ち望んできたのです。

そして9年ぶりに発売された続編、
『メトロイド フュージョン』
発売に歓喜する宮部さんにご協力いただき、
ここに、『メトロイド』シリーズの開発者である
坂本賀勇さんの対談が実現しました。

愉快なことに、坂本さんも宮部さんの大ファン。
まさに相思相愛なクリエイターが
緊張しながらも『メトロイド』を軸に語ります。

今回はその第1回目。
貴重な対談をたっぷりとどうぞ。



── ええと、お互いがお互いの
ファンであるということで、
どうやらお互い緊張なさっているようですが(笑)。
坂本 ものすごい、緊張してます。
宮部 ホントに大緊張ですよ(笑)。
── 宮部さんは『メトロイド』シリーズの……。
宮部 もう、大好きで!
── 坂本さんも宮部さんの作品を……。
坂本 はい! もう、読んでます。
── よろしくお願いします(笑)。
宮部 よろしくどうぞ(笑)。
坂本 よろしくお願いします。
── まず、坂本さんがディレクションされた
『メトロイド フュージョン』ですが、
宮部さんはすでにプレイされてるんですよね。
宮部 とりあえず2回クリアしました。
── わあ(笑)。
宮部 あの、先日、攻略本をたくさん送っていただいて、
助かりました。ありがとうございました(笑)。
坂本 ああ、いえいえ(笑)。
あの、宮部さんのホームページの日記を
拝見させていただいてたんですけど、
そこに「セクター4から出られない」って
書いてあって。
宮部 ずっと出られなかったんですよ〜。
坂本 読んで、「ああっ、宮部さんが困ってる」って(笑)。
すぐ送ってくれってうちの担当者に言いつけて。
そしたら「どの本にしましょ?」とか言うから、
「いや、もう全部送ろう」とか言って(笑)。
宮部 ありがとうございます。
セクター4はね、ホントに苦労しました。
いろんなことやってみたつもりだったんですけど、
何かひとつ、やり逃してるんですね。
そうすると出られない。そこがね、
「あー、やっぱり『メトロイド』だなー」って。
だから、詰まって悩んでるのも醍醐味でした。


宮部みゆきさん
坂本 そう言っていただけると救われます(笑)。
宮部 だからね、私、そこで詰まって進めないとき、
スーパーファミコン出してきて、
『スーパーメトロイド』(1994年発売)
をやり直したんですよ(笑)。
── わあ(笑)。
宮部 どこかから出られなくなったとき、
前作ではどういうふうにしてたかなぁ、って思って。
で、『スーパーメトロイド』また立ち上げて、
『スーパーメトロイド』の攻略本を見てみたりとか。
何かやってないことがあるはずだって思って。
で、忘れてたようなことはなかったので、
「絶対、出られるはずだ!」と、
自信を持ってやったらクリアーできたんです(笑)。
坂本 ……ありがとうございます(笑)。
宮部 そのへんの喜びは、
任天堂のゲームに共通する長所だと思うんですけど、
「もうダメだ、もうできない、もう諦めようか、
 でも、もう1回だけやってみよう!」
っていうときに必ず抜け出せるんですよね。
そのバランス調整のすごさが、やっぱり、
ちょっとほかの会社のゲームにないと思うんです。
『ゼルダ』とかもそうですよね。
「もうダメだっ! もう諦めて今日は泣いて寝よう」
って思って、投げ出しそうになるんだけど、
「もう1回やったらできるかもしれない!」
って思って最後にやってみたときに、できる。
そのへんはきっと、バランス調整するときに
すごく注意なさるからだと思うんですけど。
坂本 そうですね、そのへんは苦労してます。
難しすぎてもダメだし、簡単すぎてもダメだし。
あの、最後にもう1回だけ挑戦したら
成功するように調整するっていうのは、
現実問題、無理なんですよ。
でも、難しいゲームだってわかりながらも、
チャレンジしていって、
プレーヤー自身が成長していくような作りは
意識しているんです。
まあ、最初のうちは非力なプレーヤーが、
ジワジワジワジワ努力して練習して、
その苦労が報われていくというかたちで、
ゲームを進めさせてあげたい。
そこはもう『メトロイド』で
絶対しないといけない部分なんです。
ただ、難しさって、人によって
感じかたがばらばらですからね。


坂本賀勇さん
宮部 そのへんの調整は作っていて難しいでしょうね。
今回の『メトロイド フュージョン』は
モードというか、難易度が選べますよね?
シリーズのファンとしては驚いたんですが。
坂本 そうですね。
やはり、前作から9年経ってますからね。
宮部 そんなに前になるんですね(笑)。
坂本 ええ(笑)。だから、あのころの厳しさを
そのまま持ってくると、
単に頑固おやじが意地を張ってるだけ
みたいなことになってしまう。
やっばり、自分たちに
「いいものを作っている」という自信がある以上、
少しでもたくさんの人に遊んでいただくために、
間口を広げていくべきだと思ったんです。
もともとは、けっこうユーザーを
突き放したゲームだと思うんですよ、
『メトロイド』シリーズって。
宮部 そうですね。
坂本 それで、あの、ま、宮部さんみたいに
必死でがんばってくださる方も
いらっしゃるんですけど。
宮部 泣きながら(笑)。
坂本 申し訳ないです(笑)!
だから、やっぱり少しでも多くの人に
楽しさを味わってもらうためにっていうことで、
難易度を選べるようにしたんです。
あとは、『メトロイド』では禁じ手としていた、
言葉での導入というか、誘導ですよね。
宮部 ああ、ありますね。
坂本 ええ。つぎの目標をわかりやすく示してあげる。
それも今回はあえてやってみようと。
マップの組み方も、小さなセクターに分けて、
いろんな人が……。
宮部 先に進めるように。
坂本 はい。そう考えた結果なんですよ。
宮部 今回の設定では、文字による誘導が
物語の広がりを生んでいる面もありますよね。
だから私にとってはすごくよかったです。
アダム(サムスに指示を出すコンピュータ)
と会話するのが途中から楽しみになりましたから。
サムスの自問自答のようなセリフもあるし、
あれはとても素敵なギミックだなと思いまして。
古武士のような『メトロイド』ファンの方の中には、
「セリフがあるとメトロイドじゃない!」
っていう人も、いらっしゃるかもしれませんけど。
坂本 はい、そのへんもかなり気を遣いました。
「難易度設定なんて、とんでもない!」
っていう方もいらっしゃるかなと思うんですけど。
宮部 でも、単にクリアーを目指すというのではなくて、
全部のアイテムを取ろうとか思うと、
やっぱりすごく難しくなってますよね。
坂本 そうですね、はい。
宮部 だから、先ほどおっしゃったように、
間口を広くはしてあるんだけど、
やっぱり骨太の部分も残してあるというか、
古武士のようなファンにも楽しめるように。
坂本 そうそうそう、はい。
ノーマルモードをクリアーすれば
ハードモードもありますし……。
宮部 ぜったい無理(笑)。
私、ノーマルモードだけでも
爪が剥げるかと思った。
坂本 すいません(笑)。そういえば、
難易度に関して興味深かったのはですね、
意外にユーザーのみなさんが優しいんです(笑)。
やっぱり、前作から9年経ってるので、
その当時中学生だった人とかは
大人になってるわけですよね。
だから、前作と比べると
『メトロイド フュージョン』は
ずいぶん親切になってるんですけど、
「ヌルい!」って言う人よりも、
「9年前のことをいまやっちゃダメだよね」って
言ってくださる方のほうが多くて。
あ、みんな大人になってるんやと思って(笑)。
宮部 あああ〜。みんな大人なんですね。そっかー(笑)。
坂本 みなさんすごく優しくて、けっこうみんな、
大切に思ってくれてたんだなと思いました。
宮部 それはすごい私もファンとしてわかります。
やっぱり『メトロイド』は、
私にとって、大切なシリーズだから。
── いかがですか、坂本さん。
坂本 いや、もう……か、感激です。

次回へ続きます!

宮部みゆき
小説家。代表作に『模倣犯』、『理由』、
『火車』、『蒲生邸事件』などなど……。

↑宮部さんのサイトはこちらからどうぞ。

坂本賀勇
任天堂開発第一部課長。
代表作に『メトロイド』シリーズ、
『カードヒーロー』などなど……。
2003-04-11-FRI