テープで編まれたかごをアレンジし、
シンプルなカラーで展開している
「ベトナムのかご」。
weeksdaysの定番となっているこのアイテムは、
ホーチミンに暮らす田中博子さんが、
工場探しから生産管理、品質管理、輸出まで
尽力くださって、つくることができています。
ポリプロピレンが素材ゆえ、工業製品に見えますが、
材料のテープづくりは機械でも、編むのは手仕事。
経済の成長とともに、そんな「手」をつかう仕事が
失われつつあるベトナムで、
この「かごづくり」も、
工場がだんだん減ってきているのだそうです。
今回、新色をお届けするにあたって、
いままでの工場からあたらしい工場へと
生産拠点をうつした「ベトナムのかご」をめぐり、
ホーチミンの田中さんと東京の伊藤さんが
オンラインで話しました。
写真や動画もまじえて、
ベトナムの手仕事の今をお伝えします。

田中博子さんのプロフィール

田中博子 たなか・ひろこ

ベトナム手刺繍と手仕事のコーディネーター。
洋書の表紙に写る生春巻きに感動を覚え、
現地に行き、見て、食べて確かめるべく
1996年サイゴン(ホーチミン)旅行を決行。
1999年7月に移り住むまで、
休暇を使って北から南まで何度も旅をする。
住み始めてからは、ベトナム語を学びながら、
現地案内、職人探しをはじめ、
現在はベトナムならではの手仕事を
絶やさないよう奔走中。
「ほぼ日」では「ベトナム手刺繍の服。」を、
「weeksdays」ではこの「ベトナムのかご」のほか
「ベトナム手刺繍のハンカチ」も手がけた。

■Instagram

03
ピンクのかごをつくりました

伊藤
さて、今回の新色のピンクです。
田中
あの色、かわいいですよね。
すでに持っている人には、
差し色になって、いいですね。
伊藤
かわいいですよね。
ああいう大きさのかごでピンクって、
あんまり見たことがないから。
このピンクが、あたらしい工場と組んだ
最初の製品になりますが、
田中さん、大変なことはありましたか?
田中
まず、サンプルの色を間違えるという
トラブルがありましたけれど、
なんとかなってホッとしています。
テープをつくる工場では、
たとえばグレーだと、もともとグレーの色のついた
ポリプロピレンが粒々になったものに
顔料を足してあの色にしていくんですね。
でもピンクはその色そのものの顔料がないので、
色を組み合わせてつくるんです。
それがなかなかたいへんなんですよ。
色をつくるのに立ちあうときは、工場に行って、
ホヤホヤのあったかい出来たてをチェックして、
GOサインを出すんです。
伊藤
ぜんぜん想像がつかない! 
テープをつくるところと
編むところは別なんですよね。
田中
別なんです。
編むところはそれぞれ、
家内制手工業みたいな感じです。
おおもとは、すごくちっちゃい会社で、
家族経営とまでは小さくはないのだけれど、
基本、数人しかいないんですよ。
それがみんなすっごくいい人たちで! 
前は会社が大きすぎて、
職人さんたちには派閥があるし、
それぞれの派閥からいろいろ言われて、
間に入った私は
わけのわからない状態になったりしましたから。
伊藤
そうでしたか。
田中
今は、そういうのは一切ないんです。
検品の日は一日仕事になるんですが、
お弁当を持っていこうと思っていたら、
「つくってあげるから持ってこなくていいわよ」と。
社員さんが現地でみんなの分をつくってくれて、
それが毎日おいしくて!
伊藤
へぇー、どんなものをつくってくれるんですか。
田中
ほんとに普通なんですよ、
ご飯とスープと野菜の和え物とか、
魚の煮つけとか、魚を焼いたものとか、お肉とか。
伊藤
わぁ、素敵。
田中
検品で来てくれる人たちも、
前のときよりもたのしかったみたいです。
敷地内にものすごい大きいマンゴーの木があって、
鈴なりでマンゴーが実っているのを、
自由に取っていいよと言われてて。
検品で来てくれた子たちは、
昼休み、ご飯が終わった後、
自分たちで高枝切りばさみみたいな道具で
いっぱい採って、いっぱいもらって帰っていきました。
伊藤
いいなぁ! 
マンゴーは日本だとすごく高いんです。
田中
私も今年は一番マンゴーを食べた年だったかも? 
スターフルーツもいっぱい実っていて、
「2、3個もらっていいですか」と言ったら、
10個以上いただいちゃいました(笑)。
ココナッツの木もあって、
「今、上って取ってきたから、はーい」
みたいな感じで割って飲ませてくれましたよ。
伊藤
なんか‥‥すごい。夢みたい。
田中
そうなんです。食べ物に困らない場所でした。
伊藤
でも、それってすごく大事ですよね。
みんなでたのしく食べられる仕事場って
すごくいいなって思います。
その工場では、かごのほかに、
何かつくっているものがあるんですか。
田中
郊外で肥料を作っているそうです。
プラスチック製品を生産しながら、
社長さんがオーガニック製品にも熱心なんです。
「みんな、お米持って帰りなさい」って、
オーガニックのお米を分けてくれたりも。
伊藤
すごーい。
なんかたのしそう、ほんとに。
田中
一昨日、かごの出荷だったんですけど、
すっごく朝が早くて、朝6時から仕事だったんです。
それは涼しい時間にやらないと、
運び出すのが大変だから。
「じゃあ、終わったらご飯にしましょう」と、
地鶏のいいのを買ってきてくれて、
炊いた鶏をほぐして和え物にして、
鶏の出汁でおかゆをつくってくれました。
とてもおいしかったですよ。
伊藤
ベトナムに行きたくなってきました。
田中
来てください、ぜひ!
伊藤
日本が夏休みのとき、
ベトナムはそんなに暑くない、
っていうのがうれしいですね。
その新しい工場のみなさんと、
お付き合いが続けられるといいですね。
田中
心配はあります、やっぱり。
なにしろ戦争が終わらないことには。
伊藤
そうですよね。
そういえば私、むかーし、30何年前に買った、
「ヌクチャム」でしたっけ、春巻きのタレ。
あれを入れるちっちゃい小皿を買ったんですが、
どうやら、最近のものは
ずいぶん雰囲気が違うようですね。
田中
そうなんです。
伊藤
そのとき一緒に買ったアルミのへらも、
今はつくってないと聞いて、
田中
どんな形かな。
伊藤
持ち手のとこにちょっとうすーく、
レリーフがあるんです。
10本で何十円みたいな価格でした。
田中
持ってらっしゃいますか、まだ。
伊藤
持ってます。
田中
よかったら今度見せてください。探してみたいです。
そして、そう、そういう値段でしたね。
今はもう何でも値上げで、びっくりしますよ。
コーヒーとか、東京と一緒ですよ。
伊藤
そうなんですか。
そういう生活のための工芸品というか、
道具の移り変わりは感じますか。
田中
すごく感じますよ。
売ってるものがすっかり変わりました。
みんな、高級志向にもなってきているし。
伊藤
いただくお土産のチョコレートやお菓子が、
とってもオシャレになっているのを感じますよ。
田中
つくり手が、代がわりしてるんです。
20代から30代前半の若い子たち、すごいですよ。
とくに、留学して、海外でデザイン勉強をして
帰ってきた子たち。
伊藤
外の文化がどんどんどんどん入ってきて、
それを自分の中に入れて、
ベトナムを拠点に、さらに外に出すみたいな。
田中さん自身は、お仕事で扱うものが変わったな、
ということはありますか。
田中
仕事で求められるものは、変わらないです。
水牛の角のカトラリーとか、
木製品なら靴べらとか。
「SONOMITSU」という
オーダー靴をつくる友だちが谷中にいるんですけど、
靴べらを頼まれていて、1年から1年半にいちど
ベトナムからお届けしています。
水牛の角では、まさこさんもご存知の
沼津の「hal」の後藤由紀子さんが
とりわけのサーバーを定期的にオーダーくださいます。
伊藤
「hal」に行けば買えますか。
田中
はい、「hal」に行ったらあるはずですよ。
伊藤
田中さん、どれぐらいの割合で日本にいらしてる?
田中
半年にいっぺんですね。
こんどは秋に。
伊藤
今度、いらした時はぜひお逢いしましょう、絶対!
田中
はい。ありがとうございます!
伊藤
ありがとうございました。
(おわります)
2026-10-07-WED