イブル(이불)は韓国でキルティングの布団のこと、
ヌビ(누비)は、イブルに使われる
キルティングの生地そのものを指します。
日本と韓国を往き来してそのアイテムをつくるブランド
「8182」の松田香さん・松田洋奈さんに話をききました。
今回、つくっていただいたのは、
「weeksdays」特別仕様のイブルと
ヌビを使ったクッションカバー。
私たちの知らない「そもそも」の話から、
韓国と日本でことなる受け取られ方のこと、
そして今回のコラボレーションのことなど、
2回にわけてお届けします。

写真=有賀 傑
工場写真提供=8182

松田香さん・洋奈さんのプロフィール

「8182(はちいちはちに)」は
松田洋奈さんがディレクターをつとめ、
母の松田香さんとともに運営する、
日本を拠点にした韓国のイブルとヌビを扱う
テキスタイルブランド。
イブルはキルティング加工された薄手の布団・敷物、
ヌビはその原材料となるキルティング生地をさす。

洋奈さんは編集者の仕事を経て、
ふらっと立ち寄ったソウルで
韓国雑貨の魅力に開眼。
2007年、韓国雑貨店「g.カロスキル」をオープン。
韓国からキルティング寝具の輸入、企画開発に携わる。
肌が弱い自分たちにも使い心地が良いことを認識、
イブル工場に出入りするようになり、
2010年には韓国でのイブル制作に携わるようになる。
同時にオーガニック素材のイブル制作販売をはじめる。
2020年、日本のデザイナーと組み、
アウトレットイブルやヌビのあまり生地を使用した
ポーチや雑貨、寝具以外のアイテムの制作をはじめ、
2022年、母の香さんとともに
オリジナルブランド「8182」をスタートする。
近年はソウルに加えて、地方にも足を運ぶ日々。

ブランド名は、
日韓を往復する中でできたつながりを考えて、
国際電話における日本の国番号の81と、
韓国の国番号の82を合わせたもの。

■website

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「8182」ができるまで

伊藤
イブルというと、
いわゆる「韓国のお布団」として知られていますから、
本国ではちょっとほっこりしたというか、
生活に密着した道具の印象があるように思います。
でも「8182」のものには洗練を感じるんですよ。
とても素敵なものを作ってらっしゃいますよね。
ありがとうございます。
現地のものとは、
また雰囲気が違いますでしょう?
伊藤
はい。たとえばキルティングのピッチ(縫い線の幅)。
細いんですよね。
洋奈
このピッチができる工場が限られてることもあって、
とりわけ今回のものが細いので、完成したときは
「ああ、いいものができたな」と思いました。
新しい世界というか、新鮮な印象がありますよね。
伊藤
このサイズのピッチは、今まで、なかったんですか。
洋奈
生地としてはあるんですけど、
お布団にはありませんでした。
それができる工場を探すところから始めたことが、
とても面白かったです。
伊藤
ありがとうございます。
完成してよかった!
洋奈
いやあ、ほんとうに!
伊藤
それでは、お2人のブランド
「8182」(はちいちはちに)について
教えていただけますか。
どういう成り立ちなんでしょうか。
洋奈
元々は、私が18年ほど前に
韓国雑貨を輸入するお店を始めたんです。
そのときにイブルと出会いました。
使い心地がよく、
アトピーを持っている私にも気持ちよくて、
洗ってすぐ乾くという良さもあったので、
実際に自分が使うために輸入をして
販売を始めたんですす。
そこから長年販売をしてたんですけれど、
向こうの工場を紹介していただいて、
オリジナルアイテムを作るようになりました。
実際にブランドとして立ち上げたのは
4年ほど前のことです。
最初は8182(はちいちはちに)という名前ではなく、
イブルは韓国雑貨の一商品でした。
洋奈
それをブランドにしてみるのはいいかなと思って。
伊藤
それは、やっぱり需要が増えてきたってことなんですか。
洋奈
それはありますね。タイミングもあったと思うんです。
イブルっていうものが日本でも
浸透してきたというか。
伊藤
イブルって、韓国では問屋街で
売っているじゃないですか。
韓国のお友達に、
「すっごく素敵だよね、どういう存在なの?」
って訊いたら、「んー?!」だったり、
「え、何が?」って感じなんですよ。
洋奈
きっとそうですよね。
伊藤
いろいろ知りたくて深く掘り下げようとしても、
「別に、前からあるものだし」みたいな感じで。
私たちにはすごく新鮮なんですけれど。
洋奈
「おばあちゃんが使ってたもの」
っていうイメージが韓国の方にはあるみたいです。
伊藤
おばあちゃん。なるほど。
洋奈
色も韓国特有の赤とか黄色とか、
原色のものが多いので、
なぜそれを日本の方が好きなの? みたいに、
韓国の方は不思議に思うみたいです。
おばあちゃんの家にあった、とか、
地方に行ったらあった、みたいな感じ。
伊藤
そういえば、
「若い人たちで、使ってる人はいないよ」
とまで言われてしまいました。
洋奈
そうなんですよね。
確かにそう、韓国の若い人は
たぶんあまり使ってらっしゃらない。
伊藤
でも問屋街にはいっぱいありますよね。
あります、あります。
あんなに消費できないっていうくらい。
伊藤
私、2024年の秋に
20年ぶりぐらいに韓国に行って、
問屋街で比較的落ち着いた色味のイブルを見つけ、
やっぱりこれって素敵だなあと感じたんです。
それで買って来て友人たちに見せたんですよ。
紹介したいなと思って。
洋奈
そうなんですね。
伊藤
洗えるし、いろいろな使い方ができるじゃないですか。
洋奈
そうなんですよ!
伊藤
「そもそも」を知りたいんですが、
なぜお2人は韓国と繋がったんですか。
洋奈
たまたま韓国旅行に行ったんです。
その時はこれが最初で最後かなという感じで
「一度は行っとかないと」って。
それがきっかけだったんですよ。
パック旅行で、私も一緒に。
洋奈
二人とも初めて行ったんです。
そしたら、すごく面白くて。
伊藤
へえー!
その時はソウルですか。
ソウルでしたね。
雑貨が、すごく新鮮に感じられて。
洋奈
色とかデザインに惹かれてしまった。
あ、こんなに近くの国なのに
何も知らなかったっていう衝撃もあったし、
「焼肉とキムチしか知らなかったなぁ」って。
伊藤
とくに雑貨に惹かれて?
洋奈
はい。デザインがすごく優れていたり、
こういう暮らしのものを使うなんて、
知らないことばかり。
そしてその時に出会った人たちとの
ご縁が始まりとなって‥‥。
伊藤
それが18年前?
洋奈
はい、2007年の秋でした。
11月1日が仕事を始めて18周年だったんですよ。
洋奈
初めて行ったのが、その半年前ぐらいだったのかな。
「これは面白いから日本に紹介できたらいいなあ」
ということを思い、向こうで出会った方に相談したら、
「すぐやればいいじゃない」。
日本語のできる韓国の方だったんですけど、
そう言われて「そっか」ってそのときに思って。
伊藤
すごくないですか、それ。
初めて行ってから半年後に仕事に!
洋奈
そうなんですよ。
ほんとにその勢いで始めました。
ショップもオンラインだったこともあって、
始めやすかったというのもあります。
伊藤
その前もそういうお仕事をされてたんですか。
洋奈
いや、全然違う仕事でした。
ヨーロッパのファッション関係、
コレクション系の雑誌を作る編集者でした。
伊藤
えっ。すごい。
洋奈
そこから韓国に行ったことをきっかけに、
なぜか急に韓国にベクトルが向いて。
伊藤
そんなことって、あるんですね。
洋奈
友達にも驚かれてます。
「まさかの韓国! ヨーロッパじゃないの?」みたいな。
伊藤
そこからお店を始められたわけですが、
他にどんなものを売られてたんですか。
洋奈
文具的なもの、アクセサリーもありますし、
向こうのブランドの洋服です。
伊藤
じゃあ買い付けて撮影をして、紹介して、
オンラインで売っていた。
洋奈
今もファッション系のアイテムは
続けているんですけれど、
「8182」はイブルとヌビに特化しているんです。
(つづきます)
2025-12-21-SUN