人生の3分の1、といわれる睡眠の時間。
よりよい環境で快適な眠りを、と考えたとき、
寝具はとても大事なパートナーです。
シルクのブランド「ドレスハーセルフ」で作っていた
まくらの片側に使うピロカバーを原点に、
「weeksdays」では、枕をすっぽりシルクでつつむ
ピローケースをつくりました。
同時に、こんなときだからこそ、
自分を甘やかすアイテムを、という発想で、
シルクのフラットシーツも!
これらのアイテムについて、
制作を手がけた新潟「山忠」の入倉光子さん、
ドレスハーセルフの広報・ブランディングを手がける
東京チームの深澤絵さんと
オンラインで話しました。

●「weeksdays」のドレスハーセルフのコンテンツ
「手から手へ。」

●ドレスハーセルフのウェブサイト

入倉光子さんのプロフィール

入倉光子 いりくら・みつこ

株式会社山忠マーケティング本部所属。
アパレル・インナーの商品企画を長年担当、
中でも、シルクには25年以上携わる。
現在、シルクを中心に天然素材を使った
新しい上質なデイリーウェアブランドとして
DRESS HERSELFの商品企画に携わる。
「肌にやさしく、気持ちいい生活ができるよう、
常に新しい素材を探し、商品開発をしています」

深澤絵さんのプロフィール

深澤絵 ふかざわ・かい

株式会社Soldum代表。
1985年岩手県生まれ、上智大学卒業。
「日本人らしい創造的な仕事の真の価値や
魅力を発信すること」をコンセプトに、
セールスプロモーション/マネージメント/
ブランディングを展開する株式会社Soldumを立ち上げ、
アート/デザイン/工芸/食など
多岐に渡るプロジェクトに携わる。

その3
上質感のひみつ。
(入倉光子さん編)

伊藤
入倉さん、こんにちは。
ご無沙汰しています。
入倉
伊藤さん、お久しぶりです。
なかなかお会いできなくて。
新潟に来ていただいたのは、
もう3年も前のことになりますよね。
伊藤
本当ですね。
中国のシルクの工場とも
遠隔でやりとりなさっているんでしょうか。
入倉
そうなんです。メールのやり取りですね。
ズーム会議もしたかったんですけど
なかなか先方も忙しくて時間がとれず、
メールを送っては返ってきて、みたいな感じです。
でもやっぱり会って伝えるのと、
文字と写真で伝えるのでは違いがあって、
思い通りのものができるまでに
ちょっと時間がかかりますよね。
伊藤
今回のものについてはどうでしたか。
入倉
シーツとピローケースは、
形がシンプルですから、スムーズにいきましたよ。
やはりアパレル(服)のほうがたいへんです。
伊藤
ほんとうにいいものをつくってくださって、
ありがとうございます。
みんなも早く使いたいって言ってますよ。
わたしたちが「こういうものをつくりたい」と
提案したときは、どんなふうに思われましたか。
びっくりされませんでしたか?
入倉
実は、山忠でも、28年近く前、
まだシルクの原材料費が安かった時代に、
シーツをつくったことがあるんですよ。
伊藤
えーっ!
そのときのお客さまの反応は‥‥?
入倉
あまり、需要がなくって!
伊藤
でも作りたいって思われたんですよね。
入倉さんもそのプロジェクトに
参加なさっていたんですか。
入倉
はい、私も参加しての企画でした。
そもそも山忠では
「真綿(まわた)のふとん」を
ずいぶん長くつくってきたんです。
真綿というのはコットンではなく、シルクのことですね。
日本で木綿の生産が始まったのは室町時代と言われますが、
それ以前は「綿」は絹のことを指していたんですよ。
いまでこそあまりみなくなりましたが、
28年前は、まだまだ真綿布団をつくっていたんです。
伊藤
そんなふうに歴史と需要があるシルクも、
「シーツ」となると、
そんなに受け入れられなかった、
ということでしょうか。
入倉
はい、そんなに需要があるものではなかったです。
真綿布団を中心に、
シルクまわりのアイテムを増やしていこうと
思っていたんですけれど。
伊藤
当時のものと、今回つくったものは、
なにか違いがありますか。
入倉
はい。絹糸にはつなぎ目の節があるんですね。
それは「そういうもの」なんですけれど、
織物にしたとき、その節が生地の表面に出て
傷のように見えるものが出てしまったんです。
それはB品じゃない、と主張したんですけれど、
初めて扱った時でしたので、
山忠の基準としてはBとなってしまうものが多かった。
その節を除けてつくるのって、
すごくたいへんなことなんです。
伊藤
でも、今回のものは、
節がほとんど目立たないですよね?
入倉
はい、目立つ節はほとんどありません。その理由は、
以前に比べて、ランクの高い絹糸を使っているからです。
一般的な、巨大な市場に出回る
生地をつくっている工場ではなく、
自分たちで生地幅を決めて
別注でつくってくれる会社に依頼をしたんですよ。
だから、今回のアイテムには、
節がほとんどないと思います。
伊藤
撮影用に特別にきれいなものを送ってくださった、
というわけじゃないんですね。よかった!
入倉
価格を低くおさえるには、
市場に出回っている生地を買ってくればいいんですが、
ちょっと品質面で心配なんです。
今回のこれは、品質を重視している工場で、
一から生地を織っていますから。
伊藤
そういう背景があったんですね。
ほんとうに気持ちが良くって!
入倉
ありがとうございます。
伊藤
シーツとして使ってもいいですし、
うすい掛けぶとんのように使っても。
入倉
えっ? 掛けて使われているんですか。
なるほど!
伊藤
それも気持ちがいいんです。
入倉
今回の生地は「19匁」というもので、
かなり肉厚なものです。
さらにもうひとつ上もあるんですけど、
そうするとぐっとまた値段が上がりますし、
重さも出てしまいますから、
ここがちょうどいい按配かと思います。
伊藤
さきほども深澤さんと話していたんですが、
この軽さだと、洗ってもすぐ乾きますし、
旅にも持っていきたいくらいですよね。
入倉
ああ、そうですね!
そういえば、
長くつくっているシルクのピローカバーについて、
お客さまからいただいた声のなかに、
使っているうちに男性の加齢臭が
気にならなくなったというものがありました。
伊藤
えっ! そんなことがあるんですね。
入倉
そういうご意見が多かったんです。
実証実験をしたわけではないのですが、
たしかにシルクには、微生物の繁殖をしずめたり、
においの元となるものを吸着する性質があるんですよ。
加齢臭が気にならなくなることと、
関係しているかもしれないですね。
伊藤
すごいですね。
入倉
シルクのインナーもそうですけど、
暑い日に汗ばんでもべたつかず、
サラサラしているんです。
だから本当にシーツやピローケースを
シルクでつくるのはいいと思います。
頭も汗をかきますし、
吸ってもすぐに発散するから、
匂いがこもりにくいんじゃないかな。
伊藤
シルクは静電気も起こりにくいですよね。
入倉
これからの季節はとくにいいですね。
伊藤
織物についてお聞きしたいんですけど、
これはサテン、繻子織(しゅすおり)ですよね。
入倉
はい、サテン織物です。
伊藤
シルクってサテンが多いですよね。
入倉
はい。経糸・緯糸(たていと・よこいと)を
1本ずつ交差させる通常の織りかたとちがい、
サテンは経糸・緯糸のどちらかひとつが
表面に多く出る、特殊な織りかたなんです。
糸の交差する点が極端に少ないことが、
独特の、上品な光沢感と、
なめらかでやわらかな肌ざわりをうむんです。
だから絹織物はサテン織りをして、高級感を出すのが
一般的になっているんですよね。
伊藤
そういうことだったんですね。
気持ちよさを求めて、シルクはこの織りかたが
ポピュラーになったと。
入倉
はい、そうですね。
伊藤さん、使っていただいて、
大きさは大丈夫でしたか? 
マットレスの厚みごと端を巻き込んで留める
ボックスタイプではなく、
マチ幅を25センチずつとってある
シングル用のフラットシーツですけれど。
伊藤
一般的なシングルサイズの
マットレスを使っていますが、
ベッドパッドに敷くのに、いい大きさでしたよ。
それに、一枚の布と思えば、
いろいろな使いかたがありますよね。
ちょっとソファに掛けるとか。
入倉
ソファに掛ける! それもいいですね。
伊藤
だからボックスタイプにしないで
よかったと思ってます。
「気持ちのいい布」みたいな感じ。
入倉
そうですね! なるほど。
伊藤
いいものが、できました。
ありがとうございました。
入倉
こちらこそありがとうございました。
(おわります)
2021-10-20-WED