雪国だからこその「あたためる」知恵をいかした
飽きの来ないデザインの日常着を、
シルクを中心とした最高の素材で。
新潟と東京、ふたつのチームのタッグで
2017年にデビューした「ドレスハーセルフ」のこと、
もしかしたら、まだ、みなさん、
ご存じないかもしれません。
それもそのはず、このブランドはこれまで
「直販」しかしてこなかったんです。
ところが、今回、縁あって
「weeksdays」とのコラボレーションが実現。
その経緯を含め、ドレスハーセルフのこと、
彼らのものづくりについてみなさんに知ってほしくて、
広報担当の深澤さんに話をききました。
新潟を訪れたときの写真も、いっしょに紹介します。

深澤 絵さんのプロフィール

深澤 絵 ふかざわ・かい

株式会社Soldum代表。
1985年岩手県生まれ、上智大学卒業。
「日本人らしい創造的な仕事の真の価値や魅力を発信すること」をコンセプトに、セールスプロモーション/マネージメント/ブランディングを展開する株式会社Soldumを立ち上げ、アート/デザイン/工芸/食など多岐に渡るプロジェクトに携わる。

●ドレスハーセルフのウェブサイト
https://dressherself.com

その3
いいものを、三世代で。

伊藤
そしてシルクで、
いちばん最初に作ってほしいなと思ったのは、
Tシャツだったんですよ。
カジュアルにも着れそうだし、
きちんとした印象にもなるし。
深澤
そうですよね。ジャケットを羽織ってもいいですし。
伊藤
おばあちゃんとか、いろんな年代の人に合いますし。
わたしは、母にプレゼントしようかと思っているんです。
深澤
ぜひ!
今日、私も着て感じましたけど、
きれいにデコルテが出るように
デザインされていますよね。
伊藤
「こういうのって何でないんだろう?」
ってずっと思っていたんです。
コットンのTシャツだとカジュアルになりすぎる、
だからTシャツ型でも、
ちょっと光沢のあるものがあったらなと。
深澤
下をカジュアルにしたら
カジュアルにもなりますしね。
伊藤
あと、年中、着られますよね。
深澤
着られます、着られます。
伊藤
夏も、冬も。
深澤
シルクとカシミアの組み合わせが最強だっていうふうに、
ドレスハーセルフで推奨しているので、
冬場は特にシルクのインナーに
カシミアのアウターを重ねていただければって思います。
保温性という意味では、風を通さない上着を着れば
ものすごく温かいですし。
また、このシルクの下に
さらにシルクのインナーを着ると、
夏などは、本当に快適だなって思いますよ。
伊藤
首周りのかたち、裾の始末など、
何度もやりとりをして。
もうちょっとフラットなのがいいなとか、
いろいろと意見を交換しながら、
このかたちに仕上がりました。
伊藤
Tシャツの素材は、
もともとドレスハーセルフにあったものなんですか。
深澤
ドレスハーセルフでは
ナイトウェアに使っている生地ですね。
これを使っていただいたことは、
私もとても嬉しくて。というのも、
ずっと、夜寝る用だけにするのはもったいない、
贅沢だなと思っていたんです。
ですから私は飛行機に乗るときや、
旅行先のホテルでの部屋着として着ていたんですよ。
でももうちょっと展開があったらな、
と思っていたんです。
伊藤
飛行機に乗るときって、
とくにロングフライトの場合、
着るものにすごく気をつかいますよね。
深澤
はい、気をつかいます。
伊藤
人目にさらされるから‥‥でも、
リラックスしたいし。
たしかに、そういうとき、いいかもしれない!
深澤
そうなんですよ。ぜひそんなふうにも
着ていただきたいなって思っていたんです。
だからこのデザインができたことは
個人的にも嬉しくて(笑)。
伊藤
ドレスハーセルフのデザインや
アートディレクションは、
東京のチームがなさっているんですか?
深澤
プロジェクトメンバーでいうと、
新潟では、山忠サイドの専務をトップに、
マーケティングのチームで
全ての生地やパターン、MD、
セールスマネジメントを担当しています。
そこに対して東京には
デザインと企画を手伝ってくださる
アパレルのデザイナーの方がいます。
アートディレクションを担当しているのも、
東京のデザイン事務所です。
そしてそのチームを編成した、
プロデューサーであるカッコイイ女性が中心にいます。
その方がコンセプトなど、旗振りをされながら、
さらに、セールスプロモーションとか
PRまわりを私がお手伝いさせていただいています。
つまり新潟には生産の拠点があり、
東京にはプランニングチームがいて、
2か所に分かれたチームのタッグで
進んできたブランドですね。
山忠さんとは商品企画のこととか、
これをどう今後育てていくかを含めて、
今でもかなり綿密にやりとりしながら進めています。

▲新潟チーム。左から、坂上さん、入倉さん、宗村さん

伊藤
ドレスハーセルフは、これから、
どんなふうに育てていこうと思われていますか?
深澤
やっぱりリアルなファンづくりっていうことで、
直接手に触れていただけるきっかけを
どうつくっていくか、ということですね。
基本的に山忠としては、
昔ながらのやりかたである
「直接、お客様に商品を届けたい」
という方針がありますので、
それを叶えるための施策というと、
いくら広告や露出を増やしても違うだろうと。
直販ゆえの適正価格で作り続けるという意味でも、
誠実さというのがいちばんだと考えていますから、
いたずらに費用をかけて知名度を高めるのではなく、
本質的なインディーズでやっていきたいと考えています。

▲深澤さんに着てもらいました。<プルオーバー/ ウォームシルク、シルクモダールスパッツ>

伊藤
いちど良さを知ってもらうと、
次にまた着たいって思うわけですから、
まず知ってもらうことが、すごく大事ですよね。
深澤
そうなんです。
今もよく百貨店さんでイベントを
させてもらっているんですけれど、
それは百貨店というのは本当にいいものを探しに、
少しコンサバティブなお客様がいらっしゃるから。
まだ立ち上げて早々のブランドですが、
ものの良さという自信を持って堂々と構えたいと思い、
はじめから、百貨店さんに協力をいただいています。
そして、いま、百貨店のお客様は、
年齢層が少し高くなってきているので、
そこの部分も私たちは大切にしたいところなんです。
逆に、お母さま、おばあちゃまが家で
「これいいでしょう」って言って、
お嬢様が「いいじゃん」、
そんなふうに三世代に受け入れられたらうれしいですね。
「母から子に」っていうストーリーも
とても合うブランドだと思うので。
伊藤
三世代、素敵ですね。
わたしは冬にカシミアの毛布を使ってるんですけど、
娘がちっちゃい頃、ワアーって、頬ずりをしてたんですよ。
ああ、分かるんだと思って、買ってあげたんですね。
それを使ってたら、母が「いいわね」と言うので、
また買ってあげて。
年齢が高くなればなるほどデリケートになっていくから、
いいものが欲しくなるんでしょうね。
まさしくうちは「いいものを、三世代で」です。
だからドレスハーセルフは母にもプレゼントしたいな。
深澤
とってもうれしいです。

▲深澤さんに着ていただきました。<セーター/シルクコットンVネック、シルクモダールパンツ>

伊藤
深澤さん、きょうはありがとうございました。
ドレスハーセルフのことが、よくわかりましたし、
ますます好きになりました。
深澤
こちらこそありがとうございました。
長く着ていただけたらと思います。

(おわります)

株式会社山忠 マーケティング本部
入倉光子さんのはなし


新潟と東京、ふたつのチームで製作をはじめた
ドレスハーセルフですが、
中国からあがってきたサンプルを検討するために
山忠に集合し、
それぞれのチームで検討し、
至らない点は修正をして‥‥、
というふうに、入念につくっていきました。
素材についてはもう何十年も
「山忠」が培った経験が生きますし、
自信をもっておすすめできるものですけれど、
デザインがまったく新しいわけですから、
着用してみないとわからないことが多いんですね。
私たちももちろん着ましたが、
社内で、40代のごくごく一般的な
女性社員をモデルにして、
サイズ感や着心地を詰めていきました。
サンプルの修正はほんとうに
何度も何度もしたんですよ。
必然的に時間がかかりましたが、
初年度の冬に、靴下7アイテムと、
Tシャツっぽいカットソー2アイテムで
スタートを切ることができました。

ターゲットとする年代にあわせて、
デザインだけでなく、靴下の色も、
これまでの「山忠」の商品とはガラッと変えました。
ビビッドなオレンジなど、これまでやってこなかった、
ファッションの差し色になるような色を展開したんです。
私たちははじめてのブランド立ち上げという不安もあって、
「この色、ほんとに売れるのかな?」
みたいな感じでしたけれど、
東京・新宿の伊勢丹を借りてお披露目をしたとき、
ほんとうによい評判をいただいて。
会期中、何度も足を運んでくださるかたがいたほどでした。

シルクのTシャツがウォッシャブルである理由は、
特殊な加工をしているわけではなく、
洗いに対する耐久性の高い、
いいシルクを使っているからです。
いちばん高級なシルクは、
着物に使うような生糸ですが、
その次に高級とされる絹紡糸、そのなかでも
上のランクのものを使うことで、
ご家庭で洗濯をしていただけるものができました。
布帛なのに伸縮性があり、脱ぎ着しやすい理由は、
ポリウレタンを10%混紡しているからです。

ドレスハーセルフの服は、
これまでの「山忠」の経験と知恵をベースにした、
あたらしいもの。
ぜひ多くのかたに着ていただけたらなと思っています。
2019-09-25-WED