COGTHEBIGSMOKE(コグ ザ ビッグスモーク)は、
ロンドンに暮らすNoriko.Iさんがつくる
洋服のブランドです。
Noriko.Iさんがデザイン&ディレクションを、
東京にいる太田ふさ代さんが営業とPRを、
さらに生産と経理の担当のかたを入れて
ぜんぶで4人、というちいさなチーム。
「weeksdays」とのご縁のきっかけは、
伊藤さんが渋谷PARCOでの対談で着ていた
青いドレスでした。
それを見て連絡をいただいたのがきっかけで
交流がはじまり、とんとんと話がはずみ、
今回、別注色をお願いするにいたりました。
でも、ずっとロンドンのNoriko.Iさんとは
直接お目にかかってのお話ができないまま。
そこで、朝8時のロンドンと夕方4時の東京をむすんで、
Noriko.Iさんと伊藤さんがオンラインで対談。
初対面だけれどぽんぽん弾むふたりのはなし、
服のことだけじゃなく、英国ぐらしのこと、
そして「芝生」のことから、
会社論、人生論までひろがりましたよ。
5回にわけて、たっぷりお届けします。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/05/prof_noriko.jpg)
ブランドのデザイナー、
セレクトショップのバイヤーを経て、
2010年に英国・ロンドンに移住。
英国ブランドのディレクターを経て、
自身のブランド「COGTHEBIGSMOKE」を立ち上げる。
COGはNoriko.Iさんが愛するクマのぬいぐるみの名前、
“THE BIG SMOKE”はロンドンをあらわすスラング。
ロンドンの自宅をはじめ世界各地でおこなったデザインを、
生産チームのいる日本とオンラインでやりとりしながら
制作を続けている。
COGTHEBIGSMOKEのキーワードは、
シーズンレス、エイジレス、サイズレス、トレンドレス、
シーンレス、エフォートレス。
サイズはひとつだけ、素材はジャージーのみ。
その4芝生は人生そのものです。
- 伊藤
- 芝生の手入れを始められたのは
いつだったんですか?
ロックダウンになってから?
- Noriko.I
- この家に引っ越しをしたのが一昨年の7月で、
その年はまだゴチャゴチャしていて、
庭いじりができていませんでした。
わたしはそのとき芝生のことなんて
何にも知らなかったから、
きれいに生えてるわ、と思っていたんですけれど、
今、その頃の写真を見ると、
「うわ、何これ!」みたいな芝生でした。
ちなみに、英国には、
ローンマスター(lawn master)といって、
芝生のプロが本当にいっぱいいます。
プロ中のプロですよ(笑)。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/05/43ecb3983ba127ab015e0f37df91b333.png)
▲引っ越してきたばかりの荒れた芝生。
- 伊藤
- へー。庭師じゃなくてローンマスター。
- Noriko.I
- ガーデナー(庭師)の人もいますし、
庭師で芝生の世話もする人もいますが、
専任のローンマスターは、独自に配合した
種のミックスを出したりとか、
土を掘る道具を開発していたりとか。
- 伊藤
- 面白い!
- Noriko.I
- 草の色が青っぽいのがいいのか、
緑っぽいのがいいのかで、
配合する肥料のpHを考えたり。
わたしはそこまでいってないですけど。
- 伊藤
- 英国だったら、道具にも素敵なものがありそうですね。
- Noriko.I
- ガーデンセンターが素敵な場所なんです。
「ピーターシャム・ナーサリーズ」
(Petersham Nurseries)が有名ですけれど、
ローカルにあるようなところでも素敵ですよ。
カフェを併設していて、長居ができます。
英国人はガーデニングにかける情熱が尋常じゃないですよ。
お金もかけています。
去年、気候が良くなってきた6月とか7月、
みんな一斉に庭に出て、庭いじりを始めたんです。
もう英国って冬があまりにも惨めだし、
ロックダウンのストレスもあって、
特例でいちばんにオープンしたのが
ガーデンセンターだったんですよ。
食料品以外では最初でした。衣料品もダメだったのに。
それで行列までできて。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/05/00d4258cb8c9a90c683c788de335e3c8.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/05/bd78c4b78b916e4c26e527ab16c3020b.jpg)
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/05/1c20c6a39f4474ce4b2e704609aa68ef.jpg)
- 伊藤
- うちの母も、春は、ずっと庭に出ています。
わたしはそれを受け継がなかったので
何でも枯らすんですけど。
- Noriko.I
- 芝生って、自分がちょっと世話をするだけで
見違えるようにきれいになって、
どんどん元気になって、
ぐんぐん生えてきたりするのを一度体験すると、
楽しくなっちゃうんですよ。
本当にね、芝生って人生の縮図じゃないの?!
って思います。
- 伊藤
- 名言でした。「悪い土には悪い草が生える」。
そういう姿勢って、COGの服づくり、
仕事への姿勢にも通じている気がします。
- Noriko.I
- そうかもしれないですね。
わたしの服づくり、この仕事へのポリシーとしては、
「ラクをしていいラクならば、堂々とラクをする」
ということです。
- 伊藤
- おぉ。
- Noriko.I
- 深く掘るところは深く掘るんですよ。
でも効率化できるところは、どんどん効率化します。
ワンサイズの話もそうですし、
会社の人員の話もそうです。
日本のメンタリティって、
苦労して生まれたものじゃないと
あまり認めない、みたいなところがあるじゃないですか。
- 伊藤
- そうなんですよね。
- Noriko.I
- うちは、全員リモートで働いてるので、
2、3ヶ月どこか別の場所に行っていても、
仕事が滞ってなかったらいいんです。
かくいうわたしも、仕事をしながら
2ヶ月間スペインに滞在したことがあります。
結果がちゃんとしていればいい。
信頼と結果ですよね。
それに、誰がどういうタイミングでどう働くかについて、
社長のわたしが興味がないんです(笑)。
- 伊藤
- わたしもフリーで仕事をしているので、
そういうところがあります。
ダラダラするときはするけど、
そのままだったら信頼は得られないわけだし、
やるところはきっちりやって。
- Noriko.I
- わたしの仕事は、パソコンとネットの環境があれば
どこでもできる仕事ですから、オフィスは必要がない。
日本からの依頼でアパレルのデザインをしていた時も、
家が遠かったのもあり、
通勤時間で倍のメールが書ける、と思って。
でも日本のやりかたは、
「いやいや、やはり会社に来てもらわないと」。
どうやら会社に来ていないと、
仕事をしてないんじゃないかって思われている。
さらに「誰か遅刻していないかチェックしろ」
みたいなことまで言われ、子供じゃないのに! って。
これも芝生といっしょ。
きちんと肥料や水を与えられていないので、
ダメになっていくんですよ。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/05/89b5a17dc85f74ccbda5d905da7185a8.jpg)
- 伊藤
- おお(笑)。
- Noriko.I
- 表面は皆ニコニコ働いているように見えて、
心の中に黒いコケが生えてる(笑)。
- 伊藤
- 嫌ですね。風とおしよく、
楽しく仕事をしたいですよね。
- Noriko.I
- そうなんです。
責任を持って、期日までに、
ちゃんとしたものができれば、
そのプロセスなんて
誰かが管理する必要はない。
- 伊藤
- はい、英国にいて水が合うのは、
そういう考え方が基本にあるからでしょうね。
- Noriko.I
- はい。サボりたい人はサボればいいと思うんですよ。
そして、結果が出なかったら、さよなら。
それでいいです。
「サボるんじゃないか」って考えること自体無駄。
サボるような人は率先してサボってもらって、
浮き彫りにすればいいじゃないですか(笑)。
- 伊藤
- そうですよね。好きな考え方です!
でも本当にそうですよ、
全部自分に返って来るんです。
それに、サボりたいような仕事はしたくないですよ。
好きなことをやりたいし。
- Noriko.I
- あと、その人なりのパターンがありますよね。
たとえばわたしは、本当にギリギリまで
エンジンがかからないタイプ。
学生時代から、テストの前は
夜中の2時ぐらいになって、
「もうダメだ!」となるまでできなかった。
でも、そこからの集中力が半端ないんです。
- 伊藤
- うんうん。自分のペースがありますね。
- Noriko.I
- わたし、ふだんは、
ほとんど洋服づくりのことを考えずに
生きているはずなんですが、
家にいると鏡がいろんなところにあるので、
自分のすがたがシルエット的に嫌だと、
庭いじりひとつ、集中できないんですよ。
だから毎日着て、身体的にはもちろん、
視覚的にもストレスにならない服を、
ということを考えます。
時間的に型にはめられないこと、
視覚的ストレスがないこと、それができれば、
本当にハッピーというか。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/05/3abf34617742d66756760878b5986d27.jpg)
- 伊藤
- やっぱり英国にいらっしゃると、
視覚的ストレスは少ないですか?
- Noriko.I
- わたしは、もともと英国がすごく好きで、
という理由で来たわけではありませんが、
住んでいるうちに、どんどん好きになりました。
それは視覚的な暴力が少ないことが大きいですね。
日々感じちゃうんです、
公園に行っても、もう本当に美しい、と。
日本では看板や電線が目に入ってくることが、
わたしはストレスだったんだなってわかりました。
どんなに素敵な飲食店でも、
玄関脇に平気でおしぼりの箱が積んであったりとか。
- 伊藤
- わたしは東京に住んでいますが、
ある年、雪が降ったとき、
「なんてきれいなんだろう」と。
あ、そうか、いろんな色の看板やら、
ちぐはぐな家並みが、
じつは視覚的にストレスになってたんだ、と気づきました。
- Noriko.I
- それってすごくおっきいと思います。
日本で公園に行くと、ベンチはブルーのプラスチックで、
アイスクリームの旗が立っているとか、
わたしにとっては視覚の暴力に思えるんです。
お花見も、せっかくきれいなお花なのに、
どうしてあんなブルーのシートを敷くの? とか。
英国にもベンチや旗はあるんですよ。
だけど、暴力にならない色、デザインでつくっている。
ピクニックのシートだって、ダークグリーンだったりする。
人工的な色彩は持ち込まないですね。
日本のプラスチック製品って、青いものがあるけれど、
せめてダークグリーンにしたらいいのに、と思う。
それだけで随分変わると思うんです。
![](/n/weeksdays/wp-content/uploads/2021/05/511674dfbdec3682163370abc5469e0b-1.jpeg)
- 伊藤
- 同じことを思いました。