REPORT

saquiの冬のコレクション、
岸山沙代子さんが解説します。
[1]

緑に囲まれた静かなエリアに
アトリエを移転したばかりのブランド、
saqui(サキ)。
伊藤まさこさんといっしょに
ひざしのあたたかな制作室におじゃまして、
主宰でありデザイナーの
岸山沙代子さんのお話をうかがいました。
「weeksdays」に並ぶこの冬の新作、
どれも、すてきなんです!
3回にわけて、おとどけします。

岸山沙代子さんのプロフィール

きしやま・さよこ
大学の家政学部で被服を学んだのち、
手芸・服飾系の出版社へ。
働きながら「東京立体裁断研究所」に通い、
立体裁断を学ぶ。
別の出版社に転職後、伊藤まさこさんの担当に。
編集者歴10年を経た頃、
デザイナーになる夢をかなえるべく、渡仏、
パターンの学校へ通う。
パリでの3年を経て帰国、自宅をアトリエにして
「SAYOKO KISHIYAMA (サヨコキシヤマ)」名義で
自身のデザインによる服づくりをはじめる。
2016年「saqui」スタート。
そこから年に2回のコレクションを発表しつづけている。

●岸山さんについてくわしくはこちらのコンテンツをどうぞ。


[1]saquiの近況と、
フェイクムートン。

街の中にあったアトリエを、
緑の多いエリアに移しました。
都心からはすこしだけ離れましたけれど、
この環境に一目ぼれで。
内見のとき、伊藤さんに写真を送ったら
すぐに「ここに決めちゃいなさい!」って(笑)。

以前より面積が広くなり、部屋数が増え、
洋裁室、私の仕事部屋、ちいさなストックルーム、
そしてこの、すこし自由なスペースができました。
訪れたかたが「きっと創作意欲が湧きますね」と
おっしゃるんですけれど、じっさい、
以前もクリエイターの方が使っていたそうで、
たしかにそんな雰囲気を感じる空間です。
1階で、緑に囲まれていて、
晴れた日の木漏れ日が気持ちよく、
きれいな風が抜ける部屋なんです。
最寄り駅からはすこし歩きますが、
毎日、出勤するたびに
「ここに移ってきてよかった」と思っています。

saquiのチームは、ふだん、3人です。
役割分担は、私がデザイナー、
そしてパタンナーと縫製担当。
この3人で、サンプル制作からお直しまで、
ひととおりのことができます。
ブランドをつくって4年目、
会社にして2年目ですが、
やっと、そのかたちがととのってきました。

このコートは
ブランドとして「saqui」を立ち上げたとき、
最初の秋冬に作った形です。
ずっと人気で、毎冬、素材を替え作っています。
伊藤さんも、以前作った、
テディベアみたいな色の茶色いタイプをお持ちです。
この冬の素材は、フェイクムートン。
ウール72%、ポリエステル28%の混紡で、
saquiでは初めて使った素材です。
ふつうのムートンはベースが革ですが、
これはニットになっているんですよ。
だから、とっても軽い。
一見、重そうに見えると思いますが、じつは、
「saqui」のコートの中でいちばん軽いんです。

肩は、セットインスリーブではなく、
胸の切り替えのラインに揃えて、たっぷりと。
肩幅を気にせず、いろんな方に馴染みやすいかたちです。
「わたしは肩幅が広いから、着られません」とか、
「肩幅がないので、いつも、お直しをして詰めるんです」
というような方の悩みは、
このコートに関してはないはずです。

裏地は、袖口まで、総裏、キュプラ100%です。

ポケットのかたちもかわいらしく、
スナップも裏地で巻くなど、
こまかいところまで気を配ってデザインしています。

ここまでつくりこんで、
しかも珍しい素材を使っているのに、
どうしてこの価格が実現できたんですか、
という質問を受けるんですが、
最初のロットで
生地を安価に仕入れることができたからです。
今後、この価格でつくることが
できるかどうかはわかりません。

この色は「モーブ」と言います。
とても微妙な、ちょっと紫がかったグレー。
両方のいいところを受け継いだような色で、
私たちのトーンに、よく合う色だと思います。
「冬に映えそう!」という声もいただきました。

(つづきます)

2020-11-01-SUN