昨年、一昨年とたいへん好評いただいたので、
ことしもやります、年末年始の恒例企画、
「私のほぼ日プレイリスト」。
ほぼ日刊イトイ新聞の膨大なアーカイブの中から、
「音楽のプレイリスト」をつくるみたいに、
おすすめコンテンツを選んでしまうこの企画、
今回の選者は、ほぼ日刊イトイ新聞の読みものを
編集している、10人の書き手の乗組員です。
ということで、3年目のテーマは「自薦」!!
24年のほぼ日ヒストリーの中から、自ら担当した、
とっておきのコンテンツをたっぷりご紹介します。
12/26(月)から1/5(木)まで11日間の毎日更新。
この年末年始に、どうぞおたのしみください。

前へ目次ページへ次へ

7 菅野綾子のプレイリスト 2023-01-01-SUN

世界にはいろんな人がいます。

あけましておめでとうございます。
元旦担当の、ほぼ日編集部の菅野綾子と申します。
みなさま、2023年になりましたね。
新年は、私はいつもすっきりした気分になります。
じつは大掃除などはしておらず、
仕事もたっぷりつみのこしたままで、
ほんとうは個人的にはあまり
すっきりする理由はございません。
ただ年が明けただけで気分が晴れます。
そんな日に読み返したい、
晴れやかなほぼ日コンテンツはたくさんあります。
しかし今年の「プレイリスト」は自薦です。
新年っぽい色あいのものは、
自分の担当分にはあまりございませんでした。
しかし過去のコンテンツをさぐっていくうちに
「この世の中にはいろんな人がいてすごいなぁ」と
思えるようなラインナップが浮かびあがってきました。
元旦の本日、
「いやぁ、こんなにさまざまな人たちがいるんだし、
今年もたのしくやれそうだな!」
と受け取っていただければ、とてもうれしいです。
それでは、どうぞ。

 

私が生涯通してもっとも多い回数のインタビューをした人、
それは、みうらじゅんさんです。
みうらさんは、私にインタビューされるのは
飽きていると思います。
そのインタビュー数を一気に押し上げた連載が
「この島国編」でした。
47都道府県名を書いた紙をくじ引きボックスに入れ、
引き当てた県について、そのままぶっつけ本番で
話してもらうというコンテンツです。
これ、動画もあったのですが、
Flash Playerなのでサポートが終わってしまいました。
みうらさんの動画は、いつも打ち合わせ皆無の
ほぼノーカットでお届けしています。
(よかったら、動画が残る「お金編」もごらんください)
「この島国編」は2007年のもので「もくじ」がなく、
本文の下の「次へ」という小さなボタンを押していって
読みすすめることになりますが、
長い長いプロローグをポチポチ「次へ」して、
第1回の「長野県」からも
47都道府県つづきますので、
これだけを読んで、きっと元旦が終わってしまいます。

 

私が生涯通していちばん怖かったインタビュー、
それが朝比奈秀雄親方です。
朝比奈さんは石や木などの天然素材を使って
お店やお寺、住宅などの建築物を作る方なのですが、
自分が使う素材の「すごい在庫」を
工房内におどろくほどの量、持っておられるのです。
そんな朝比奈さんに、
ものづくりに対する考えをうかがいたくて
インタビューに滋賀県へ行きました。
冒頭で「わざわざ来なくてもいい」と言われ、
「ご自身で建てた家のなかで
これはよかったというものは?」という問いには
「ないわ」と即答され、
「なんだかおもしろそうですね」と口をすべらしたら
「おもしろいことないわ」と一喝され、
震えあがるようなインタビューのオープニングに、
自分でも戸惑います。
しかし一転、愛してやまない
石や木の素材群を目の前にしたとたん
めちゃくちゃ上機嫌になってくださり、
たくさんのことを教えてくださいました。
1300年前の東大寺の柱の礎石、800年前の五条大橋の石、
ウィンザー城からやってきた石などが、
ドカーンドカーンドカーンと庭に置かれています。
朝比奈さんの
「苦労した分だけ、喜びも倍やわ。」という大きな言葉を、
このインタビューをしたときの自分の気持ちとあわせて、
新年の今日もかみしめたいと思います。
ほんと、苦労した分だけ、倍です。

 

私はいま気づきました。ここまで全員、関西勢です。
新年に吹く関西の風は、
テレビの中だけではないのです。
しかしワンツースリーのここまでにしておきましょう。
自分調べで、ほぼ日社内からの人気が、
担当したなかでこれまでもっとも高かった連載、それが
「明るい家族相談室」です。
関西出身の山田かおりさん、まきさん姉妹が
みなさんからいただいた質問に答えます。
会社で原稿をまとめている時点で、私は毎回、
涙流して笑ってました。
だからきっとお読みくださるみなさんも
涙を流してくださるのではないかと思います。
初笑い泣き、全19回分、おたのしみください。

 

私がこれまでもっとも
時間を使って制作したコンテンツ、
それが「吉本隆明の183講演」です。
ギネスブックに載った吉本隆明さんの講演は、
183回、ぜんぶで21746分あります。
まず183個の音声を集めることからはじめ、音質改善し、
紹介文を作り、索引を作り、
全てのデータをアップしてからも、
ひとつ仕様が変わったら183回修正し、
ひとつの間違いが起こったら183回やりなおし、
ゴールの全く見えない暗闇を数年間歩きましたが、
「戦後思想界の巨人」の声を残す大仕事は
やりがいの山脈だけでできていました。
全国の有志のみなさんが無償で
講演のテキスト化を請け負ってくださり、
ほぼすべての講演が文字でも読めます。
そして、吉本隆明さんの遺志で、
音声やテキストの流用、転載などもフリーです。
それは商用でもです。
もちろん内容は、聞くたびに毎回難しくておもしろい。
自分で考えることのよろこびが、あふれ出ます。
21746分は362時間ですので、
1日1時間聴いたら1年が終わります。

 

ごつい漢字だらけの3人の方の名前、
並べると戦国武将みたいだな、と思いませんか。
あがってきたページデザインのタイトルが
明朝体だったのでよけいにそんな印象になり、
まわりのシマシマも、まるで旗みたいじゃないですか。
大河ドラマは新年あけて義時政子から家康へ。
そうだ、これまで日本に武将は数々いた。
しかしいまの武将はこの人たちだ。
未来に名前が確実に残るレジェンドだ!
武将は最初から席に座らない、
若い時分から記者会見に遅刻する、
気ままに煙草を吸いに行く、
小学生のときから疲れている。
偉大なのになんでこんなにおもしろいのか。
日本の宝物3人の対話です、お正月におすすめです。

それではみなさま、
よい年になりますように!

本年もさらにおもしろい読みものを
たくさんお届けしていきたいと、一同思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。

(つづきます)

2023-01-01-SUN

前へ目次ページへ次へ