本日からコンテンツの本番、
各県について語る連載が
スタートいたします。
最初にみうらさんが引いたラッキーな県は、
こちらの県でございました。
長野県 道祖神でハマり、山でつらい目に。
ほぼ日
記念すべき1県目です。
みうらさん、カードを引いてください。
みうら
どこからでも関係ないけどね、同じだから。
‥‥「長野」!
いいねぇ。
ああ‥‥いい、ああ‥‥いい。
(思いめぐらしているようす)
ほぼ日
(大丈夫でしょうか)
しょっぱなが長野県では、
むずかしいですか?
みうら
‥‥‥‥長野県の
ソウタイドウソシンと言ったら
ピカイチだね!
ほぼ日
何と?
みうら
ソウタイドウソシン。
「双体道祖神」と書きます。
ふたつの体の道祖神なんです。
ここに実物を持ってきてもいいですか。
ほぼ日
お願いします。
道祖神ですから、道にいる神様なんですね。
みうら
ぼくはいっとき
長野にハマりましてね。
それはなぜなら、
双体道祖神を見に行っていたから。
男の神様と、女の神様が、ふたりなかよく
おられる道祖神なんですよ。
はい、これが双体道祖神です。



道祖神というのは、そもそも
村と村の境を治め、
塞(さえ)の神様といって
疫病などが村に入ってくるのを
「さえぎる」神様なんですよ。




長野はなかでも珍しく、
抱き合ってらっしゃったり、
ときには男のかたが女のかたの
おっぱいをきゅっと揉み、
女のかたが男のかたの
股間をきゅっとにぎり、
なさっているのがあります。

ほぼ日
なるほど。
みうら
和合というんでしょうか、
もうグッときましてね。
ですから、よく行きました、長野には。
ほぼ日
(もう終わり?)
(小声で)スキーとか‥‥
みうら
もちろんスキー場にも行きましたよ、
スキーができないのに。
できない人間が行ってみたら
どうなんだろう、と、
ただそれだけで行きました。
まあおもに、風景見たり、
山のほうのロッジに泊まったり、
ということです。
何してるんだろう、とは思いました。
ほぼ日
おそばとか、おやきとか、
そういう思い出は?
みうら
基本的なところは、抜けてるんですよ。
いいですか、旅は、旅ですから。
そばを食いにいってるわけじゃないですから。
ほぼ日
ああ、そうでした、そうでした。
とはいえ、軽井沢などもありますし。
みうら 軽井沢は行ったことありますよ。
特に別荘は、ないわけです。
別荘はなくても行っていい、
それを逆転の発想というんでしょうか。
しかもまた、寒いときに行きまして、
つらかったです。
ほぼ日 登山は、いかがでしょう。
みうら 人間には、
向き不向きのモビルスーツ
があります。
ほぼ日 え?
みうら 体を体と思うから、人は変わりなく
何でもできると思っちゃいますが、
体をモビルスーツだとすれば、
「これは、海には向かねぇよ」というような
ケツのタイプだって、あるわけです。
ぼくのモビルスーツは、そもそも
山に向いてないんだけど、
天狗伝説というものが各地にあります。
長野の山にもあります。
「天狗」と言われたら、
ぼくは行くしかありません。
わぁぁっ、と言って、登るしかないのです。
ほぼ日 ははは。
みうら 天狗が見たいんだもん、
山は全然好きなことないもん。
でね、山にはクマが出る季節というものが
あるんですよ。
冬眠に入るちょっと前の、荒れてる時期に
そうなるんです。
そういうときに行った、登山向きじゃない人、
きついですね。
登山が好きで行くのなら
クマに会うのもしょうがないけど
登山が嫌いなのに山に行ってるわけですから、
えらい災難なわけです。
ほぼ日 そうですよね。
みうら そういう季節には、クマよけの鈴を
持って山道を歩くんです。
ちょっとでも鈴の音が途絶えると、
クマがクッときますから。
ほぼ日 大変ですね。
みうら 大変ですよ。
「お通夜に線香消したらえらいことになる」
みたいな必死さですよ。
ほぼ日 終始リンリンさせるのですから
必死の形相でしょう、それは。
みうら あ、そういえばさ、
白骨温泉って長野県でしょ?
行きましたよ。
それは、旅人の勘とでも言うのでしょうか。
白骨温泉には、前から
行ってみたかったんです。
どんだけ白いか見たかったんです。
ぼくの泊まったホテル、
やっぱりお湯は真っ白でした。
「うわ、すごいな!」と思って、
次の日東京へ帰って、テレビ見たら、
部屋の担当だったおばさんが
「入浴剤入れてた!」と責められて
カメラから逃げていました。
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は、
下の動画でどうぞおたのしみください。

道祖神、天狗伝説に、白骨温泉。
第1回をやってみてわかりましたが、
このコーナーには一般的な
名物や名所はあまり出てきません。
そのかわり、その土地の足もとにある
ベースの部分が
ひょっこりと顔を出すはめになります。
これは各県、油断はなりませんね。
また日曜日にお会いいたしましょう。
次の県は、長野と名前は似ていますが、
遠くに飛びます。

『WHAT DOES MIN-YO MEAN?』
ONSEN-TARO


日本を語っていただく企画ですから、
最近プロデュースされた民謡CDを
みうらさん、いまさらですが、ご紹介ください。

このCDを作ったきっかけは、香川県の金比羅山に行ったこと。
なぜ行くのかわからずに行きました。
しかも年末に行きました。

年末って、みなさん、たいがい行くところは決まっているでしょう。
「もうどこの観光地も混んでるから」という
決まり文句さえありますが、ガラガラのところもあるんですよ?
ガラガラになる理由は、もちろん、あるわけです。

みんな、欲をかきすぎですよ。
すいてておもしろいとこなんてあるわけないんです。
すいてておもしろくないとこだったら、
いっぱいあるんです、日本って。
そのことに、意外と気がついてない。

そのときは、まず香川県に行ったんですが、
年末のせいか、うどん屋が閉まっていたんです。
うどん屋が閉まってたら、しょっぱなから話にならない。
そこで「金比羅山に行けば開いてるかも」と言われ
足を向けることになりました。

金比羅山に行ったのは、そのときがはじめてでした。
年が明けるカウントダウンのときから
初詣客がいっぱい来ていました。
参道に、スピーカーがあって、いい感じで音が割れていました。
1960年代後半から70年代のサウンドを
出せるような、いい割れ方なんですよ。
そこからね、
「コンピラフネフネ、オイテニホカケテ
 シュラシュシュシュ〜」
なんだこのアバンギャルドな歌は!
それが、民謡ってヤツですよ。
これはクラブシーンに送り出していこうということになり、
このCDを出すことにしました。

CDには、ドンパン節も入っているんですが、
「ハゲとハゲがぶつかって、
 お互いケガなくよかったね」
という、ものすごくパンキッシュな歌なんですよ。
「ハーゲと、ハゲーとが」
って、ひどいじゃないですか。
こういうCDを聴いていただいて、
徐々に日本の「変」に触れてようということなんです。

2007-08-05-SUN
みうらじゅんさん&安斎肇さんが
結成した「勝手に観光協会」作の
すばらしい長野県ご当地ソング
「愛の双体道祖神」を
どうぞお聞きください。