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2020年3月に、渋谷パルコ8階「ほぼ日曜日」で、
演劇団体のマームとジプシーが
『CYCLE』という作品を上演します。

マームとジプシーファンのみなさんにはもちろんですが、
「演劇がはじめて」という方々にも、
ちょっと強めにこの公演をおすすめしたいと思っています。

そのおすすめの理由を感じていただくために、
インタビューを行いました。
脚本・演出の藤田貴大さんをはじめ、
マームとジプシーとコラボレーションしている方々に
ご登場いただきます。

どうして、何度も観たくなるのだろう?
友だちにすすめたくなるのは、なぜ?

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、
2020年2月26日に『CYCLE』の公演中止(延期)を決めました。
くわしくはこちらのご案内をお読みください。
そうした状況ではありますが、
この公演のために行ってきたインタビューは
本番直前の空気を伝える記録として予定通り掲載します。
延期となった『CYCLE』がいつか上演されるとき、
再び今回のインタビューを読むことをたのしみにしつつ、
この注意書きを記します。(ほぼ日・山下)

>マームとジプシーとは

マームとジプシー(まーむとじぷしー)

藤田貴大が全作品の脚本と演出を務める演劇団体として2007年設立。
俳優、テクニカルスタッフともにほぼ同メンバーで活動するものの、
カンパニー化はせず作品ごとに出演者とスタッフを集め創作を行っている。
2012年よりオリジナルの演劇作品と並行して、他ジャンルの作家との共作を発表。
あらゆる形で作品を発表し、演劇界のみならず
様々なジャンルの作家や観客より高い注目を受けている。

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インタビューをお読みいただく前に。

すでに概要をお知らせし、チケットも販売していますが、
「ほぼ日曜日」ではじめて演劇の公演を行います。

渋谷PARCOの8階には、
「パルコ劇場」というすばらしい劇場があります。
にもかかわらず、どうしてわざわざ、
設備が不十分でキャパシティも100席程度の
「ほぼ日曜日」で演劇を上演するのか。
そしてなぜ、
演劇作家・藤田貴大さんが率いる
マームとジプシーという劇団に
ぼくらはこの場所での公演をもちかけたのか。
インタビュー記事を読んでもらう前に、
そのあたりの経緯を記しておこうと思います。
できるだけ順を追って、正直に。
長くなったらごめんなさい。

申し遅れました。
「ほぼ日曜日」の担当であり、
この企画の言い出しっぺ、ほぼ日の山下です。

思いつきの発端を探して記憶をさかのぼると、
それはたしか2018年の秋でした。
リニューアルする渋谷パルコの中に
ほぼ日が新しいスペースをひらく、
という社内ニュースを耳にしました。
その場所は学校の教室ふたつぶんくらいの広さらしい。
展覧会でも、ライブでも、飲食でも、
たいていのことはやっていいらしい‥‥。
胸おどるニュースでした。
まだ図面もなかったけれど、
「どんなことができるんだろう」と、
新しいスペースへの期待が
むくむくと膨らんだのを覚えています。
もちろん、それなりのプレッシャーを伴って。

様々に浮かんできたやりたいことのなかに、
ぽつりとひとつ、思い入れの深い灯りが混ざっていました。
「演劇」です。

唐突ですがここで、ちいさく告白をしておきます。
学生時代からおよそ20年、
ぼくは演劇をやっていました。
劇団を旗あげし、劇場を借りて公演を行っていました。
脚本を書き、演出をし、自分も板の上に立ったりして。
おもしろかった。
これ以上おもしろいものはないと思っていた。
どこに出かけても、
「ここで芝居をやるとしたら‥‥」
そんなことばかり考えていました。
演劇の道を進むのをやめた理由は、
まあ、いろいろありましたけれど、
それで文字数を増やすのはやめておきます。
13年前から、ほぼ日の一員として働いている、
というのが現在の事実です。

そういう自分が、
「たいていのことをやっていい場所」の担当になって、
ぽつりと思ったわけでした。
「もしかしたら演劇、できるのかも?」

次に浮かぶ自問は当然こうなります。
「できるとしたら、どんな劇団にやってもらう?」

演劇の世界から離れているので、
最近の劇団のことはほとんど知りません。
それでも、いまの自分の仕事の中から
「ご縁」をたぐってみたら、
思ったよりも早い速度でこの名前が浮かんできました。

マームとジプシー。

「ご縁」というよりは、
「ふしぎな一致」と言うほうが正しいかもしれません。
ぼくらが「すてきだな」と思ってご一緒した方々と、
マームとジプシーも
コラボレーションをしているのです。

挙げてみます。

ブックデザイナーの名久井直子さんには、
ほぼ日ブックスの書籍、
『岩田さん』
『やさしくつよくおもしろく』
『アッコちゃんとイトイ。詩画集』などで
装丁のお仕事をお願いしました。
「ほぼ日曜日」で出版記念展覧会をひらいた
幡野広志さんの『なんで僕に聞くんだろう。』(幻冬舎)の装丁も
名久井さんのお仕事です。

名久井直子さんは、
マームとジプシーや藤田さんの作品では、
今回の『CYCLE』も含めた多くの宣伝美術をご担当されています。

▲2018年 東京芸術劇場『書を捨てよ町へ出よう』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 イラストレーション:宇野亜喜良 ▲2018年 東京芸術劇場『書を捨てよ町へ出よう』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 イラストレーション:宇野亜喜良

▲2018年 東京芸術劇場『BOAT』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝写真:井上佐由紀 ▲2018年 東京芸術劇場『BOAT』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝写真:井上佐由紀

2019年 彩の国さいたま芸術劇場『CITY』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝写真:井上佐由紀 2019年 彩の国さいたま芸術劇場『CITY』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝写真:井上佐由紀

さらに、宣伝美術だけでなく、
名久井さんへのインタビューで引き出された言葉を、
藤田さんが1つに構成した演劇作品を
共作で発表されました。

▲2014年『マームと誰かさん・ごにんめ 名久井直子さん(ブックデザイナー)とジプシー』
撮影:橋本倫史 ※会場では名久井さん本人が机で仕事をしている。 ▲2014年『マームと誰かさん・ごにんめ 名久井直子さん(ブックデザイナー)とジプシー』
撮影:橋本倫史 ※会場では名久井さん本人が机で仕事をしている。

▲2017年『ぬいぐるみたちがなんだか変だよと囁いている引っ越しの夜』 撮影:橋本倫史 ▲2017年『ぬいぐるみたちがなんだか変だよと囁いている引っ越しの夜』 撮影:橋本倫史

▲2016年 東京芸術劇場『ロミオとジュリエット』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝イラスト:ヒグチユウコ ▲2016年 東京芸術劇場『ロミオとジュリエット』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝イラスト:ヒグチユウコ

▲2017年 川上未映子×マームとジプシー『みえるわ』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝イラスト:ヒグチユウコ ▲2017年 川上未映子×マームとジプシー『みえるわ』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝イラスト:ヒグチユウコ

▲2019年 彩の国さいたま芸術劇場『めにみえない みみにしたい』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝イラスト:ヒグチユウコ 宣伝写真:井上佐由紀 ▲2019年 彩の国さいたま芸術劇場『めにみえない みみにしたい』チラシビジュアル
宣伝美術:名久井直子 宣伝イラスト:ヒグチユウコ 宣伝写真:井上佐由紀

上に掲載したビジュアルを見て、
お気づきの方も多いことでしょう。
画家・ヒグチユウコさんの作品です。
ほぼ日はヒグチさんとも
何度かご一緒させていただきました。

「ヒグチユウコ BABEL原画展」
「ヒグチユウコ ライブペインティング」
「ヒグチユウコ おえかきカンヅメ」
など、表参道のギャラリー
TOBICHIでの催しをはじめ、
書籍『思えば、孤独は美しい。』
『ほぼ日の怪談。』では、
装画や挿し絵を描いていただきました。

マームとジプシーでは、宣伝イラストのみならず、
『みえるわ』という作品で、
衣装もご担当されていました。

▲川上未映子×マームとジプシー 『みえるわ』 撮影:森栄喜 ▲川上未映子×マームとジプシー 『みえるわ』 撮影:森栄喜

「ほぼ日手帳」などでおなじみのブランド、
皆川明さん率いるミナ ペルホネンとも、
マームとジプシーは
何度かコラボレーションを行っています。

▲2018年 東京芸術劇場『書を捨てよ町へ出よう』 撮影:井上佐由紀 ▲2018年 東京芸術劇場『書を捨てよ町へ出よう』 撮影:井上佐由紀

ミナ ペルホネン/皆川明さんの展覧会
「つづく」が開かれた
東京都現代美術館の会場で、
ミナ ペルホネン×マームとジプシー
『Letter』が上演されました。

この作品は、2011年から8年間ミナ ペルホネンが
公式サイトで配信してきたLetterの言葉を原文に、
藤田さんが構成・演出をして1つの作品に作り上げたそうです。

▲2019年 ミナ ペルホネン×マームとジプシー『Letter』 撮影:井上佐由紀 ▲2019年 ミナ ペルホネン×マームとジプシー『Letter』 撮影:井上佐由紀

2005年「ほぼ日マンガ大賞」の入選者、
今日マチ子さんの『cocoon』という作品が
マームとジプシーによって2013年2015年に舞台化され、
2013年の初演時には今日さんが創作現場をレポートする
コンテンツをほぼ日で連載していただきました。

「劇団マームとジプシーとの52日間。
 今日マチ子の稽古場日記。

▲2015年『cocoon』 撮影:橋本倫史 ▲2015年『cocoon』 撮影:橋本倫史

また、今日さんと藤田さんがコラボレーションした漫画、
「mina-mo-no-gram」
秋田書店から出版されています。

南伸坊さんと糸井重里のおしゃべりが
『黄昏』という書籍になった記念に、
クラムボンは「黄昏」という曲を作ってくださいました。

▲2019年 彩の国さいたま芸術劇場『めにみえない みみにしたい』 撮影:細野晋司 ▲2019年 彩の国さいたま芸術劇場『めにみえない みみにしたい』 撮影:細野晋司

舞台『cocoon』の音楽は、
クラムボンのピアノ・シンガーである原田郁子さんのご担当でした。以降、藤田さんが発表している子どもから大人まで一緒に楽しめる演劇シリーズの音楽も担当されています。

スタイリストの伊藤まさこさんが
ほぼ日と展開している「weeksdays」
この中でご紹介している
シューズブランドのtrippenも、
マームとジプシーとコラボレーションしています。
「靴と演劇のコラボ?」
そう。衣装協力ではなく、コラボレーション。
これについては後述します。

▲2018年『BEACH』 撮影:井上佐由紀 ▲2018年『BEACH』 撮影:井上佐由紀

いかがでしょう。
マームとジプシーとほぼ日が、
ご一緒する先の「ふしぎな一致」を探したら、
これだけの実例がありました。

ああ‥‥やはりというかなんというか、
インタビュー記事の前置きの、
この文章が予想を超えて長くなっています。
長くなっていますが続けます。

上記の「ふしぎな一致」を見つけてから、
この劇団に対して
勝手に親和性を感じはじめていたわけですが‥‥
ぼくはまだマームとジプシーのお芝居を
観ていませんでした。

2018年の冬が訪れ、年の瀬が近づき、
クリスマスイブ。
ついに「はじめての体験」が訪れました。

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mum&gypsy×trippen
『BOOTS』
『BEACH』
2018年12月21日-29日/LUMINE0
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まず、驚いたのはその空間でした。
広々とした場所が大きくふたつにわけられていて、
半分のスペースには、
ずらりと靴が並べられていました。
trippenのシューズが。
販売しているわけではなく、展示です。
開演までの時間、観客はその展示を見ます。

▲2018年『BOOTS』 撮影:井上佐由紀 ▲2018年『BOOTS』 撮影:井上佐由紀

かなりの見応えでした。
高い技術で作り込まれた美しいシューズを一足ずつ、
立体のアート作品と向き合うように見続けていると、
やがて開演の時間に。
観客たちはその余韻を持ちながら、
もう半分の空間に移動します。
そこには、舞台と客席があります。

演劇がはじまりました。

▲2018年『BOOTS』  撮影:井上佐由紀 ▲2018年『BOOTS』 撮影:井上佐由紀

『BEACH』という作品と
『BOOTS』という作品を同じ日に2本、
あいだに時間をおいて観ました。

このときの感想をどう伝えればいいのか。

それは確かに、
靴と演劇とコラボレーションでした。
役者さんたちがtrippenを履いているのはもちろん、
物語の中に心地よく、
「靴」のイメージが溶け込んでいました。
となりの展示会場で感じたイメージです。

興奮していたのだと思います。
2本の作品を観終わってすぐ、
その会場の受付で、
マームとジプシーの制作・林さんにぼくは、
「ほぼ日の場所でこれをやりませんか」
と告げていました。
ちょっと声がうわずっていたはずです。

「これを観てほしい」と思いました。
渋谷PARCOの8階にできる
劇場でもないスペースを訪れた人たちに、
「たったいま自分が感じたこれを体験してほしい」
と思いました。

ありがたいことに、
マームとジプシーはこの提案を受けてくれました。
しかも、
『BEACH』『BOOTS』の再演ではなく、
『CYCLE』と名付けられた
また別な作品を上演してくださるとのこと。
シューズブランドtrippenとの
コラボレーション第三弾です。

以上が、
「ほぼ日曜日」での
マームとジプシーの公演が決まるまでの経緯です。

お芝居をまだ観たことがない人に観劇をすすめるのは、
なかなか難しいことだと思います。
敷居を高く感じている人も、すくなくないでしょう。

それでも、すすめたい。

肌に合うか合わないかは、当然あります。
ぼくと同じように一目惚れするかもしれないし、
ピンとこないかもしれない。

それでも、すすめたい。

どう感じたかを、語り合いたい。
好奇心がすこしでも動いたなら、ぜひ体験してください。

‥‥と、こんなに文字数を費やしても、
「マームとジプシーのすすめ。」ということを、
ほとんどできていない自覚があります。

そこで、
この劇団をよく知る人々に、
その魅力をうかがっていくインタビューを
読んでいただこうと考えた次第です。

まずは、劇団と関わりのある周囲の方々にお話を。
と思っていたのですが‥‥
なんと最初が、のっけからですよ?
作・演出、藤田貴大さんへのインタビューとなりました!
いきなり、中枢へ!

(次回、藤田貴大さんへのインタビューです)

2020-02-20-THU

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