本の装丁のことなんかを
祖父江さんに訊く。

(雑誌『編集会議』の連載対談まるごと版)

約1年連載を続けてきた、雑誌『編集会議』の対談。
最終回にお呼びしたのは祖父江慎さんです。
本屋さんに行って、「お、これは?!」というような
ちょっと冒険的な単行本を見つけたら、
手にとって装丁家が誰か調べてみてください。
かなりの確率で「祖父江慎」っていう名前が、
発見できると思うんです。

「ほぼ日」関係では、『豆炭とパソコン』が、
祖父江さんの装丁作品ですし、
ぼくが前に出した『誤釣生活』も、でした。

編集や、本に関係した企画の多い「ほぼ日」としては、
装丁のことっていうのは、
けっこう詳しく話したいテーマだったんで、
たのしい対談ができました。

第1回 ぜんぶ、受け身です。

第2回 恥ずかしいですけどね・・・。

第3回 帰れないまま、夏休みも終わって。

第4回 「顔を出さないアートディレクターね?」

第5回 人を育てる秘訣が、わかった。

第6回 考えてる時間も、問題ですもんね。

第7回 美意識って、何か、問題ありますよ

第8回 乱暴な色づかいだとか。

第9回 10分、20分の仕事です。

第10回 むだな時間ですよね。


 
糸井 たとえばの話、アメリカのロックビジネスなんかは、
悪いところももちろんあるけど、
ロックのままで済んでないじゃないですか。
いちおう金勘定をするぜ、のやつが、
ちょっと心に「キ」って入ってて。

アップルコンピュータにしても
ハリウッドの映画にしてもある、
そういう金勘定のシステムって、
日本にはまだないんですよ。
おれたち貧乏だもんね、な人たちどうしで、
かつかつだけどなんとかやる、というのは、
いままでもあったけど。

祖父江さんと出会ってから
ほぼ日刊イトイ新聞というのを
ぼくははじめて、あれ、そんなに
事業計画というのはないんですよ。

だけど、いまになってみると、
事業になっていないだけで、
すればできるところには
とっくにいってるんです。

そのつど解散するプロジェクトとか、
そういうことをこれから考える時に
ほんとに祖父江さんのように無計画な人が
あ、生きてますよ、というだけで、
元気になってくる。
今、会いたいのは逆にそういう人たちですね。

企業でシステムを上手に動かしている人たちは、
あちこちでいるから。
祖父江 何かね、広告とか、こうこうこういうことで
こういう広告になったんだよ、というのが
感じられてしまうと、何か醒めますよね。
糸井 どっちかといえば、
大きいチームだと、知らないうちに、
まちがいのないものを作ろう、という方向に
動いてしまうんですよね。
祖父江 間違いのない方向に、
というのにいっちゃうんですよね。
糸井 で、どういうふうに説明できるか、
というところに、必ずいっちゃうんです。
祖父江 そるなると、見てても
魅力が減りますよね?
糸井 そうなんです。
だから、ぼくは岡本太郎を思い出して、
岡本さん、芸術ってなんですか、と聞いた時に、
「『これは何だ?』って思うことだ!」
と、これはぼく本人から聞いているんです。
もともと、御茶ノ水の歯科大学の前に
石の橋があるんです。そこに、
ガムがぺったぺた貼ってあって。

小さいお金くらいのものが。
そこにツメで人の顔が描いてあるの。
二コッとしたもの。
でも、岡本太郎さんは、
それを芸術だと言ったの。
「これは何だ?!」と思ったから。
祖父江 わかりやすいですよね。
糸井 そう。芸術に、
超寿命の短い芸術があると思えば、
「これは何だ?!」と思ってから
あと2秒か3秒かは、芸術なんですよね。
そのへんは、ぼくの心の支えで。
祖父江 芸術と愛とは、近い言葉だと思います。
糸井 近いですよねえ。
それは愛です、って
言えばいいんだよ、と。
祖父江 そうですよね。
あんまり、こうこうこうが
愛だって言っても、何かね・・・。
結局何かわからないところが、
そのあたりが・・・。
糸井 たまゆら、ですよね。
祖父江 ゆらゆらゆら。
そのへんがいいなと思ったの。
糸井 それは逆に、
まんがとか歌謡曲のほうが
入っていることが多いから。
単純なスポーツだとか、
大衆が沸くようなものに、
そういう要素って見つかったりするんだよ。

だからぼく、永ちゃんから目が離せない。
だってあれ、三社祭を超えてるじゃないですか。

永ちゃんのことを
好きでも嫌いでもないってやつに
コンサート行く?って誘ってみると、
その日から「毎年行きたい」って言うもん。

それはね、何か、根底的に
備えられているものなんだよ。

賢いグループがよりあつまって
むつかしいことを言う、
君はすごいね、って言い合うみたいなのは、
やめにしたいの。

だけど、そういう人が時々いないと
何したらいいかわからなくなるから、
試し算として時々やると。

祖父江さん、いまいちばんたのしいのは、
こどもと遊んでるとき?
祖父江 ええ、あと、
むだな時間ですよね、おもしろいのは。
糸井 その時期、ずっと長くつづきますよ。
もうこどもおとなに近いけど、
俺、いまでもこどもと遊んでたいもん。
作品としてはいちばん不定形でしょ?
祖父江 わからないですね、なんか。こどもって。
糸井 (笑)わからないですよね?
すっと通じたり、これは無理だな、と思ったり。
祖父江 ばかばかしかったり、
何でこんなことを思うのかな、とか、
変なことが、いっぱいあるんですよね。
糸井 あれ、たぶんですけど、
いちばんわからない時の
自分に会ってたと思うんですよ。
出会いとして。

3歳の時の自分って
会えないじゃないですか。
でも、その自分に会いたいんですよ。
そうか、俺もそうだった、とか。
このようにで生きてたなあ、って、
自己確認しちゃうかもしれない。
祖父江 そうかもしれない。
こどもと会ってると、
言葉もめちゃくちゃになりますよね。
で、何言ってるかわからない、
めちゃくちゃな言葉のほうが、
割と伝わりやすかったりしますよね。
糸井 別にそれが仕事に生きるかどうかなんて、
こどもと遊んでいる時には思いませんけど、
でも、事実上生きていきますよね。
伝わる言葉を探す訓練というのは、
こどものいるほうが、増えますから。
祖父江 まあ、いいかげんなことをやるためには、
あったほうがいいというくらいの
世界ですよね。
糸井 つっこまれた時に
説き伏せたほうがわかりやすいから
言葉が要るけど、でもそれは父親成分ですよね。
ほんとうは、何かやりたい時って、
これも横尾さんからの借り物なんだけど、
女成分が多いわけで。
何かやりたいって、女性原理じゃない。
産むというのも。

横尾さんと会っていると、
先に考えた人だなあ、と思うことが
とても多いです。

どういう世の中になったほうが
いい、とかいうのって、
祖父江さんは、ありますか?
不自由感みたいなのってある?
祖父江 ええ。もっとだらだらと。
ぼんやりしながら、
おいしいものを食べながら、寝たりして。
そればっかりやってても
たぶん飽きちゃうから、
変わったことをしてみたり。
糸井 (笑)だいたい想像通りだけど、
本人に聞くとおもしろいなあ。

(おわり)

祖父江さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「祖父江さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2001-04-01-SUN

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