本の装丁のことなんかを
祖父江さんに訊く。

(雑誌『編集会議』の連載対談まるごと版)

第9回 10分、20分の仕事です。


 
祖父江 ちょうどそのあたりの「流行通信」に、
糸井さん、「金魚宣言」って
書かれていませんでしたか?
糸井 書いてました書いてました。
82年とかですね。
祖父江 ぼくが大学にいって、
本がすごい好きな時期ですよ。
糸井 頼まれたのがうれしくて書いたような
ものでしたね。金魚宣言は。
祖父江 ちょっとその頃、賢いことが好きで、
まじめな本を読んでいたんだけど、
やっぱ、あの金魚宣言には
感銘を覚えましたね。
糸井 その時に、はじめて出会ったんだ。
祖父江 特に、印象が強かったですね。
「ヘンタイよいこ」とかもあったけど、
金魚宣言のイメージが長くあって、
で、会社作ったのもぐうぜんで、
バブリーな時に、まんがって
部数すごく多いじゃないですか。
だから何でもありになって、
仕事もやりたい放題で、
税金がもったいないから
会社にしたほうがいいよ、と言われて
作ったんですが、その時の会社の名前も
金魚宣言の感じがいいなと思ってて。
糸井 コズフィッシュ?
祖父江 ビコーズ・フィッシュ、で。
糸井 あー。
こんなに長く会っていて、
はじめて聞きましたね。

ぼくは「金魚宣言」の原文を
持っていないですよ。
あれ、本にもなっていないし。
祖父江 もう一回、読んでみたいなあ。
糸井 たぶん、むつかしい文章ぶって、
あいだあいだにふざけたことを入れていくんですよね。
様式をまもっているふりをしながら、ハズす。
祖父江 一番ショックだったですね、あの時。
糸井 非常に酔っ払いな頼まれ方をしたものですけど。
祖父江 それでああいういい感じのものに。
糸井 あんなものを描くのに、たぶん20分とかだよ?
祖父江 その20分が今だに。
糸井 いい仕事って、ぜんぶ10分20分の仕事ですよ。
祖父江 あああ。なるほど。
そうかもしれないですね。
糸井 作詞でもそうですよ。
もう、ぜったいそうですね。
ただ、長編は違うけど。
長編の場合には、10分20分を足していくんですね。
そうすると、濃すぎちゃうんで、
疲れながら書いたほうがいいんでしょうけど。
でも向いていないので、
もう長編は書かないですけど。
なんかね、走馬灯のようにまわりましたね。
コズフィッシュは、単純に
もうかりすぎたから会社なんだ。
祖父江 税金払えないよ、たいへんだよ、と言われて、
そりゃそうだろうな、と思って。
いつまでも
人気のあるわけじゃないだろうし、って。
糸井 その頃は何人の事務所でした?
祖父江 いまとあんまり変わりないですね。
いま、アシスタントが2人ですけど。
糸井 じゃあ、計3人?
マネージメント的な仕事は、自分?
祖父江 ええ、手伝ってもらって。
ほとんど自分ですね。
個人と同じです。
糸井 個人で、クリエイティブの仕事をやるのって、
えらいたいへんですね、今は。
そういうことって、考えたことない?
ああ、ないんだよね、それ。
そうだ俺、知ってるんだった。
祖父江 ないですね。
糸井 何とかなるっていうふうに?
経営者としては。
祖父江 経営ってめんどくさいですよね。
だからなんかこうなっちゃったな、
というだけですね。
糸井 どんどん、仕事が、ぼくなんかは
種類が違うかもしれないけど・・・。

本のように、少部数でもいいから
仕事がたくさんあるのと、
代理店がどどどって動いて
20人の部隊が競合で5社集まって、
取ったところが何十億、みたいなのと、
両方ありますよね?

で、どどどどって動くほうが
いまどんどんつまらなくなってきて。
ほんとは、その両方が
一緒になったほうがいいんですよね。

たとえばの話、祖父江さんのような人が、
その気持ちのままで、
大きいと思われている仕事をみんなで手分けして、
「じゃあマーケティングの人はこうやって」
とかいうように一緒のプロジェクトやったら、
それぞれの仲間がシナジーみたいに結びついて、
それが理想だと思ったんですよ。
祖父江 それ、いいですよねえ。
糸井 かつて、そうなるといいなあと思って
祖父江さんと一回組んで、
プレゼンに負けましたよね?
祖父江 負けましたぁ。
糸井 負けるんですよ、やっぱり。
あの時にぼくらがやろうと思った実験は
いちおう失敗してきたけれども、
これから先は
ほんとうにそうなると思うんですよね。

この人しかできない、というのが
7人集まって、7人の侍、みたいな。
そうじゃないと、個性出ないですよね。
個性が出なければ
表現の価値なんてないわけで、
その意味でこれからって、
あっちこっちに、いろんなジャンルの
祖父江さんがいる、というのが
ぼくの理想なんですよ。

それをどう結びつけるかの
プロデュースをできる人がいなくて、
それがまずひとつと、あとは
祖父江さんにしても、タダの仕事だけど
やらない、というときには集まれても、
ちゃんとした仕事の時に集まれたことって、
まだ、ないんですよね。
ロックなの、けっこう。
祖父江 でも、そういうものかもしれませんよね。

(つづく)

2001-03-28-WED

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