- 糸井
- いや、ぼくもね、清水さんについては、言ったり聞いたりしてみたかったのよ。
- 清水
- いつも仕事の話で流れていっちゃうからね。
- 糸井
-
うんうん。
(南)伸坊とも改めて話っていうのはあまりしてないしさ。
- 清水
- 旅行行ってもそうだった?
- 糸井
- うん。しょうもないことは言ってるんだけど(笑)。
- 清水
- あ、わかる。
- 糸井
-
「伸坊ってどうだったの?」みたいなこと、あんまり聞いたことないんだよ。そういう典型の人が清水ミチコで。
アッコちゃん(矢野顕子さん)とは案外ね、しゃべってる。人生の深淵について語ったりしてるんだ、たまには。
- 清水
- へぇー。文字になってないだけで。
- 糸井
- 普通にちゃんとした話をするんだ。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- それで、何ていうんだろう、音楽で技術に絡むようなタイプのこととかね。
- 清水
- そんなことも話すの?
- 糸井
- 話す。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- だから、たとえば清水さんだったらすぐわかると思うけど、上原ひろみとやったあとに足を痛めた話って知ってる?
- 清水
- 知らないです。
- 糸井
- カッコいいだろ?(笑)
- 清水
- うん。なんで足なの?
- 糸井
- ペダル。
- 清水
- ペダル踏み過ぎってこと?
- 糸井
- ペダル、ガンガンものすごい、普段使わないぐらいに踏むから。
- 清水
- えぇー?
- 糸井
- 足の筋肉おかしくなっちゃったみたいな。
- 清水
- カッコいい(笑)。
- 糸井
- すごいだろ?(笑)
- 清水
- すごい。
- 糸井
-
そんなことから、それってどういうことなのかを聞いていったりとかさ。
あるいは、戦略じゃないんだけど、こういう新しいことを考えてるだとか、急に「あの本読んだ」みたいなことだとか。
- 清水
- へぇー、脈絡なく。
- 糸井
- うん。何ていうんだろうな、ビジネスというよりは事業家として発想してること、やっぱりあるよね。
- 清水
- え、意外。そうですか。
- 糸井
- うん。ビジネスって言うと、なんか誤解されるんだけどね。
- 清水
- うんうん、お金儲けじゃなくてね。
- 糸井
-
たとえばサッカーやってる人がサッカー界をどうしていくかって考えるじゃないですか。このチームをどう立て直すか、みたいなこととか。
アッコちゃんの中では、こういうのずいぶんあるよね。
- 清水
- ああ‥‥。
- 糸井
-
みんなはこのぐらいって思ってるだろうけど、そんなものじゃ矢野顕子はできないよってことがよくわかるよ。
それはきっとね、清水さんが見ても同じなんだと思うけど。
- 清水
-
うんうん。とにかく汚れない人ですよね、矢野さんって。
上手に離すっていうか。
- 糸井
- 面白いよなあ。
- 清水
- 意外と、意外とってことないけど、石川さゆりさんと何回かやってるけど、『天城越え』みたいなのは、絶対やらないもんね。
- 糸井
- やんないですね。
- 清水
- 自分の世界じゃないものは、上手に身を離すというか。
- 糸井
-
そうだね。
ボルネオのジャングルに入ったときに、このサルにこういうことしちゃいけませんよみたいなことは、しないよね。
- 清水
- 野性的過ぎて、たとえが(笑)。
- 糸井
- 清水さんは大学の勉強したの? 卒業できるぐらい。
- 清水
- うん。家政科で、うちの田舎って短大とか大学行く以上は、教員免許を取るのが当たり前みたいな常識があったの。だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
- 糸井
- へっちゃらなんだ、そういうの。
- 清水
- へっちゃらってことはないですけど、でも、料理は好きだし、面白かった。
- 糸井
- ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。
- 清水
- うん、してないです。親に心配かけるようなことはしてない。
- 糸井
- なのに、やってることは、ずーっと(笑)。
- 清水
- もう本当に、とにかくうちの両親は、森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 清水
- 「まあまあ、もう今年でやめますから」って言いながらずっとやってて(笑)。
- 糸井
- 森山良子さんを見てると、清水ミチコを思い浮かべるように(笑)‥‥
- 清水
- なっちゃうじゃないか(笑)。
- 糸井
- なってしまう(笑)。
- 清水
- 私の家系のひいおじいちゃんって人がエイザブロウって名前なんだけど、「嘘つきエイザ」って呼ばれてて(笑)。
- 糸井
- うん(笑)。
- 清水
- 普通は自分の名誉のためとかお金のために嘘をついたりするけど、そうじゃなくて、とにかく本当に自分の楽しみのためにだけ嘘ついてて。
- 糸井
- 嘘つき欲(笑)。
- 清水
- そうそうそう。息をするように嘘をつく(笑)。
- 糸井
- 単純な嘘(笑)。
- 清水
- そう。それを何回も繰り返して1人で笑ってたって人が私の祖先なの(笑)。飛騨高山で。
- 糸井
- ちゃんといい子だったんですか。おじいちゃんは嘘つきかもしれないけど「私」は。
- 清水
- 私は、いい子でもなく悪い子でもなく、パッとしないような子だったけど、やっぱり糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」とか、そういうものを高校のときに読んだり、『オールナイトニッポン』聞いたりとかして、だんだんそういうお笑いの世界みたいなのをのぞき始めて‥‥
- 糸井
- パッとしていったわけ?
- 清水
- 自分の中ではね、パッとしていったんだけど、ほかの人はみんな恋愛してる中で、自分だけが「ビックリハウス」載ったとか、ラジオで投稿読まれたとか、幸せの度合いがちょっと違う感じだった。
- 糸井
- だけど、ラジオで選ばれたり、「ビックリハウス」載ったりするのって、実はけっこう難しいことで。
- 清水
- そうかな。
- 糸井
- うん。今、やれと言われて載る自信、俺ないよ。
- 清水
- 本当ですか。
- 糸井
- うん。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- それができちゃったわけでしょう?
- 清水
- でも、そんなことばっかり考えてたからね、青春時代ずっと(笑)。
- 糸井
- ハガキ職人ですよね、いわば。
- 清水
- そうそう。ハガキ職人ってけっこう幸せっていうか、夢ありましたよね。
- 糸井
-
そうだよね。
ポエムを読んだらチョコレートをくれるみたいな番組があったんだよ。俺もやってみようと思ってやったら、もらったっていうのがあった。
でも、お笑いが絡むようなものはできなくて、もし「ビックリハウス」みたいなことだったら無理だったと思う。
- 清水
- そうかあ。
- 糸井
-
お笑いじゃない人だったから、俺。
きっと「二の線」だったんだよ。
- 清水
- 自分で言った(笑)。
- 糸井
- 昔は二だったんだ。
- 清水
- 今わかったんだ。「俺、二じゃないか」って(笑)。
- 糸井
- おっかしいなあ、戻ろうかな(笑)。
- 清水
- (笑)
- 糸井
- 今でも考えればハガキ職人できるの?
- 清水
- うーん。無理かもしれないですね。そういう試されることがないから。今はもう、思いついたらライブのためのネタにしてるっていうかね。そういうふうになっちゃったから。
- 糸井
- 松本人志さんが『お笑い共通一次試験』って面白いことのテストをやってたことがあったんですよね。で、なんでか知らないけど、ぼくもやったんだけど、ちっとも面白くないの、自分が。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- で、中でも、もうくっきり覚えてるんだけど、「一番ごっつ濃い鉛筆は何ですか」っていう。つまり4Hから4Bまであるんだけど、それを超える濃い鉛筆は何ですかって。
- 清水
- いい質問ですね。
- 糸井
- で‥‥
- 清水
- 何て書いた?
- 糸井
-
できないよ、俺、できないよ、みたいになってるわけ。提出するわけでもないんだけど。
そしたら、あとで見たら模範解答が、「鬼B」。
- 清水
- (笑)。悔しい。
- 糸井
- 悔しいだろ?(笑)
- 清水
-
なんか悔しい(笑)。
あるんでしょうね、きっと個性が。
- 糸井
- できないんだよ、俺。
- 清水
- 普通できないんじゃない? やっぱり(笑)。
- 糸井
- 『IPPONグランプリ』みたいな大喜利の番組があるじゃないですか。めちゃくちゃ面白いじゃないですか(笑)。
- 清水
- すごいよね。
- 糸井
- あれどうですか、清水さん。もしゲストで呼ばれたら。
- 清水
- いや、全然無理、全然無理です、やっぱりああいうことって。
- 糸井
- 写真で一言みたいな何か(笑)。
- 清水
- できない。全然できない。
- 糸井
- やるかやらないかは、お金次第(笑)。
- 清水
- やめなさい(笑)。金にならないことはやんないです、じゃないです(笑)。できない。
- 糸井
- 俺はもしかしたら金になんないとダメなのかなってちょっと思った(笑)。
- 清水
- お金関係あるのかな。ユーミン(松任谷由実)さんの「ギャラが出ないところではオーラは出しません」っていう名言があるけど(笑)。
- 糸井
- ああ‥‥なるほどね。それ大事だからね(笑)。
- 清水
- そうそうそう、大事なことかも。
- 糸井
- あんなにプロでありながら惜しみなく歌ったりするのって、玉置浩二さんだよね。
- 清水
- あ、玉置さん、やっぱり?
- 糸井
- 玉置浩二さんはもう、タダでいくらでも歌うね。
- 清水
- 私、ユーミンの歌を歌いながらテレビ局の廊下を歩いてたら、その3度下を玉置さんが歌いながら近づいてきて、めっちゃビックリした(笑)。途中でやめるのも変だし(笑)。
- 糸井
- 素晴らしいエピソード(笑)。
- 清水
- すごいよね。
- 糸井
- それ多分、表でもやると思うよ。
- 清水
- 多分ね(笑)。
- 糸井
-
だってたとえばの話、玉置さんがここにいて、そこにギターがあったら
「ちょっといいですか」(モノマネ)
って、自分の歌を歌い始めるよ。
- 清水
- 一番幸せでしょうね、そんな人。
- 清水
-
惜しみないですよね。
あれね、惜しむんじゃなくて、自意識が低い人ができるんだって。
- 糸井
- ああ。
- 清水
- 自意識が高い人は、もうどんなに上手でも「わあ、無理無理無理」って。できる人できない人は、うまい下手じゃないって。
- 糸井
- ああ。
- 清水
- 糸井さんなんかできないでしょ?
- 糸井
-
だって俺、そういうものないもん。
急に永ちゃん(矢沢永吉さん)のマネをするとかだったら、惜しみないよ(笑)。
- 清水
- モノマネって(笑)。モノマネはなんか違うね。
- 糸井
-
それは違うね。
「今、コピー書いてください」みたいなのは、しないよね。
- 清水
- 言われないでしょう(笑)。
- 糸井
- 言われたんだよ、昔よく。やってくれるって誰が言ったんだよって(笑)。
- 清水
- やんなかったの? 偉い。
- 糸井
-
ただ、つい思いついちゃったみたいなときは、やるに近いことはあったね。
(笑福亭)鶴瓶さんが大阪の番組に呼んでくれて、寄席の形になってて、で、ここに額みたいのがあるんだけど、ここに何て言葉があったらいいかな、って。で、思いついちゃったんで、言ったかな、みたいなのはあったな。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- でも、大喜利やる人じゃないんでさ、ぼく。
- 清水
- そうですよね(笑)。
- 糸井
- 鬼B思いつかない人だから。
- 清水
- 鬼B(笑)。でも、できるだろうって思われるのは損ですね。
- 糸井
-
もう言われなくなったかな。
でも、コピーは消しゴム使えたり引っ込めたりできるから、舞台の芸とは全然種類が違うよね。
- 清水
- うん。
- 糸井
- 今似てなかったら、おしまいだもんね(笑)。
- 清水
-
おしまい(笑)。
「似てなかったって顔に出すんじゃない」って注意したり(笑)。
- 糸井
- (笑)。「これはしまった!」っていうのある?
- 清水
- あるある。
- 糸井
- ある?
- 清水
- うん。というか私のネタって短めでしょ?連発してる中で、「あ、これひどかったな、今のは」っていうときがある(笑)。
- 糸井
- あ、前後に影響受けちゃうみたいなこともあるよね、きっと。
- 清水
- そうそうそう、引っ張られるみたいな。
- 糸井
- 引っ張られるよね。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
- どうして声が似るのっていうのは聞かれたことある?
- 清水
- ああ、ない。どうしてだろう(笑)。
- 糸井
- おかしいよね、声が似るってさ。
- 清水
- 本当だ。しかもそれで生計立ててるってね(笑)。
- 糸井
- あ、そうだ、井上陽水さんもやったよね。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
- 無理だろ、普通に考えたら(笑)。
- 清水
- 今考えたらそうだね(笑)。
- 糸井
- (忌野)清志郎をなんとかしちゃったもんね。清志郎の初期と今とでは、圧倒的に今のほうが似てるよね。
- 清水
- あ、そうですかね。
- 糸井
- しゃべりの癖を似せることはできるよね。要するに、ここがこうなんだなとかいうのを再現してるわけでしょ? 耳コピしてるわけでしょ?
- 清水
- そうそうそう、うん。
- 糸井
- それはできるんだけど、声の質まで。
- 清水
- ああ、そうか、うーん。
- 糸井
- うん。だってユーミンと矢野顕子、似てないじゃん。
- 清水
- うん、似てないですね。全然違う(笑)。
- 糸井
- どうして「私」が挟まると(笑)。
- 清水
- (笑)。ユーミンさんのモノマネして、矢野さんのモノマネしてだったら、あ、似てるって錯覚するけど、ユーミンさんやって、ここにユーミンさんが来て一緒に歌ったら、全然違うってわかると思いますよ、多分。
- 糸井
- でも、近いことやったことあるでしょう。矢野顕子とはやってますよね。
- 清水
-
うん、そうですね。
ユーミンさんとやったときも、でも、ちょっと似てるなと思った(笑)。
- 糸井
- あるよね。ほら。
- 清水
- やっぱりすごく好きだと‥‥自分ではわかんないな。どうしてなんだろう。
- 糸井
- どうしてなんだろうね。
- 清水
- 私も松村(邦洋)さんもそうですけど、あんまり自分の表現したいものがない人の方が、いいのかもね(笑)。「私の歌を聞いて」って気持ちに全然ならないけど、「私が演じる誰かを聞いて」っていう気持ちには、すごくなる。
- 糸井
- その人の代わりに歌ってる(笑)。
- 清水
- そう、「その人の代わりやるから、こっち聞いて。面白がって」っていう気持ちは強いと思う、人より。
- 清水
- そういえば昔、糸井さんとメールでやりとりしてて、「どうせ清水は今、田中眞紀子さんを練習中なんだろ?」って書いてあって、そうだ、田中眞紀子さんをやんなきゃと思って、あのとき自分に火がついて。
- 糸井
- (笑)。それは自分では思いついてなかったんだ。
- 清水
- うん、そのときはね。
- 糸井
- ああ。じゃ、またもし思いついたら、ぼく、言うよ。
- 清水
- うん。お願いします(笑)。
- 糸井
- つまり、それはなんで言ったかっていったら、どうせ、見たいと思ったから(笑)。
- 清水
- あ、リクエストだったの(笑)。
- 糸井
- 「あれやって」ってやつなの(笑)。
- 清水
- お任せください。伸びるから、ぜひリクエスト(笑)。
- 糸井
- 飴細工のおじさんにさ、「ゴジラ作って」って言ってるみたいな(笑)。
- 清水
- 「ゴジラかぁ、こんなんかな」って(笑)。
- 糸井
- 今、山根会長以外だと?
- 清水
- 大坂なおみさんかな。「スゴク、ツカレタ」(笑)。
- 糸井
- ああ(笑)。
- 清水
- めっちゃかわいいですもんね、あの人。そのくらいですかね、ここ最近は。
- 糸井
- ああ。そうね、女の人のほうがいいしね、できたらね。
- 清水
- うん。
(つづきます)