- 糸井
-
だけどさ俺、3~4年前、
清水さんが武道館の公演やったぐらいのときに、
ああ、清水さんもボスになったんだと思ったよ。
- 清水
- え、本当?
- 糸井
-
うん。
立候補しないのにボスになった人って一番いいなと思ったよ。
- 清水
- うーん。
- 糸井
- 何ていうんだろう、利害関係なく集まってんじゃん。
- 清水
- ああ、そう、そう。よくわかりますね(笑)。
- 糸井
-
別に清水プロダクションに入ったわけでも
何でもないのに集まってて、
で、なんとなく、そこに一つ清水さんが、
「こうやったほうがいいかな」って言ったら
「そうじゃない?」って言うやつがいる、
みたいになってるでしょ。
- 清水
- うん、えらいもんでそうですね(笑)。
- 糸井
- その場所に立つのって、なかなか大変なことでさ。
- 清水
- 目指したらね、きっと大変だと思う。
- 糸井
- 目指したら大変なのに。
- 清水
- うん、運もよかった。
- 糸井
- で、世話をしてきた覚えもないじゃないですか、人の。
- 清水
- うん。‥‥にしても、あんまりだな(笑)。
- 糸井
-
改めてお聞きしますが(笑)
何か「私は人の世話をしてきたんですよ」って思ってますか。
- 清水
-
あー、してない(笑)。
でも、若い頃は思ったの。
私も永六輔さんみたいになって、新人のライブを見に行って
「こうしたほうがいいよ」とか背中を押してあげるようなおばさんになれたらいいなと思ったけど、
やっぱり自分は自分の今日明日でいっぱいいっぱいなのよね。
だから、人に背中を教えてあげられている人は
大したものなんだなと思った、この年になったら。
- 糸井
- (笑)。でも、「こんなんでもいいんだよね」は見せてるよね。
- 清水
- うん、そうだね。こんなんでも大丈夫ですよって(笑)。
- 糸井
-
というのは見せてるね。
それから、あんまり、ツッパってないよね(笑)。
例えば清水ミチコがゲストなんだけど、
結局二言ぐらいしかしゃべんなくても、
お笑いの本職の人だとわりと気にするんだけど、全然気に(笑)‥‥。
- 清水
- しょうがないじゃんつって(笑)。
- 糸井
- 番が来なかった(笑)。
- 清水
- もう終わった(笑)。
- 糸井
- そのときには、まあ、ピアノも弾くしみたいな(笑)。
- 清水
- 何かありゃ(笑)。
- 糸井
- だから、全部アリっていうのは、ちょっといいですよね。
- 清水
- うーん。初めて客観的に自分を見たような気がした。
- 糸井
- 意識はしてないよね。
- 清水
- うん、してない(笑)。
- 糸井
- 清水さんは、この先どうするみたいなこと考えることはある?
- 清水
-
先どうするは考えないけど、
占いの人のとこ行ったときがあって(笑)。
- 糸井
- 自分で考えたくないんだ(笑)。
- 清水
-
そう、人に頼った(笑)。
そしたら、なんか車椅子に乗って芸やってるから、
凄みが怖くて誰も逆らえないって(笑)。
- 糸井
- ああ。でも、それを拍手で迎える人がいる限りはOKですよね。
- 清水
- そうかもね。
- 糸井
- そんなに喜んでくれるんだったら、車椅子に両側に龍をつけてね。
- 清水
- 凄みが、すごみが(笑)。
- 糸井
- 雷様みたく、雷鳴と共に登場。
- 清水
- 笑えないです(笑)。
- 糸井
- (笑)。「さあ、笑え!」、ドワワワァー!(ドラの音)
- 清水
- ドラが鳴るっていう、すごい。
- 糸井
- あ、でも、先のことを考えたくないという気持ちはあるんだね。
- 清水
-
うん、そうですね。
でも私、不幸になるような気がしない。
- 糸井
-
ああ。それがすべてだと思うね。
その「運悪くないし」みたいなね。
- 清水
- うん、そうね。
- 糸井
- ボーフラでもそうなんだよね。
- 清水
- ん?
- 糸井
- ボーフラでも多分そうなんだよね。
- 清水
- ボーグルって何?
- 糸井
- ボーフラってあの‥‥
- 清水
- あ、ボーフラ(笑)。失礼だな、この会社(笑)。
- 糸井
- いや、あんなやつらでも、「運悪くないし」と思ってると思う。
- 清水
- やめてよ(笑)。
- 糸井
-
ぼくなんか、ちょっと余計に考え過ぎるほうでさ。
ものすごく考える私と、何も考えない私が2人でリレーをやってるんです、いつも。
ものすごい考える私っていうのが、「本当大変なんですよ」って言いながら、さあ本番だ、っていうと、考えない私のとこにバトンが行くんです(笑)。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
-
別にいい話で終わらせるっていうテーマではないんだけど、
清水さんが、いい気にならないモードを保っていられるのは、
いい気になっちゃいけないと思ってるからですか(笑)。
- 清水
- いえ、そんな立場にないからですよ(笑)。
- 糸井
- 役割としてさ、多少偉ぶってくれないと困るんですよねって場面に呼ばれることはないですか。
- 清水
- あ、審査員とかね? うんうん。
- 糸井
-
それとか、新人が集まってる場所とか。
そのときは、役目として何かこう、しますよね、当然ね。
- 清水
-
うん、そうですね。
その場合は、やっぱりちょっと偉そうなほうがいいんですよね、おさまりが。
- 糸井
-
おさまり、おさまり。
で、それを経験していくと、
そういう人にどんどんなっていっちゃうじゃないですか、
けっこう大勢の方々が(笑)。
なんない理由の一つはやっぱり、失われるものが大き過ぎるからだよね。
- 清水
- ああ、そうかもね、うん。
- 糸井
- そうなっちゃったらこれできない、あれできないが、あるよね。
- 清水
-
そうね、あとやっぱりほら、
自分を客観的に見てナンボの商売だから、私たちは。
- 糸井
-
ああ、そうかそうか。
「こう見えてるよ」が仕事だからだ。
なるほどね。「こう見えてるよ」っていうの、実はプロデュースの原点だね。
- 清水
- あ、そうかね、うん。
- 糸井
- モノマネがプロデュースの原点です。ほら、終わった。
- 清水
- やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。
- 糸井
- やめてよ、軽薄、までで(笑)。
- 清水
- やめてよ、軽薄、まで(笑)。
- 糸井
- いや、面白かった。
- 清水
- 面白かった。あっという間。
- 糸井
- こういう会話は仕事じゃないとやっぱりありえないんだよなあ。
(おしまい)