糸井

「こう見えてますよ」って、似顔絵とかもそうじゃないですか。
そこには尊敬が入っている場合と、
そうでもない場合がある（笑）。

清水

おいしすぎる場合がね（笑）。
あの、「必ずこの人のまねはウケる」
っていうのは何なんだろう。
例えば、別に桃井さんのことを強調してないんだけど、
普通にやってもすごいウケるのよね。
あと、男の人がやる矢沢永吉さん。不思議ね。

糸井

それは、幼稚園に行くこどものいるお母さんが、
子どものハンカチに、クマとかウサギとか目印に描くじゃない。

清水

うんうん。

糸井

あの、パンダだね。

清水

なにそれ（笑）。

糸井

目印にすると、パンダはものすごくパンダじゃない。
ネコとクマは描いてもどっちかわかんないじゃない。

清水

うんうん、なるほど。

糸井

で、永ちゃんって、超パンダなんだと思う。

清水

ああ、なるほど。同じ動物界でも。

糸井

だってさ、どう言ったらいいんだ。
永ちゃんの面白さって、とんでもないよ、やっぱり。

清水

「面白さ」って二つあるよね、笑いのほうと、深みの。

糸井

結局それね、一つのものだよ。

清水

あ、そうなの？

糸井

うん。つまりね、永ちゃんの「面白さ」って、
「二」じゃないんだよ、おおもとは。

清水

ふーん。

糸井

ひょうきんな子だったらしいんだ、やっぱり。

清水

え、昔？『成り上がり』読むと違うけど（笑）。

糸井

だから、ちょっとかいつまんでんだよ、あれは（笑）。

清水

書いた人が言うんだから、間違いないか（笑）。

糸井

永ちゃんが、なんかひょい思い出して
電話をくれることがあるんだけど、
おれ、またね、永ちゃんのことが、
もっと、ものすごく、好きになって。
　
去年の暮れに急に電話があって、
いろんなことを褒めてくれたりもしながら、
なんでその電話をかけたかっていうと、
昔うちで作った、『Ｓａｙ　Ｈｅｌｌｏ！』
っていう、犬の本を見て、
「ずっとあったんだけど見たら、
糸井、面白いことしてるねえ。」って。

清水

あははは。
すごい、うれしいですね。

糸井

「いいよ。そういうところがいいよぉ。」って。
何年前の、何年前の本だよって（笑）。
１４、５年前の本を今見て、
それで電話したくなったって（笑）。

清水

へぇー。少年っぽいですね。

糸井

お互いね、「ないものを持ってる人」って
扱いをしているらしいんだよ。
　
で、「思えばおまえのやってることは、そういうことが多くて、
俺にはそういう優しさとかってのが、ないのね。」って。

清水

そんなことないですよね、きっと。

糸井

そう。で、
「それは違うよ。同じものをこっちから見てるか、
あっちから見てるかってだけで、
おれは永ちゃんにはそういうのをいっぱい感じるよ。」
って言うと、
「そうかなぁ。」って。
「うれしいよ、それは。」って。

清水

へぇー、ずいぶん・・・

糸井

いいでしょう？

清水

うん。

糸井

だから、どう言えばいいんだろう、
永ちゃんは、ボスの役割をしつつ、
時にはしもべの役割をしたり、
ただの劣等生の役割をしたり、
全部してるんです。

清水

そうかぁ。
　
永ちゃんにあって、糸井さんにないものっていうと、
何だと思いますか？

糸井

うーん・・・足りないもの・・・
量的にものすごく多いんだけど、
「責任感」じゃないかな。

清水

へぇー。それこそ、社長としても・・・

糸井

学んでますよ、ぼくは。永ちゃんから。
　
芸能の世界にだって、
大人数の人をひれ伏すようなチンパンジーたちはいるよ。
でも、やっぱり永ちゃんの、ボスザル感はすごいよね。

清水

前に、ユーミンさんが何かのインタビューで
「どうして矢沢永吉さんは
毎日のように自分がやるパフォーマンスに
飽きないのか知りたい」みたいにおっしゃってて、
それは皮肉じゃなくてね。どうなさってると思います？

糸井

「それは、矢沢が真面目だから」

清水

（笑）

糸井

「矢沢、手は抜かない」

清水

（矢沢さんのマネ）やめてもらっていいですか（笑）。

糸井

たぶん、そういうことだと思うよ。

清水

好きなんだね。

糸井

手を抜けないんだよ、たぶん。
手を抜いたら矢沢じゃなくなるって。
だから、矢沢は矢沢を全うするんですよ。

清水

そうか。それはみんなのためでもあるし。

糸井

うん。さっき「責任」って言ったのはそういうことで、
それのちっちゃいやつはみんなが持ってるわけです。
例えば、清水さんの最初の武道館も大勢が集まって、
あのとき、「私がぐずぐずしてらんない」
っていうのはあったんじゃないですか？

清水

そうそうそう（笑）。
糸井さんが、お客さんってけっこう
「一人」を見たいものだと言ってくれて、
そうかな？と思って一人でやってみたら、
あ、これいただいたって感じがして（笑）。

糸井

すごかったでしょう？（笑）

清水

うん。快感でしたね。

糸井

やっぱり、ここを私がちゃんとしないといけないみたいなのは、
みんながちょっとずつ持ってるんですよね。

（つづきます・・・）