- 清水
-
私ね、糸井さんに聞きたいこといっぱいあった。
でもいつも仕事の話になちゃうからね。
- 糸井
-
うんうん。
おれ、清水さんのステージを見てる歴って、
ものすごい長いからね。
- 清水
-
一番最初の、ジァンジァン(*)でやってたときからだもんね。
原宿の、もっと小さな劇場にも来てくれたことありましたよね。
*「ジァンジァン」は渋谷にあった小劇場で
1986年2月に清水さんが初ライブをした場所のこと。
- 糸井
-
いやぁ、ぼくもね、清水さんについては、
言ったり聞いたりしてみたかったのよ。

- 糸井
- 清水さんはさ、ちゃんと「いい子」だったんですか?
- 清水
-
私は、いい子でも悪い子でもなく、
パッとしないような子だった。けど、高校の時に
糸井さんの『ヘンタイよいこ新聞』(*)とかを読んだり、
『オールナイトニッポン』を聞いたりとかして、
だんだんお笑いの世界みたいなものを・・・
*『ヘンタイよいこ新聞』とは、
サブカル誌『ビックリハウス』に連載された読者投稿欄のこと。
編集責任者は糸井さん。
- 糸井
- パッとしていったってわけか。
- 清水
-
自分のなかではね。
でも、みんなが恋愛してるなか、自分だけは
『ビックリハウス』に投稿が載ったとか、
ラジオで投稿が読まれたとか、
幸せの度合いがちょっと違う感じだった。
- 糸井
-
だけど、ラジオで選ばれたり、
「ビックリハウス」に載ったりするのって、
実はけっこう難しいことで。
- 清水
- そうかなぁ?
- 糸井
-
うん。おれ、今「やって」って言われても、載る自信ないよ。
それができちゃったわけでしょう?
- 清水
-
あ、でも青春時代ずっと、
そんなことばっかり考えてたからね(笑)。
- 糸井
- ハガキ職人ですよね、いわば。
- 清水
-
そうそう。
ハガキ職人ってけっこう幸せっていうか、夢がありましたよね。
- 糸井
-
そうだよね。
え、そういうのは考えればいつでもできるの?
- 清水
-
そういえば、今はもう無理かもしれないですね。
そういう試されるときが無いから。
もう、思いついたらライブのためのネタにしてるっていうかね、
そういうふうになっちゃったから。
- 糸井
-
前に、松本人志さんが、「全国お笑い共通一次試験」っていう、
面白いことのテストを作ったことがあったんですよね。
で、ぼくもその問題を解いてみたんだけど、
ちっとも面白くないの、自分が。
- 清水
- へぇぇ。
- 糸井
-
で、中でも、もうくっきり覚えてるんだけど、
「4Hから4Bまでの鉛筆がある中で、
一番ごっつ濃い鉛筆は何ですか」っていう。
- 清水
-
いい質問ですねぇ。
で、なんて書いた?
- 糸井
-
「できないよ、おれ・・・できないよ・・・」ってなって。
提出するわけでもないんだけど。
それで、あとで答えを見たら、
模範解答が「 鬼B 」。


- 清水
- 悔しいー(笑)。
- 糸井
- 悔しいだろ?
- 清水
-
なんか悔しい(笑)。
でもああいう謎かけみたいなのができる、
できないみたいなのって、個性があるんでしょうね。
- 糸井
- できないんだよ、おれ(笑)。
- 清水
- ふつう、できないんじゃない?やっぱり(笑)。
- 糸井
-
清水さんは、どうですか?
あの、「写真でひとこと」みたいなの。
- 清水
- いや、全然無理です。ああいうことって。
- 糸井
- じゃあ、清水さんのあの面白がらせるのは、何あれ。
- 清水
-
私は、やっぱり耳で聞いたことを、自分なりに
「こういうふうに感じました」って提出すると、
違っててもおかしいんだろうね、きっと。
- 糸井
-
ああ、そうだ。
清水さんに会うから、なんか一つぐらい
「これを思ったんだよね」ってこと言いたいなと思ってて。
それで発見したのが、清水さんはいつも
「『私はこう感じてます』っていうことをしてるんだな」
ってことだったの。
- 清水
-
あ、本当?
あぁ・・・当たってます(笑)。
- 糸井
- ねえ。批評してないんだよ、全然。
- 清水
- あ、うれしい。
- 糸井
-
つまり、いいだの悪いだのじゃなくて、
「私にはこう見えてますよ」っていう。
そうすると、お客さんが、
「そう見えてる!そう見えてる!」って(笑)。
- 清水
-
「あるある!」って(笑)。
そうそう(笑)。
きっと共感してくださる方が多いんでしょうね。
- 糸井
- モノマネだからこその表現だよね。
- 清水
- うん、そうだと思います。
- 糸井
-
でも、文章も面白いんですよ。
ぼく、清水さんの文章を
「みんな、このくらい書けるようになりなさい」
って社内で言った覚えありますよ。
- 清水
- ほんとう?
- 糸井
-
うん。言ってはわるいですけど、
文章の修行をしたつもりは全然ないわけだから。
「修行したつもりのない人が、
こんな文章を書けるっていうことに、
もっとおののいてください」って。
- 清水
- わぁ、うれしい。頑張ろう。
- 糸井
-
清水さんがうちで子どものこととか書いている時代があったじゃないですか。
あのときに、いつもいいなあと思ってて。
ご本人は、文章は何だと思っているの?
- 清水
-
文章は、ブログなんかはやっぱり、
「1日こういうふうだった」ってことを寝る前に書くと
スッキリして寝られるので、
トイレみたいな感じですかね(笑)。排泄(笑)。
- 糸井
-
ほう。
でも、何も思わないで生きてたら、
書く段階になっても書けないじゃないですか。
だから、思ってる分量は多いよね。
- 清水
-
うん、きっと多いと思う。
高校のときに、自分の「面白ノート」というのがあって、
それに真面目なエッセイ爛とかがあるの。
それを「今回も書きましたけど、どう?」ってみんなに回して、
その人が笑ってると、
「もうすっごい幸せ。」みたいな。

- 糸井
-
ああ、ちょっと話聞いてると、生い立ちというか成り立ちが、
さくらももこさんに似てるんですよね。
- 清水
- あぁ、そぉー。
- 糸井
- 思わない?
- 清水
- あぁ、でもちょっとそうかなぁ。
- 糸井
-
思ってることをべつに人に言うわけじゃないけど、
あいつがこうしたな、
あ、おかしいことをしているなあって見てて。(笑)
それを描いたりして。
- 清水
-
あとで、ちまちまと。(笑)
で、本人は幸せっていうね。
- 糸井
-
だから、今の清水さんの話も、
周りの人が面白がるみたいなのが、原点。
- 清水
- あ、そうですね、うん。

(つづきます・・・)
