さて、ここまで僕とスーツのおはなしを
自由気ままに書いてきたわけですが、
今島で田舎暮らしをている僕は、仕事柄、
車に乗って地域に出かけることが多くなり、
あるときは、海で漁師さんのお手伝いをしたり、
あるときは、島の高校生とこれからの人生について
一緒に考える授業をすることもある。

さすがに漁師さんの手伝いをするときに、
スーツを着ていくわけにはいかないし、
僕が急にスーツを着ていくと高校生は
話しづらさを感じてしまうかもしれない。

だから僕は、東京で働いていたときのように、
毎日スーツを着ることは、おそらくできない。
せっかくスーツへの想いを再確認したにも
関わらず、これは何とももったいない。

けれど、僕がスーツへの探究から
気づいた仕事の原点は、これから島で働くうえでも、
きっと、たくさん生かすことができると思う。

ただ、その原点を忘れないようにするために、
ときどきは、シャツに丁寧にアイロンをあて、
ネクタイを締め、革靴を綺麗にみがき、
ジャケットを羽織る機会をつくって
みるのもいいかもしれない。

あと、僕は環境が変わった忙しさをいいわけに、
趣味というか「何かに凝る」ということを
最近していない。僕のスーツへの探究がそうで
あったように、単純な動機であってもいいから
日々を楽しめるような何かを、ゆっくりと
自分のペースで見つけていきたいと思う。

そして嬉しいことに、4月には仕事で、
5月には先輩の結婚式で、スーツを着る機会が
それぞれ1回ずつある。
日々の中に、小さくてもそんな楽しみを
蓄えておけることは幸せなことだ。

そんなわけで、これからも僕は、
スーツとはつかず、離れず、
ほどよい距離感を保ちながら、
いつまでも探究心を忘れない
大人でありたい、そんな風に思います。

（おわりです。最後までよんでいただき、ありがとうございました）