もくじ
第1回偏見が氷のように溶けた。 2019-03-19-Tue
第2回優しさは力の中にある。 2019-03-19-Tue
第3回絶対に休まないということ。 2019-03-19-Tue
第4回先生が夢を叶えない理由。 2019-03-19-Tue
第5回してきたことを、迷ってはいけない。 2019-03-19-Tue

NHKで10年以上、報道番組のディレクターをしていました。今はサイボウズという会社で働きながらいくつかの複業をしています。
パラレルキャリアでワーキングマザー。
ほんとうのことを、ありのままの自分で伝えていける人になりたいと日々試行錯誤中です。

Be free!</br>私を自由にしてくれた人。

Be free!
私を自由にしてくれた人。

担当・三木 佳世子

第4回 先生が夢を叶えない理由。

三木
先生はずっと、大学で言語学を勉強されてたんですよね?
先生
そう。英語はね、ほとんど独学。
三木
えーーーー!独学!!!???
先生
独学。
純粋な意味では、独学じゃないかも知れないけど。
いわゆる、to teach is to learn ってやつ。
教える事が学ぶことだっていう。
 
不幸なことに私が大学入って2~3か月で、授業がなくなるの。
通っていた東京教育大学(※現在の筑波大学)が
機動隊で封鎖されて、1年半授業がないんだよ。
その間、私には親からの仕送りがなかったから‥‥。
三木
どうしたんですか?
先生
だから、家庭教師を何件もかけもちして。
そこで中学生や高校生、大学受験生に英語を教えた。
そうすることによって、
どうやって教えたら一番分かりやすいかっていうのも
だんだん自分で学んでいくじゃない。
三木
確かに。
教えるのって、一番のインプットになりますよね。
先生
たぶんこれ記録だと思うよ。
月火水木金、ダブルヘッダーやるの、2件。
17時から19時と、19時半から21時半。
しかも30分で行ける距離のところを2件組み合わせる。
三木
すごい!
先生
10か所でしょ。土曜日はトリプルヘッダー出来るんだよ。
大学の近くで14時から教える。
三木
もうずっと教えてるじゃないですか!
先生
それで?
三木
13件ですね。

先生
13件だろ。
それで、日曜日は神様も休むから私も休む(笑)。
教えることで学んできた。
人に教わらなかったから良かったのかもしれない。
私の教える文法っていうのは全部私の解釈だからね(笑)。
文法書に載っていないような自分独自の解釈だから。
三木
先生にずっと聞きたかったんですよ。
全部手作りというか、教材が手書きの理由。
先生
うんうん。
三木
あれすごい。
先生
私も自分で、その理由を意識してなかった。
ところが、この辺に私が良く行く、
フレンチカフェみたいなバーがあるんだよね。
そこのシェフは村上さんと言って、
ニュージーランドのレストランで
フレンチのシェフとしてやってた人で、
英語の会話はできるの。
でもちゃんと勉強したものじゃないから、
色々私に聞くんだよ。
三木
へぇー。
先生
そのうちに面倒だからもう教材をあげてさ、
客がいないときは勉強してるんだよ。
ある時、私が行ったらno guestでさ。
「先生いいところにきた!」ぱっと教材を開いて、
「仮定法のここがちょっと分からないんです」って。
だから「あ、それはね」って1時間くらい個人レッスンして、
「じゃぁそろそろ帰るわ」って言ったら、
「いくらいくらになります」って。
1時間俺教えたのに、金払って(笑)。
三木
あはは。
先生
で、その村上さんからある時言われたことが2つある。
自分では気づかなかったんだけど、
「加藤さんが手書きにこだわるのは、
手書きの教材で勉強してると
加藤さんの声が聞こえてくるからでしょう」って。
「その文字を通して。授業を受けているような気になる」って。
 
あれはまさに、黒板っていうのがあって、
黒板をイメージして。授業のようにしてるじゃない。

三木
うんうん。
先生
私それに気づかなかったんだけど、
あぁ、そういう捉え方もあるのかって。
三木
もう一つは?
先生
もう一つはね、実は。
三木
実は?
先生
私、外国に行ったことがないの。
三木
わ!それ聞いていた気がする。
先生
そう。いまだにないの。
小さい頃から、将来の1番の夢は外国に行く事だった。
5歳のときに、親が缶入りのビスケットを貰ってきたの。
その蓋に、綺麗な景色がプリントされてるの。
山があって緑の牧草地があって、教会があって。
あとでそれがスイスだってわかった。
で、ここに行きたい!って。それが夢だったの。
今でも私は、外国に行くことが夢なの。
でもいまだに行ったことがないし、
パスポートを持ったこともないの。
三木
なぜその夢を、叶えないんですか?
先生
それもね、私は意識してなかったんだけど、
その村上さんが指摘したの。
「加藤先生のこだわりでしょ。
自分で外国にいっちゃいけないって思ってるんでしょ」って。
三木
ええっ?
先生
英語を教えている間は。分かる?
三木
もしかして‥‥。
先生
つまり、外国に何年も住んでいたとか、帰国子女とか、
しょっちゅう外国に行く人が英語が出来る、
というのは当たり前じゃない?
三木
うん。
先生
「英語って簡単だよ、向こうに行って
3年くらい住んでたら出来るようになるよ」って。
でも、それ受験生は出来ないじゃん。
だから外国に1度も行ったことなくても
このくらい英語出来るんだって。
三木
そうですね、それが言えるから。
先生
私、自分で意識してなかった。

三木
そうなんだ、わざとじゃなかったんですね。
先生
わざとじゃなかった。
三木
でも、村上さんすごい!
深いですね‥‥。
先生
そうそう、だからそうなんだよ。
外国に行ったことがないのに英語が出来るようになるって事を
教えなきゃいけないじゃない。自分が行っちゃずるいんだよ。
 
ウイニングをリタイヤして初めて外国に行ける。
で、ここが問題なんだよ。いつまでやるかっていう。
今年72の年男、イノシシだからね。
三木
私もイノシシです!
先生
そう!?一回り下だ!!
三木
あははははは、一回り!
先生
あはは。

(続きます)

第5回 してきたことを、迷ってはいけない。