- 三木
- 先生はずっと、大学で言語学を勉強されてたんですよね?
- 先生
- そう。英語はね、ほとんど独学。
- 三木
- えーーーー!独学!!!???
- 先生
-
独学。
純粋な意味では、独学じゃないかも知れないけど。
いわゆる、to teach is to learn ってやつ。
教える事が学ぶことだっていう。
不幸なことに私が大学入って2~3か月で、授業がなくなるの。
通っていた東京教育大学(※現在の筑波大学)が
機動隊で封鎖されて、1年半授業がないんだよ。
その間、私には親からの仕送りがなかったから‥‥。
- 三木
- どうしたんですか?
- 先生
-
だから、家庭教師を何件もかけもちして。
そこで中学生や高校生、大学受験生に英語を教えた。
そうすることによって、
どうやって教えたら一番分かりやすいかっていうのも
だんだん自分で学んでいくじゃない。
- 三木
-
確かに。
教えるのって、一番のインプットになりますよね。
- 先生
-
たぶんこれ記録だと思うよ。
月火水木金、ダブルヘッダーやるの、2件。
17時から19時と、19時半から21時半。
しかも30分で行ける距離のところを2件組み合わせる。
- 三木
- すごい!
- 先生
-
10か所でしょ。土曜日はトリプルヘッダー出来るんだよ。
大学の近くで14時から教える。
- 三木
- もうずっと教えてるじゃないですか!
- 先生
- それで?
- 三木
- 13件ですね。
- 先生
-
13件だろ。
それで、日曜日は神様も休むから私も休む(笑)。
教えることで学んできた。
人に教わらなかったから良かったのかもしれない。
私の教える文法っていうのは全部私の解釈だからね(笑)。
文法書に載っていないような自分独自の解釈だから。
- 三木
-
先生にずっと聞きたかったんですよ。
全部手作りというか、教材が手書きの理由。
- 先生
- うんうん。
- 三木
- あれすごい。
- 先生
-
私も自分で、その理由を意識してなかった。
ところが、この辺に私が良く行く、
フレンチカフェみたいなバーがあるんだよね。
そこのシェフは村上さんと言って、
ニュージーランドのレストランで
フレンチのシェフとしてやってた人で、
英語の会話はできるの。
でもちゃんと勉強したものじゃないから、
色々私に聞くんだよ。
- 三木
- へぇー。
- 先生
-
そのうちに面倒だからもう教材をあげてさ、
客がいないときは勉強してるんだよ。
ある時、私が行ったらno guestでさ。
「先生いいところにきた!」ぱっと教材を開いて、
「仮定法のここがちょっと分からないんです」って。
だから「あ、それはね」って1時間くらい個人レッスンして、
「じゃぁそろそろ帰るわ」って言ったら、
「いくらいくらになります」って。
1時間俺教えたのに、金払って(笑)。
- 三木
- あはは。
- 先生
-
で、その村上さんからある時言われたことが2つある。
自分では気づかなかったんだけど、
「加藤さんが手書きにこだわるのは、
手書きの教材で勉強してると
加藤さんの声が聞こえてくるからでしょう」って。
「その文字を通して。授業を受けているような気になる」って。
あれはまさに、黒板っていうのがあって、
黒板をイメージして。授業のようにしてるじゃない。
- 三木
- うんうん。
- 先生
-
私それに気づかなかったんだけど、
あぁ、そういう捉え方もあるのかって。
- 三木
- もう一つは?
- 先生
- もう一つはね、実は。
- 三木
- 実は?
- 先生
- 私、外国に行ったことがないの。
- 三木
- わ!それ聞いていた気がする。
- 先生
-
そう。いまだにないの。
小さい頃から、将来の1番の夢は外国に行く事だった。
5歳のときに、親が缶入りのビスケットを貰ってきたの。
その蓋に、綺麗な景色がプリントされてるの。
山があって緑の牧草地があって、教会があって。
あとでそれがスイスだってわかった。
で、ここに行きたい!って。それが夢だったの。
今でも私は、外国に行くことが夢なの。
でもいまだに行ったことがないし、
パスポートを持ったこともないの。
- 三木
- なぜその夢を、叶えないんですか?
- 先生
-
それもね、私は意識してなかったんだけど、
その村上さんが指摘したの。
「加藤先生のこだわりでしょ。
自分で外国にいっちゃいけないって思ってるんでしょ」って。
- 三木
- ええっ?
- 先生
- 英語を教えている間は。分かる?
- 三木
- もしかして‥‥。
- 先生
-
つまり、外国に何年も住んでいたとか、帰国子女とか、
しょっちゅう外国に行く人が英語が出来る、
というのは当たり前じゃない?
- 三木
- うん。
- 先生
-
「英語って簡単だよ、向こうに行って
3年くらい住んでたら出来るようになるよ」って。
でも、それ受験生は出来ないじゃん。
だから外国に1度も行ったことなくても
このくらい英語出来るんだって。
- 三木
- そうですね、それが言えるから。
- 先生
- 私、自分で意識してなかった。
- 三木
- そうなんだ、わざとじゃなかったんですね。
- 先生
- わざとじゃなかった。
- 三木
-
でも、村上さんすごい!
深いですね‥‥。
- 先生
-
そうそう、だからそうなんだよ。
外国に行ったことがないのに英語が出来るようになるって事を
教えなきゃいけないじゃない。自分が行っちゃずるいんだよ。
ウイニングをリタイヤして初めて外国に行ける。
で、ここが問題なんだよ。いつまでやるかっていう。
今年72の年男、イノシシだからね。
- 三木
- 私もイノシシです!
- 先生
- そう!?一回り下だ!!
- 三木
- あははははは、一回り!
- 先生
- あはは。
(続きます)