- 先生
-
でもさ、びっくりしただろ、
教室の場所が変わって。
- 三木
-
あれいつ直るんですか?
(※もともと教室があったビルが建て替え中でした)。
- 先生
-
もう向こうには戻らない。
だからもうね、それを契機に辞めようと思ってたの。
- 三木
- いつですか?
- 先生
-
今から2年前の3月に30周年記念パーティがあったの。
そこでね、私は直前まで引退宣言をするつもりでいたの。
ちょうどビル移転の話もあって、
これを機に、31年の幕を閉じようと思ったんだけど‥‥
卒業生たちに、のせられちゃった。(笑)。
- 三木
- うふふ。
- 先生
-
1つは、みんなさ、色んな世界で頑張ってるじゃん。
ウイニング魂を持って。
それともう1つはね、私が全く知らなかったんだけど、
私に内密に、1年間のドキュメントムービーを撮ってたの。
それを撮ってる連中たちが、そうそうたる連中で。
それを見て感動したんだよね。
だから、もう少し頑張ろうかなと思って。
- 三木
- 今はあと何年やるかって、考えてたりするんですか?
- 先生
-
全く考えない。今は、その年その年。
今度もう33年目だからね。
今まで32年間、1度も授業休んでないからね。
- 三木
-
すごい。
私が通っていた時も、先生は休んだことが無くて、
それを本当にすごいなと思っていて。
さすがに、記録は破られたかと思っていたけれど‥‥。
- 先生
- 私にとっては、当たり前のことなんだけど。
- 三木
- いやー。
- 先生
- でも世の中当たり前じゃない人が多いんでね。
- 三木
-
当たり前じゃないと思う。
だって先生、1週間のうちどんな感じで授業を‥‥
変わってないですよね?
- 先生
- あのね、今、生涯で最も年間の労働時間が長いの。
- 三木
- え!?逆に!?短くなったんじゃなくって?
- 先生
-
平常授業だと、火水木金の17:50~20:50までの3時間授業。
土曜日はそれがダブルヘッダー。2コマ。
日曜日はトリプルヘッダー。
さらに土・日は受験生のクラスだから、
1コマが3時間20分に増えるの。
- 三木
- 日曜日なんて10時間教えてる!
- 先生
-
それ1回も欠かしたことがないんだよ。
私、5つの誓いがあるの。
1、休まない。2、遅れない。3、約束は守る。
4、ドタキャンしない。5、先約絶対。
これを私は守ってきてる。当たり前のことなんだけどね。
- 三木
- いやぁ‥‥やっぱり、すごい。
- 先生
- 例えば、ちょっといいレストランに2人分の予約をするよ。
- 三木
- はい。
- 先生
-
そうするとね、
一緒に行くはずだった女の子がドタキャンしてくる。
- 三木
- 女の子!
- 先生
- 当たり前だろ、女の子としか行かないもん。
- 三木
- そうですよね、変わらない!!(笑)。
- 先生
-
そうするとね、どうするかと言ったら、
私絶対にドタキャンしたくないから。
- 三木
- レストランですらドタキャンしない?
- 先生
- うん、しない!
- 三木
- はぁー。
- 先生
-
嫌なの。
そうすると、別の女の子誘っていく。
- 三木
- あはははは。
- 先生
- はっはっは。
- 三木
-
へぇー 面白い。
だって普通レストランとかだったら、
すみませんちょっと人数がとか言って。
- 先生
- したくない。
- 三木
- ならないんだ。
- 先生
- 逆にされたらいやだもん。
- 三木
- そりゃそうですよね。
- 先生
-
だから授業日程表があるじゃない。
あれは、私と生徒との契約だから、
その時間必ず授業をやりますよってね。
ということは、私は絶対ドタキャンはしないし必ず守るけども、
生徒は良く休むよね。あれ、私との約束だろ?
- 三木
- そうですね(笑)。
- 先生
-
4年前、鳥取県の米子にいる母親が99で亡くなったの。
でもそれ、夏期講習中だったから帰れないよ。
だって夏期講習のほうが先約だもん。
おふくろの死っていうのはあとで起きた事だ。
私と生徒との約束とは関わらないじゃない。
- 三木
- はい。
- 先生
-
だから戻らなかった。
それどころか、そのあとの1周忌とか3周忌も帰れなかった。
やっとね、去年の7月にやっと‥‥
短期間帰って初めて、おふくろの位牌に手を合わせた。
- 三木
- それが初めて‥‥。
- 先生
-
初めて。
ただね、おふくろが88の時に、
私の6個上の兄貴が急死したのね。
- 三木
- そうだったんですね‥‥。
- 先生
-
うん。
その時も夏期講習中だったから、帰れなかった。
私はおふくろに詫びたよ。
「あれだけ世話になった兄ちゃんの葬式に
帰ってこれんで、ごめんね」って言ったら、
88のおふくろが、こう言ったんだよ。
「ええだが。お前には、代わりはおらんだけぇ。
昔からよう言うが、芸人は親の死に目に会えんて。
舞台に穴が開くけん。お前も芸人みたいなもんだろ、
だけん、わしに何かあってもお前は帰ってこんでええ」。
- 三木
- うわぁ。
- 先生
-
これってね、おふくろの早めの遺言だと思ってるから。
99で亡くなった時に、その言葉をすぐ思い出して。
休講にして葬式に帰るよりも、今の生徒たちに教える。
それがお袋への恩に報いることだと思って帰らなかった。
おふくろは分かってくれる、と思ってる。
そうやって、32年間、1回も休んだこともないし
変更したこともない。何があっても。
だから、体調壊して休むっていうけど、体調壊すなよって。
私なんか常に体調不良だよ。
それでも授業はちゃんと出来るじゃないかって(笑)。
- 三木
-
本当そうですよね。
先生がいつも、熱を体温計で測っても意味ないって
言ってたじゃないですか。
- 先生
- 意味ない、体温計持ってない。
- 三木
-
それ、本当その通りだと思ってて。
結婚した夫が、体温測りたがりなんですよ。
そのたびにイラっとしちゃって(笑)。
加藤先生は意味ないって言ってた!
そんな測ってもさがんないよ!とかって。
- 先生
- そうそうそう。
- 三木
- 夫婦喧嘩の火種になってます(笑)。
- 先生
- ふっふっふ そりゃ悪いね。
(続きます)