もくじ
第1回偏見が氷のように溶けた。 2019-03-19-Tue
第2回優しさは力の中にある。 2019-03-19-Tue
第3回絶対に休まないということ。 2019-03-19-Tue
第4回先生が夢を叶えない理由。 2019-03-19-Tue
第5回してきたことを、迷ってはいけない。 2019-03-19-Tue

NHKで10年以上、報道番組のディレクターをしていました。今はサイボウズという会社で働きながらいくつかの複業をしています。
パラレルキャリアでワーキングマザー。
ほんとうのことを、ありのままの自分で伝えていける人になりたいと日々試行錯誤中です。

Be free!</br>私を自由にしてくれた人。

Be free!
私を自由にしてくれた人。

担当・三木 佳世子

第2回 優しさは力の中にある。

三木
あの‥‥ここに通っていた頃の私って覚えていますか?
先生
よく覚えているよ。
山口佳世子だろ、三木佳世子になる前は。
で、お前が三木に変わったときの事情は知らなかったけど、
「苗字変わったんだね、新しい気持ちになって頑張れよ」
って言ったのを覚えているよ。
あのー 国籍のことはずっと後になって聞いたからね。
三木
そうでしたね。高校生の時に両親が離婚して。
そしてその頃はまだ、自分の出自については
誰にも言っていなかったので‥‥。
先生
えーと、失礼だけど、佳世子は今何歳?
三木
35歳です。
そして、私の母が加藤先生より4つ上なんですよ。
先生とほぼ同じ時代で差別をされてきて、
だから私には在日だってことは絶対言うなって。
 
在日だと普通に会社には就職できないから、
将来は弁護士とか医者とかの資格を取りなさいって。
「もし資格が取れなかったら、
日本社会では、まともに生きていけない」
っていう風にずっと言われてて。
だから、自分の未来といっても
自由に描けなかったし、
すごく窮屈な思いの中で塾に通ってたんですよね。
先生
朝鮮高校出身の子で、弁護士やってる子がいるよ。
三木
そうなんですね。
先生
しかも朴(パク)っていう本名で通しているから。
名刺を渡すと、クライアントの中には
「日本人じゃないのかよ」
「日本人の弁護士に変えてくれよ」とかさ。
そのくせ、うまく事案を解決したらもう、
手のひらを返したように、
「パク先生で本当に良かったです」みたいな。
未だにこういうのあるわけだよ。

三木
私、NHKを受けたとき、正直に、
在日韓国人だってことを言って入ったんです。
だから、マイノリティーの人たちの声を拾いたいって言って。
でも、実際に入ってから先輩とかに、
「仕事をする上で国籍を出すと、
外国籍の職員がいることに
苦情が来ることもあるから言わないほうがいい」
って言われてしまって。
  
それで、ディレクターになってからの10何年間は、
言わずに生きてきたんですけど。
隠しているのももう嫌だなというのがあって。
先生
そうか。
三木
自分の出自について外に言うようになったのも、
NHKを目指すようになったのも、
実は、先生の言葉がきっかけだったんです。
何か世の中に言いたいことがあったら、
言える立場にならないといけないって、仰ってましたよね。
先生
そう、そのためには、力を付けなきゃいけないと。
「優しさは力の中にある」
うん、私の名言だよ。
 
力なき優しさは単なる同情に過ぎない。
しかもそれは時に、人を傷つけることもある。
だから人のことを本当に思いやる気持ち、
優しさがあったら、自分に何らかの力を付けないと。
そのために勉強するんだよって。
三木
それが強く残っていて、だから頑張ろうと思って。
自分が頑張って力をつけて、伝えられる人になろうと。
 
力をつけて伝えられる人になったはずなのに、
自分のことを言えなくなった。
それは、私の中で矛盾を抱えて生きるようで、
辛いことだったんですよね。
先生
人間は、人のために何か一生懸命努力する時に、
一番力を発揮できる。
これを『走れメロス理論』って名付けたんだけど(笑)。
親友のためだったら全力に走って
いろんな敵と戦っても、どんな困難があっても、
親友の命を救いにいくという。
 
自分のためだと思うと、つい自分に甘えてしまうから。
自分のためよりも人のため。
人のために力になろうと思うと、
自分に何らかの力がなきゃいけないんで。
それが本当の優しさだよって、言ったよね。

三木
ですよね。
「ウイニング受験英語」だから英語を教えてるんだけど、
先生が本当に子供達に伝えていきたいと思ってるのって、
こう‥‥どう生きるか?みたいなことですよね。
先生
塾の名前に受験英語って付けたのは、半分アンチテーゼなの。
わざと受験英語って付けたの。それは私の一つの隠れ蓑で。
受験英語を教えて、それ身につけさせるためには、
心から耕していかなきゃいけないじゃない。
でもあえて、受験英語と名乗っている。
三木
そうだったんだ!
先生
英語は英語だけやっていても出来るようにならないし。
吸収力を上げてやらないと。
吸収力がないと、何を教えても吸収できないから。
三木
私もなんか、英語もそうだけど、
先生に色々と教えてもらった別のことが、今も残ってます。
先生
うん、そうだね。

(続きます)

第3回 絶対に休まないということ。