もくじ
第1回どこにいるのがいいか、わからない 2019-03-19-Tue
第2回おばあちゃん越しの東京 2019-03-19-Tue
第3回おばあちゃんと東京タワー 2019-03-19-Tue
第4回ただいま、広島。 2019-03-19-Tue
第5回憧れの人 2019-03-19-Tue

デザインしたり、絵を描いたりしています。
いろんな伝え方をもっと知りたいと思う日々です。
行動しなけりゃわからない、と言い聞かせてます。

7年越しの帰郷。

7年越しの帰郷。

担当・コレット

第3回 おばあちゃんと東京タワー

おばあちゃんの東京滞在2日目、
はとバスに乗って
浅草、お台場、明治神宮、東京タワーなど
色々な観光地を二人で巡りました。
その日は快晴に恵まれて気候も良く、
行く先々で楽しそうな顔をしてくれてホッとしました。

そして当時上京して8年目、
私はこの日初めて東京タワーに登りました。
まだスカイツリーは完成していませんでした。

展望台から見る東京はやっぱりとんでもなく都会で、
よく見る路線図を東京の形と認識していたけど
実際の立体的な街を目にすると
この街で暮らしていることが
自分ごとじゃないような、
よそ行きな感じが少しありました。
おばあちゃんは流石に歩き回ってだいぶ疲れていたのか
あまり喋らずぼんやりと窓の外を眺めていました。

このシンボリックな場所におばあちゃんと来れた。
私はそれがとても嬉しかったです。
なんだか出来過ぎな1日だと思いました。
こんな日があっていいのかと思うくらい、
完璧な1日でした。

そしてはとバスがツアーが終わって、
おばあちゃんと東京駅で別れ、
家に帰ったその日の日記に
前後は割愛しますがこう書いていました。

実は、私はこの時無職でした。
最初に就職した会社を辞めた後に入った会社で、
当時どうしても納得できないと感じることがあり、
入社して2ヶ月も経たないうちに辞めてしまったのです。
そんな途方に暮れている時の、
おばあちゃんでした。

おばあちゃんが
私が東京にいたから東京に来れた、
と言ってくれたことで
自分が東京にいることを肯定できて
達成感を感じたのか、
あるいは少しおばあちゃん孝行ができた気になって
自分に酔っていたのか、
東京を離れる前に良い思い出が作れて
もういいやと満足したのか、
今となってははっきり覚えていません。

実際に東京を離れたのはその1年後です。
よく人に言っていた「年齢的な区切り」は
あくまで理由の一部でしかなく、
様々な雑事や考え事を一度全てリセットしたくなり、
「帰る場所」があることに甘えて広島に逃げ帰った、
が本当のところです。
それでもこの2日間が大きく残っていたのは確かです。
私はこの2日間がなければ東京を離れる決心の
最後のひと押しがきっと出来なかった。
もうちょっとしたらなんとかなる、
まだここにいたい。
その未練を一度断ち切ってくれたのは
おばあちゃんとの時間でした。

第4回 ただいま、広島。