突然ですが、私のおばあちゃんは
氷川きよしさんの大ファンです。
【氷川きよし】
日本の演歌歌手。
2000年のデビュー以来数多くの楽曲を発表し、
幅広い層のファンに支持されている。
歌手活動以外にタレント活動や
歌謡劇への出演などにも精を入れて活躍中。
いつ頃からか忘れましたが、
孫がうっかり嫉妬してしまうほどに熱く、
「きよしくん」を応援し続けています。
そんなおばあちゃんが
「きよしくんの舞台を観に東京に行きたい」
と遠慮がちに私の母に相談し、
なんとかチケットを手配して
2011年の6月、一人で東京へやってきました。
この時おばあちゃんは82歳です。
家族一同、とても心配しました。
広島の新幹線乗り場までは母が連れていき、
東京に着いてからは私が同行し、
おばあちゃんと私の1泊2日が始まりました。
初日に舞台を観て
次の日は、はとバスで東京観光をするという
なかなかのハードスケジュールです。
はっきり言ってとても不安でした。
出来れば東京駅近くにホテルを取って
なるべくおばあちゃんが電車に乗る時間を
なくしたいと思っていたのに、
おばあちゃんは私の部屋に泊まりたいと
言ってくれたため、
当時私が住んでいた駅まで
電車に乗ることを余儀なくされたのです。
ラッシュの時間帯ではありませんでしたが、
空いていることはないだろうと推測しました。
もし席が空いていなかったら優先席付近に行って
おばあちゃんだけでも座れるように
頼むしかないと覚悟を決めていました。
ですがいざその時がきて
おばあちゃんと私が電車に乗ると、
すぐに何人かが腰を上げてくれて
優先席に行くまでもなく席を譲ってもらえました。
なぜかほぼ毎回、私まで。
席に座らせていただいてからは
「本当に東京の人は皆優しいねえ。
ほんまに来れて良かったよ。」
「そうじゃね、ありがたいね」
なんてやり取りを方言で繰り広げるものだから
「地方から出てきたおばあちゃんと孫」に
周囲の人たちがほっこりしている様子が
ひしひしと伝わってきました。
それがとても恥ずかしく、照れ臭く、
くすぐったいような気持ちになりました。
初日、2日目、JR、地下鉄を問わず
電車に乗れば必ず席を譲っていただきました。
東京は地方出身者が多いから
私のおばあちゃんに
自分の故郷や家族を重ねているんだろうか?
なんて思ったりもしました。
それも理由のひとつかもしれないけど、
そうではなくただ高齢者に席を譲った、
というだけのことを私が膨らませて
受け取ったのかもしれません。
それでもこんな経験は東京に来て初めてだったので、
おばあちゃんがいなければ
ただすれ違うだけだったはずの人たちに
人間らしい温度を感じられ、
おばあちゃんを通して見た
東京という街がとても優しかったことで
新しい東京の見方ができるようになりました。
