フリーで書籍の編集とライターをしています。陽気な母との暮らしを満喫中。シーズンごとに急に体を動かしたくなって、ランニングをしたりトレッキングに行ったりします。趣味は合唱。昔とった杵柄です。

85歳、看板を出さない洋裁師さん

85歳、看板を出さない洋裁師さん

担当・さとうえみこ

我が家には、私が生まれる前から足踏みミシンがありました。
家庭用ミシンではありません。職業用です。
ウエストシェイプされたような美しいフォルムに、
適度な重量感を備えたミシンは、
すでに3台目に代替わりしましたが、
我が家にやってきた当初から
母のよき相棒でありつづけています。

私が覚えているかぎり、ずっと洋裁を続けている母は、
職業的には、鋳物工場の事務の正社員を、
定年を過ぎた74歳まで27年間勤め上げた会社員です。
にもかかわらず、母の口からときおり、
「私は洋裁のプロだから」という言葉が漏れるのです。

洋裁のプロ?

母に、これまで聞く機会のなかった
洋裁にまつわる話を聞きました。
そこには知っているようで知らない
戦後日本の洋装化の波と連動する人生がありました。
日本の各地にたくさんいるであろう、
名もない一人の洋裁師のお話です。
よろしかったらおつきあいください。

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