- 燃え殻
-
糸井さん、今日なんの話でしたっけ?
やっぱり打ち合わせしたほうがよかったかな(笑)。
- 糸井
-
おおもとは手帳の話だから。ムードとしては、
「あー、なんか手帳の話聞いたなぁ」ってなれば。
そしたら、質問を受けるというのをやっちゃおうか。
- 燃え殻
- いいですよ。これ、手あげるの大変ですよね。
- 糸井
-
じゃ、もうベストセラー作家にふるしかないね。
『嫌われる勇気』の古賀さんです。
必ずね、この役ひき受けてくれるの。
- 燃え殻
-
ぼく、古賀さんのこと、いちばん尊敬してます。
神です。
- 古賀
-
燃え殻さんの21冊の手帳というのは、
捨てようと思った機会はなかったですか?
ぼくは書きためた手帳とかノートとか、
引っ越しのたびに捨てちゃうんですよ。リセットしたくて。

- 燃え殻
-
ぼく、物を捨てることとか、人と縁が切れることが、
すごい下手なんです。自分ですらガラクタだと思うんです。
けど、こういうのを手元に置いて読み返していないと、
安心しないというか。そういうのをリセットすると、
いままでの自分と離れちゃった気がして。
荷物がなくなった気がして、一歩前に出るのが怖くなる。
- 糸井
-
タイトルも捨てられないって書いてありますよね、
『ボクたちはみんな大人になれなかった』って。
子どもを捨てないと大人になれないじゃないですか。
ぼくは、「捨てちゃったけど、とくに大丈夫だったな」って
涙とともに味わうのが好きですね。
- 燃え殻
- じゃ、けっこう捨てるんですね。
- 糸井
-
何の差し支えもないです。あるとしたら、寂しさです。
で、その寂しさが好きなんだと思うんだよね。
その、キュンとしてるときの自分の、実在感?
- 燃え殻
- 「生きてるー」みたいな。
- 糸井
-
俺、きのう永田くんに、ビートルズについて取材されて。
その最中に、若いときの話してたら、
どういう風に自分がモテなくてフラれたかとか、
軽い気持ちで話しはじめたら悲しくなっちゃって。
その、受け入れられなかった自分が不憫になっちゃって。
- 燃え殻
- ちょっと涙が?
- 糸井
-
にじんじゃって。
だから、それは捨てても残ってるんです、やっぱり。
子どもは、捨てちゃったら俺じゃなくなっちゃうなって、
そういう気持ちになるから捨てたくないんです。
- 燃え殻
- ああ、ぼく、それだ。
- 糸井
- だから、大人になれなかったって言ってるじゃないですか。
- 燃え殻
- はい。発売までして(笑)。
- 糸井
-
いや、俺ね、若いときに、ものすごく姿勢が悪かったの。
で、姿勢が悪いってことを女の子に言われて、
「だって、それが俺じゃん」って自慢そうに言ったら、
「へぇ、それが自分なんだ」って(笑)。
- 燃え殻
- 飲み屋の会話みたいな(笑)。
- 糸井
-
そんなことの積み重ねで、
獲得していった自分、捨てていった自分、両方ですね。
ほかにございませんか。はい、真ん中のあなた。
- 男性
-
燃え殻さんは、印象的なツイートをされてると思っていて。
日々書かれていますけど、こういう時は書こうとかって、
なにかあるんですか?
- 燃え殻
-
なんだろうなぁ、ぼく、下書きとかもしたことないし。
なにもないときに書いてますね。
むかし学級新聞を書いたときに、なんで書いてるのって
自分でほんとに問いたくなったんです。
読んでる人いなかったから(笑)。
- 糸井
- (笑)。
- 燃え殻
-
担任に言われたんじゃなくて、勝手に発行してたんで。
だから、不良にキレて破られたんですけど、
それってなんの意味もないのに書いてるんですよね。
でも、どこかで、
気持ち悪いから承認されたいとか思ってるんでしょうね。

- 糸井
-
気持ち悪いって自分でいま言ってますけど、
言われるうちにそうかもって思うようになったんですか?
- 燃え殻
- 言われましたねぇ。
- 糸井
- 女に?
- 燃え殻
-
なんで女なんですか(笑)。なんかね‥‥
Twitterでリツイートとか「ファボ」って、
若い子とか、それをしちゃう年頃なんです。
意味なんかない。でも、それを受け取るほうは
すごい人気があるんじゃないかって思いはじめちゃって。
やばいというか、気持ち悪いなと。
Twitterでフォロワー多い人が、イベントやりますって
いうときの危うさって(笑)、ありませんか?
- 糸井
-
自分を支持してくれる人を集めるのを繰り返すと、
仕事になるんですね。で、そこで止まるんですよね。
- 燃え殻
-
それがすごい嫌なんです。
同じ人から何度もお金や気持ちを取るみたいなこと。
- 糸井
- 「気持ちを取る」ね、うんうん。
- 燃え殻
-
「ツイート集みたいなのを出しませんか」って
言われたら、絶対嫌だなって思ったのは、
そんなのを買ってくれる人が何千いたらいいなぐらいで、
もっといないかもしれないその人たちから
金をもう一回取るみたいな。なんか、すごい小さい‥‥。
- 糸井
-
狭い感じね。
それは、そう思ってる人は絶対ならないですよ。
気づいちゃってる人はしない、大丈夫です。
で、燃え殻さんは武者修行は好きですよね。
怖い人に会うとかって。
- 燃え殻
-
そうそう、それは大好きなんですけども。
ぼく、糸井さんに会うの超怖かったんですよ。
超怖いじゃないですか、糸井さんに会うって怖いですよ。
いま2回言いましたけど(笑)。
- 糸井
-
言われてる本人としては、
「ああ、そうですか」って感じだけど。
- 燃え殻
-
この夏、怖い人にしか会っていないんですよ。
ずっと肝試しみたいな。
大槻ケンヂさんとか会田誠さんとか大根さんとか、
毎週会ってるんですよ。
- 糸井
- ちょっと無頼な匂いがしますね、ぼく以外は。
- 燃え殻
-
いや、糸井さんも無頼ですよ。
なんか、プロレスの新人が強い選手と組み手するみたいな。
だから、勉強になるんです。みんな、いい人でしたよ。
けど、いろんな組み手をすると、わかるんですよ。
いかに自分がなにでもないかとか、置かれている立場とか、
X軸とYワイ軸でわかるんです。
そうすると、すごい自分を持ち上げる人がいたとしても、
もうわかるっていうか。
- 糸井
-
ぼくが思う、「あなた凄いですよ」っていうのがあって。
それは、あのとんでもない角度から
いろいろ質問受けてる人生相談。
あの燃え殻さんは、
すごく同じ場所に立っていて、一生懸命考えていて、
エッセイじゃないけどすごい発見もあって、全部面白い。
- 燃え殻
- えー、ありがたい。
- 糸井
-
あれがもし職業名であるならば、
人生相談士って言うのに‥‥。
- 燃え殻
- また怪しい(笑)。
- 糸井
- 本当にあれ一生懸命やってますよね。

- 燃え殻
-
もう一生懸命やるしかないし‥‥。
テレビで見てきた糸井さんとか会田さんとか、
全然かなわないと思ってたけど、
会ったら、「同じ人間じゃん」って思ったんです。
で、「何十パーセントかは、多分みんな一緒やん」って。
だから、人生相談を受けたとき、
「自分の人生のどこかで、まったく同じことはないけど、
俺もそういう気持ちになったことある」ってことばかり。
「ぼくがあなたの立場だったらこう思う。
違ったらごめんなさい」ぐらいまで入れる感じですよね。
- 糸井
-
そうですね。なによりもいいのは、
燃え殻さんのいい意味での気の弱さがあるおかげで、
相談してきた人に嫌な思いしてほしくないっていうこと。
- 燃え殻
- ああ、それ思います。
- 糸井
-
いちばん効率的だったり真実に近いとこで回答するなら、
その人を傷つけてでも、
これ言ったほうがいいんじゃないかってことはあるわけで。
だけど、燃え殻さんは、
その人が嫌な思いをしませんようにっていうの前提に、
「こういうおじさんがいたんだけど」とか(笑)。
- 燃え殻
-
いや、もうそうですよ。
悩み相談、つたなくてもそのまま載せてくださいって
お願いしてあって。なんか、レスキューじゃないですか。
悩みがあって、さらにそれをメールするっていう
熱量の落ちなさが半端ないというか。
それぐらい真剣ということは、
それぐらいもう傷ついたり悩んだりしてるので、
もういいじゃないかって、ぼくは思ってて。
それを投げ出さなかった時点で、すごいなぁみたいな。
- 糸井
-
だから、あれは人生相談に答えるというより、
その人と隣り合わせで慰めてるんですよね。
- 燃え殻
-
傷がかさぶたになって、取れてきれいになったって、
素晴らしいですけど、そんなことばっかじゃないから。
止血しながらでも生きなきゃいけないじゃないですか。
悩みをいったん保留にしようぜっていう人生相談が、
なんでなかったんだろうって。
- 糸井
- いや、あれがやってますよね。
- 燃え殻
-
ぼく、いったん保留にして生きてこれたというのが
たくさんあって。手帳もそうかもしれないですけど、
見返すと解決してないことばっかなんですよ。
いまの自分のほうが成長してるっていう
優越感のもとに見るわけじゃなくて、
「うわ、むかしの俺のほうがちゃんと考えてる」とか。
- 糸井
- あるあるある。
- 燃え殻
-
でも、それを見られるのがすごくよくて。
いったん置いといて、
将来の自分が解決してくれるって思いながら
生きていくのかなと。そのほうがリアルな気がして。
- 糸井
-
ぐしゃぐしゃしたことでも、
語ってるうちに泣いちゃって、大声出したり。
で、テーマ忘れて泣き止むか、どうかなりますよね(笑)。
- 燃え殻
- わかります、わかります。

- 糸井
-
いやー、
いっぱいしゃべる無口じゃない燃え殻さんが
味わえたと思います。
どうも、ありがとうございました。