- 糸井
-
あの色んな角度からいろいろ質問受けてる人生相談。
あれで答えてる燃え殻さんは、
すっごく同じ場所に立ってて、一生懸命考えてて。
エッセイでも何でもないんだけど、
ものすごい発見もあって、全部面白い。
- 燃え殻
- えー、ありがたい。
- 糸井
-
谷川俊太郎さんの『谷川俊太郎質問箱』っていう
人生相談の本をうちで出してるんだけど‥‥
- 燃え殻
- はい、ぼく、持ってます。
- 糸井
- いいでしょう?
- 燃え殻
- はい。
- 糸井
- あれぐらい面白い。
- 燃え殻
-
え?
ありがとうございます。
- 糸井
- 本当にあれ一生懸命やってますよね。
- 燃え殻
- もう一生懸命やるしかないし‥‥
- 糸井
- そうですよね。
- 燃え殻
-
ぼくが雑誌とか本とかテレビで見てた
糸井さんとか堀江さんとか会田さんとかは、
失礼なんですけど、
会ったら「あ、人間じゃん」って思ったんですよ。
何十パーセントかは多分、みんな一緒やんって思って。
人生相談も、ぼくの人生の中のどこかで、
まったく同じことはないけど、
そういう気持ちになったことあるよ。
っていうことばかりなんですよ。
性別が違かったとしても、年代が違かったとしても、
生きてた場所だったり職業が違かったとしても、
ああ、その気持ちに近い気持ちに、
小学校のときにその気持ちになったみたいな。
で、その話をまずする。
それから、
この話なんだけど、もしかしてこうなんじゃないかな。
もし、ぼくがあなたの立場だったらこう思う。
違ったらごめんなさい、ぐらいまで入れる。
- 糸井
-
そうですね。
何よりもいいのは、
その燃え殻さんのいい意味での気の弱さのおかげで、
その相談してきた人に嫌な思いしてほしくない
っていう気持ちが前提にあることなんですよ。
- 燃え殻
- ああ、それ思います。
- 糸井
-
本当に一番効率的だったり、
真実に近いところで回答するんだったら、
その人を1回傷つけてでも、
「こうしたほうがいいのでは」はあるわけで。
ぼくもそれはよくやるんです。
今は悲しいかもしれないけど
絶対このほうがいいからっていうのは、
ぼくは言うことはあるんです。
だけど、燃え殻さんは、
その人が嫌な思いをしませんようにっていうのを
前提にしながら回答してる。
- 燃え殻
-
いや、もうそうです。
悩みがあって、それをネットにメールするって、
熱量の落ちなさが半端ないというか。
それぐらい傷ついたり、それぐらい悩んだ時点で、
もういいじゃないかってぼくは半分思ってて。
それを投げ出さなかったという時点ですごい。
- 糸井
-
だから、あれは人生相談に答えてるというよりは、
その人と隣り合わせで慰めてるんですよね。
- 燃え殻
- ああ、そうです。そう思ってました、ぼくは。
- 糸井
-
演歌を歌ってこの悲しみをごまかしてはいけないって
言う主張もあるかもしれないけど、
でも、この境遇を演歌を歌って慰めて、
明日もしかして笑って過ごせるかもしれない。
と思うことは、それこそブルースだとも言えるし。
それを取っちゃって、
ほかにどんな道があるか責任持ってくれるのか。
- 燃え殻
-
そうなんですよ。
傷がかさぶたになって、それが取れて、
きれいになりましたってすごく素晴らしいですけど、
そんなことばっかじゃないから。
- 糸井
- そうそうそう。
- 燃え殻
-
そのかさぶたでも、血を止血しながらでも、
生きていかなきゃいけないじゃないですか。
そういう「一旦保留にしようぜ」って言う人生相談
ってなんでなかったんだろうって。
- 糸井
- いや、あれがやってますよね。

- 燃え殻
-
ぼく、一旦保留にして生きてこれたというのが
たくさんあって。
とっておいてる過去の手帳を見ると
解決してないことばっかなんですよ。
例えばそれが全部解消して線が引けて、
これだけ自分はすごい成長してるっていう
優越感のもとに手帳なんか見てるわけじゃなくて。
うわー、俺、昔のほうがちゃんと考えてるとか。
- 糸井
- あるあるある。
- 燃え殻
-
でも、それを見られるのもすごくよくて。
保留にしていったん置いておくと、
将来の自分が解決してくれたり、
将来の自分ももう一回置いたりしながら、
そうやって生きていくとぼくは思うんですよね。
全部がきれいに片付いてるほうがいいけど、
そういうほうが、リアルな気がして。
- 糸井
-
子どもとかでも、引っ掻いたとかって理由で、
ウワーッて泣いて、止まると終わるじゃないですか。
燃え殻さんは、
あの泣いてるだけって状態に手を差し伸べるのが、
「一生の仕事にしなさい、それを」ってくらいうまい。
本当、だからあなた、モテるんですよ。
- 燃え殻
- モテない、モテない。
- 糸井
-
女の人はものすごく頷く。
それで、田中泰延とか怒るんです。
あの人は全部解説できますから。
慰めてる最中も、
「それはギリシャ時代からずっと言われてるんだ」。
- 燃え殻
- (笑)。しっかりしてるんです。
- 糸井
- しっかりした知識を持てと。
- 燃え殻
-
そうそう。
でも、答え要らないときって多いと思うんですよ、
ぼく、人生で。
- 糸井
- ご飯食べるとかさ。
- 燃え殻
-
そう。お腹いっぱいになると、
けっこう解決したりしません?
- 糸井
- あと、歩く。
- 燃え殻
- ああ、歩くもあるかもしれない。
- 糸井
- 俺は自分は歩くで大体ごまかしてるね。
- 燃え殻
- 歩くとアイディア出ますしね。
- 糸井
-
ぼくはもうね、ここで万歩計売りたいですね。
‥‥ああ、全然ウケないですね。
古かったんですかね、万歩計は。
- 燃え殻
-
(笑)古いですね、万歩計は。
あと、書くのもそうなんです。
いいことも悪いことも、書いちゃう。
それが何か繋がるとかいやらしいことは考えないで。
あとで見ると、「何書いてるんだ」って思いますよ。
でもあとから全然関係ない場面で使えたりとか。
そういう意味でも、
今すぐ必要だからやる努力、じゃないところから、
何か人と対したときに言葉が出てきたりする
と思うんですね。
- 糸井
-
それね、ぼくらが読者会やってる
『うらおもて人生緑』という色川武大さんの本の中に、
「言い訳に使えるなと思った種は
どんどん仕込んでいきなさい」って。
さすがいい博打打ちでしょう?
- 燃え殻
- はいはい。
- 糸井
-
それでしのげるだけで、
一番大事なヒヨヒヨとした粘膜の中側のところに
傷が行かないんだよ。
そういうのは技術なんだけど、
子どもに教えてあげたい感じはします。
- 燃え殻
- わかりますね。
- 糸井
-
いや、いっぱいしゃべってる、
無口じゃない燃え殻さんが味わえたと思います。
どうもありがとうございました。
- 燃え殻
- こちらこそありがとうございました。大丈夫でした?
- 糸井
- ものすごく大丈夫だったんじゃないですか?
- 燃え殻
- 大丈夫かどうかってことだけ気にしながら生きてるんです。
(本コンテンツはこちらでおしまいです。
読んでくださり、ありがとうございました。)
読んでくださり、ありがとうございました。)
