もくじ
第1回コピーライターに憧れていた。 2017-12-05-Tue
第2回二十九歳、未経験。 2017-12-05-Tue
第3回好きな広告について。 2017-12-05-Tue
第4回コピーライターになってよかった。 2017-12-05-Tue

30歳を目前に控えたところで、コピーライターに転身しました。
泳げないのに、
「水落」です。
よろしくお願いいたします。

コピーライターになりたかった。

担当・水落祥

第4回 コピーライターになってよかった。

コピーライター養成講座に通うにあたって、
ぼくは「誰よりも書く」ことを意識していた。

講座ではコピーに関する課題が出され、
それを講師の方々が評価し、上位10名の講座生に
「金の鉛筆」を与えるというシステムがあった。

未経験のいい歳した素人がコピーライターになるには、
この「金の鉛筆」を1本でも多く獲得し、
転職活動でアピールするしかない。

そう考えていたぼくは、講座に通った半年間、
とにかくコピーライターになることだけを考えて、
必死に勉強し、課題に取り組んだ。

その結果、金の鉛筆は15本を超え、
最終的には、講座生の中で一番多くの鉛筆をもらっていた。

とはいえ、ほめてもらえたことはごくわずかで、
提出した課題シートのほとんどに
赤ペンで厳しい言葉が並んでいた。
何も書かれずに、白紙で返されたこともあった。

それでも、ずっと、最後まで楽しかった。

社会人になってからの8年間、
ずっと溜まっていたものを吐き出す場所があることが、
とにかくうれしかった。

そうして講座の受講と
転職活動を必死で並行した結果、
講座を修了する前に内定をいただき、
30歳を目前にして念願のコピーライターになった。

実際になってみると、
自由に書くだけでよかった講座時代とは違い、
当然ながら制約も期限もある。
進行や校正、取材、撮影など、
ライティング以外の業務にも追われる日々。

体力的にも精神的にもきついこともあるけど、
それでもやっぱり、楽しい。

単純に文章を書くだけではなく、
自分ではない誰かの想いや視点を通して、
こんなにも世の中と関われる仕事は、なかなかない。

友人の何気ない一言、仕事における失敗、
電話中の落書き、となりのテーブルから聞こえる会話など。
自分の人生における経験の全てが
役に立つのではないかと思わせてくれる。

その時々に生まれた感情が、
いつかどこかで活かされそうだと思えるから、
どんな局面でも何かと前向きになれる。
もちろん、へこむときは、とことんへこむけど。

改めて、コピーライターになって本当によかったと思う。

ぼくのような、まだまだ未熟なやつでも、
いつしか現役を退く年齢になったり、
もしくは人生が終わりに近づいてきたときには、
人生を振り返ることになるだろう。
そんなとき、どんなストーリーを描くことができたら、
自分で満足することができるのだろうか。

仕事上、たくさんコンテも書かせてもらうけど、
自分自身の人生のコンテがつまらないなんて
本当に笑えない。
それは、誰かにとって魅力的である必要はない。
ただ、自分だけが「おもしろかった」と言えたら、
かなり素敵なことだと思う。

だから、まだまだもがいていきたいし、
挑戦していきたいし、楽しんでいきたい。

良くも悪くも、今のぼくには、
評判や名声があるわけでも、資産があるわけでもない。
失うものが、一切ない。

「いい歳こいて、今さらコピーライターに?」って
言われながらもがんばれた経験が、今も支えてくれている。

恥をかく覚悟を決めた人間は強いんだということを、
あの講座で過ごした日々が気づかせてくれた。

(終わります。ありがとうございました!)