「アートで地域を盛り上げよう」
という取り組みは全国各地で行われています。
それはもう、あまり珍しくないことかもしれません。
それでも私が「まち中つながる展示会」について
取り上げたいなと思ったのは、
地元を愛する人たちが集まって
じわじわと規模をひろげて続いている
その雰囲気に惹かれたから。
さらに、もしかすると、私自身の思い出が
そこに重なっているからかもしれません。
私は、父方の祖父に会ったことがありません。
私が生まれる前に亡くなってしまった祖父は、
小さな雑貨屋を経営していました。
それをそのまま引き継いだ私の祖母は、
そろそろ90歳になろうとしていますが、
いまだに現役です。
そんなにお客さんが多くないせいもあるかもしれません。
地域とのつながりがあるせいか、
年齢を忘れるくらいにかくしゃくと、
たいていの身の回りのことは自分でこなしています。
おばあちゃん子とまではいかないまでも、
私も小さいころは、
祖母によく面倒を見てもらって可愛がってもらいました。
店先で近所の「お客さん」と話をする
祖母の姿は当たり前の風景でした。
そこでの会話は
たわいもないことばかりだったでしょう。
どんな話がそこでされていたのかも
さっぱり覚えていません。
ただその空間の中に、
私が当たり前にいたことは
今でも私の中に染みついているようです。
世の中は、すっかり便利になりました。
家でオンライン講座を受けることもできます。
クリックひとつで、欲しいものが届きます。
外に行かなくてもいろんなことがこなせます。
何かを買うときだって、商店街が無くても、
24時間空いているコンビニも、スーパーもあります。
けれども、確かではなくても
やんわりとつながっているような安心感、ぬくもりは
そこにはあまりないような気がします。
やしまさんのお店に遊びにいく私は、
きっと、あの頃の
守られていた自分や、思い出をなぞり、
自分自身の充電をしようとしているのかもしれません。
堅く結ばれていなくても、
地域のなかでゆるく、ゆるくつながっていくこと。
そこに肩の力が抜けて、
なんだか笑顔になってしまう瞬間があること。
私だけじゃなくて、
同じ思いでそこに向かう人もいるんじゃないかな。
そしてそれが、
「まち中つながる展示会」が
とんとん拍子で進み、じわじわと広がり、
参加したい!と思う人が増えていく理由なのかな、と思います。
そういえば、
やしまさんの開いたイベントで
まだ社会人になりたてほやほやの、
同郷の女の子と出会ったことがあります。
ちょっと前のことなので、
記憶もあいまいなのですが、
確か、彼女はこんなことを言っていたはず。
「やしまさんは、
東京のお母さんみたいなんですよね」
まるで家族みたいな距離感で、
いろんなことを、
おおらかな気持ちで受け入れてくれる。

「形になるわけ、続くわけ」
なんだか、つかめたような気がします。
(おわります。ありがとうございました!)