- ―
- ものをつくるのは、子どものときから好きだったんですか。
- カオリ
-
絵を描くのは小さい頃から好きでした。
友だちによく「描いてー」ってリクエストされたりして、
いろんなものを描いてました。
子どもの頃は漫画家になりたいと思ってましたね。
- ―
- 大学はデザイン学科でしたよね。
- カオリ
-
そうです。
当時はデザイナーになりたい!って思ってたんですけど……。
大学1年生の時点でもう
「私デザイン向いてないな」って思っちゃって。
- ―
- どういうところで「向いてない」って思ったんですか?
- カオリ
- 単純に、周りに上手な方がいっぱいいたので……。
- ―
- それでフィギュアをつくるようになったんですか?
- カオリ
-
いえ、大学生活ではずっと平面で絵を描いてました。
だけど、4年生になって、卒業制作を考えるってときに
ゼミの先生に作品ファイルを見せたんですよ。
そしたら「誰でも描ける絵だ」って言われちゃって。
- ―
- それはキツイですね。
- カオリ
-
キツイですよー。
もう頭をがーんと殴られたみたいな気がして。
「え、じゃあ、今までの私の3年間なんだったの⁈」
って思いました(笑)。
そんなこと言われたことなかったから。
- ―
- 人からそういう風に言われたこと、なかったんですか。
- カオリ
-
そうですね。
それまでは、芸術祭で作品を展示するくらいで、
あんまり積極的に
人に作品を見てもらったり、してこなかったから。
- ―
- そこからどうしたんですか、卒業制作。
- カオリ
-
その先生に見せた作品ファイルは、
イラストが中心だったんですけど、
立体の作品もいくつかあって。
先生に「こっちやってみたら?」
って言われたんです。
それで、卒業生制作から
粘土でフィギュアをつくって、写真を撮って、
っていうのを始めました。
- ―
- 卒業後はどうされたんですか。
- カオリ
-
私の師匠は、
フィギュア作家のデハラユキノリさんなんですけど、
卒業する年に、ちょうどデハラさんの展示があったので、
そこに自分の作品を持って行って、
「こういうのつくってるんです」
って見てもらったんです。
そしたら、「アシスタントに来て」
って言ってもらって。
- ―
- そのままアシスタントになったんですね。
- カオリ
-
はい。
アシスタントをやりながら、
自分でも作品をつくって。
ちょっとずつ声をかけていただいて
お仕事をもらったり、
作品展をやったりするようになりました。
- ―
- 独立したのはいつですか?
- カオリ
-
2010年くらいですかね。
今でも師匠のところにヘルプで呼ばれたりはするんですけど。
- ―
-
ご自身の作品とは別に、
雑誌の表紙とか挿画とか、
オーダーされてつくることも多いんですよね。
- カオリ
- はい。
- ―
-
オーダーされてつくるときと、
自分の作品としてつくるときとでは、
違うところはありますか。
- カオリ
-
オーダーされてつくるときは、
私が自分ではつくろうとしないようなテーマをいただくので、
すごく勉強になるし、楽しんでつくってますね。
苦しいときもありますけど。
- ―
- 苦しいのはどんなときですか?
- カオリ
-
フィギュアをつくる前に、
まずは紙にラフを描いて、
先方に見てもらって、
「ここを直してほしい」って言われたら修正する、
っていうのを何回か繰り返すんですけど、
そこでなかなかOKが出ないときは苦しいですね……。
相手の要望に応えられない、私の力不足かなって。
- ―
- どうつくっていいか、わからないときもありますか。
- カオリ
-
うーん、でも師匠から
たとえ、できるかわからないことでも
「できますか?」って聞かれたら
「できます」って言いなさいって教えられたので。
- ―
- はー。かっこいいですね。
- カオリ
-
だから、できる限りは引き受けて、
なんとか形にして、納品してます。

- ―
- これからやってみたいことはありますか?
- カオリ
-
もっといろんなお仕事やってみたいですよー。
絵本を出版したり、映像化とかもしてみたいですね。
- ―
- タカハシたちのストーリーはこれからも描いていくんですか。
- カオリ
-
はい。
タカハシとミゾグチ以外のキャラクターについても
もっと掘り下げたいし、
あとは、もっと暗い話とか描いてみたいかな。
- ―
- 暗い話。
- カオリ
-
今のところは、私の描く話って
けっこうクリーンじゃないですか、
クリーンと言うか……
- ―
- どちらかと言えばほっこりするような、優しい話ですよね。
- カオリ
-
そう。
ミゾグチがぐれちゃった話とか、
ちょっと暗い話も描いたことあるんですけど、
もっと人間臭い、どろどろした話も描いてみたいです。
- ―
-
でも、タカハシの人生も楽しいばっかりじゃないですよね。
特に学生生活が終わった後は、
なかなか就職できなかったり、
仕事がうまくいかなくて徹夜続きだったり、
クリスマス前に彼女に振られたり……。

- カオリ
- その後、会社がつぶれて失業しちゃいますしね。
- ―
-
さらっと書いてありますけど、
社会人編はけっこうキツイ場面もありますよね。
- カオリ
-
でも奥さんと出会えたり、
自分が関わった仕事が形になったり、
いいこともありますよ。
- ―
-
つらい場面が続いた後に明るくなったり、
かと思うとまたショックなことがあったり……めまぐるしいですね。
- カオリ
-
私自身は就職してないから、
こういうストーリーにどれだけリアリティがあるのかって
言われたら、わからないですけど。
でも、就職浪人してるときも、
就職してからも、やっぱり悩みは尽きないものですよね。
結婚するにしてもいろいろ考えることはあるし、
悩みはずっとあると思うから。
- ―
-
そういう、人生の苦さみたいなものは、
カオリさんの実感としてあるんですか?
- カオリ
-
そうですね。
私も、気持ちの浮き沈みが激しいんですよ。
悩んだり、落ち込んだりもしょっちゅうするし。
- ―
-
でも落ち込んだ後にこう、
屋上で伸びをしてがんばろうって決意する。
こういう場面は気持ちいいですね。

- カオリ
-
苦しい場面のあとには
ちょっと前向きになれることがあったり、
人生楽しいこともつらいこともあるよねっていうのは
表現したいと思ってます。
- ―
-
タカハシたちがこれからどんな人生を歩むのか、
続きを見られるのを楽しみにしてます!
今日はありがとうございました。
- カオリ
- こちらこそ、ありがとうございました。
(タカハシカオリさんのインタビューはこれで終わりです。最後は番外編。カオリさんのワークショップにお邪魔してきました!)