もくじ
第1回どこかで見たことのある風景。 2017-12-05-Tue
第2回一人一人を大切に描く。 2017-12-05-Tue
第3回たたずまい。 2017-12-05-Tue
第4回楽しいときも、つらいときも。 2017-12-05-Tue
第5回カオリさんのワークショップ 2017-12-05-Tue

編集者。普段は紙の雑誌をつくっていますがWebコンテンツ勉強中です!

フィギュア作家・タカハシカオリさんの世界</br>アニマルで描くヒューマン

フィギュア作家・タカハシカオリさんの世界
アニマルで描くヒューマン

担当・上條

第4回 楽しいときも、つらいときも。

― 
ものをつくるのは、子どものときから好きだったんですか。
カオリ
絵を描くのは小さい頃から好きでした。
友だちによく「描いてー」ってリクエストされたりして、
いろんなものを描いてました。
子どもの頃は漫画家になりたいと思ってましたね。
― 
大学はデザイン学科でしたよね。
カオリ
そうです。
当時はデザイナーになりたい!って思ってたんですけど……。
大学1年生の時点でもう
「私デザイン向いてないな」って思っちゃって。
― 
どういうところで「向いてない」って思ったんですか?
カオリ
単純に、周りに上手な方がいっぱいいたので……。
― 
それでフィギュアをつくるようになったんですか?
カオリ
いえ、大学生活ではずっと平面で絵を描いてました。
だけど、4年生になって、卒業制作を考えるってときに
ゼミの先生に作品ファイルを見せたんですよ。
そしたら「誰でも描ける絵だ」って言われちゃって。
― 
それはキツイですね。
カオリ
キツイですよー。
もう頭をがーんと殴られたみたいな気がして。
「え、じゃあ、今までの私の3年間なんだったの⁈」
って思いました(笑)。
そんなこと言われたことなかったから。
― 
人からそういう風に言われたこと、なかったんですか。
カオリ
そうですね。
それまでは、芸術祭で作品を展示するくらいで、
あんまり積極的に
人に作品を見てもらったり、してこなかったから。
― 
そこからどうしたんですか、卒業制作。
カオリ
その先生に見せた作品ファイルは、
イラストが中心だったんですけど、
立体の作品もいくつかあって。
先生に「こっちやってみたら?」
って言われたんです。
それで、卒業生制作から
粘土でフィギュアをつくって、写真を撮って、
っていうのを始めました。
― 
卒業後はどうされたんですか。
カオリ
私の師匠は、
フィギュア作家のデハラユキノリさんなんですけど、
卒業する年に、ちょうどデハラさんの展示があったので、
そこに自分の作品を持って行って、
「こういうのつくってるんです」
って見てもらったんです。
そしたら、「アシスタントに来て」
って言ってもらって。
― 
そのままアシスタントになったんですね。
カオリ
はい。
アシスタントをやりながら、
自分でも作品をつくって。
ちょっとずつ声をかけていただいて
お仕事をもらったり、
作品展をやったりするようになりました。
― 
独立したのはいつですか?
カオリ
2010年くらいですかね。
今でも師匠のところにヘルプで呼ばれたりはするんですけど。
― 
ご自身の作品とは別に、
雑誌の表紙とか挿画とか、
オーダーされてつくることも多いんですよね。
カオリ
はい。
― 
オーダーされてつくるときと、
自分の作品としてつくるときとでは、
違うところはありますか。
カオリ
オーダーされてつくるときは、
私が自分ではつくろうとしないようなテーマをいただくので、
すごく勉強になるし、楽しんでつくってますね。
苦しいときもありますけど。
― 
苦しいのはどんなときですか?
カオリ
フィギュアをつくる前に、
まずは紙にラフを描いて、
先方に見てもらって、
「ここを直してほしい」って言われたら修正する、
っていうのを何回か繰り返すんですけど、
そこでなかなかOKが出ないときは苦しいですね……。
相手の要望に応えられない、私の力不足かなって。
― 
どうつくっていいか、わからないときもありますか。
カオリ
うーん、でも師匠から
たとえ、できるかわからないことでも
「できますか?」って聞かれたら
「できます」って言いなさいって教えられたので。
― 
はー。かっこいいですね。
カオリ
だから、できる限りは引き受けて、
なんとか形にして、納品してます。

― 
これからやってみたいことはありますか?
カオリ
もっといろんなお仕事やってみたいですよー。
絵本を出版したり、映像化とかもしてみたいですね。
― 
タカハシたちのストーリーはこれからも描いていくんですか。
カオリ
はい。
タカハシとミゾグチ以外のキャラクターについても
もっと掘り下げたいし、
あとは、もっと暗い話とか描いてみたいかな。
― 
暗い話。
カオリ
今のところは、私の描く話って
けっこうクリーンじゃないですか、
クリーンと言うか……
― 
どちらかと言えばほっこりするような、優しい話ですよね。
カオリ
そう。
ミゾグチがぐれちゃった話とか、
ちょっと暗い話も描いたことあるんですけど、
もっと人間臭い、どろどろした話も描いてみたいです。
― 
でも、タカハシの人生も楽しいばっかりじゃないですよね。
特に学生生活が終わった後は、
なかなか就職できなかったり、
仕事がうまくいかなくて徹夜続きだったり、
クリスマス前に彼女に振られたり……。

カオリ
その後、会社がつぶれて失業しちゃいますしね。
― 
さらっと書いてありますけど、
社会人編はけっこうキツイ場面もありますよね。
カオリ
でも奥さんと出会えたり、
自分が関わった仕事が形になったり、
いいこともありますよ。
― 
つらい場面が続いた後に明るくなったり、
かと思うとまたショックなことがあったり……めまぐるしいですね。
カオリ
私自身は就職してないから、
こういうストーリーにどれだけリアリティがあるのかって
言われたら、わからないですけど。
でも、就職浪人してるときも、
就職してからも、やっぱり悩みは尽きないものですよね。
結婚するにしてもいろいろ考えることはあるし、
悩みはずっとあると思うから。
― 
そういう、人生の苦さみたいなものは、
カオリさんの実感としてあるんですか?
カオリ
そうですね。
私も、気持ちの浮き沈みが激しいんですよ。
悩んだり、落ち込んだりもしょっちゅうするし。
― 
でも落ち込んだ後にこう、
屋上で伸びをしてがんばろうって決意する。
こういう場面は気持ちいいですね。

カオリ
苦しい場面のあとには
ちょっと前向きになれることがあったり、
人生楽しいこともつらいこともあるよねっていうのは
表現したいと思ってます。
― 
タカハシたちがこれからどんな人生を歩むのか、
続きを見られるのを楽しみにしてます!
今日はありがとうございました。
カオリ
こちらこそ、ありがとうございました。

(タカハシカオリさんのインタビューはこれで終わりです。最後は番外編。カオリさんのワークショップにお邪魔してきました!)

第5回 カオリさんのワークショップ