- スガネ
-
結局私も、できるだけ学校で浮きたくないんですよ。
異端な存在であることは、極力避けたいと思っている。
- 朝井
-
それも考えの根本に、
「ぼっちは悪」があるからだよね。
でも「ぼっちは悪」というのは事実でも、
真実ではない。
誰かが決めたルールとは違いますから。
- スガネ
-
ひとりでいることの寂しさと、
恥ずかしさのふたつがあるんです。
見ていて結局は楽しそうだし、
きっと楽しいのもわかっているからこそ
ひとりでいると寂しさを感じてしまう。
だけれど話が合わない、と思っているから、
結局は羨ましい。妬みに近いかもしれませんね。
集団の中から外れるということは、
集団から視線を受けやすくなります。
恥ずかしいという部分はそこにありまして。
- 朝井
-
行ったら行ったで居心地が悪いのは、
少し経験済みなんですよね。
もうそれ、パリピのど真ん中に
飛び込んでみるしかないんじゃない?
片足だけ突っ込んでるから、未練が残る。
いっそのことパリピになっちゃえば?
そう来たか。
‥‥パリピかあ。
スタバの新作なんてチェックしないし、
帰り道に寄り道して
クレープなんて食べたことはないし、
そもそも投稿するネタがない。
- スガネ
- やるしかないですか?
- 朝井
-
やるしかないよ!
傷付いたら本当に無理だってわかるし!
- 朝井
-
SNSアカウントを作って
知り合いをとにかくフォロー!
もうパリピの中心に入っちゃえ!
無理なら逃げよう!
- スガネ
- パリピ大作戦‥‥ですか。
- 朝井
- パリピ大作戦だよ。
- スガネ
-
顔写真をアイコンにし、
慣れない自撮りを掲載し、
どこに行ったのか報告をすると。
- 朝井
-
そうだよ、なるんだよパリピに。
ツイッターからパリピを目指そう。
いやあ、無理だよ!
無理だよ、たぶん‥‥。
‥‥翌、5月2日。リアアカを作成した。
結局、パリピを目指してみることにした。
羨ましいけど、パリピは嫌い。
絶対に気持ちの悪くなるくらいに、
甘いお菓子なのはわかっている。
でも、羨ましいし、それが美味しいかもしれない。
どうせなら、堂々巡りに終止符を打ってしまおう。
たぶん、このままじゃ私は、
パリピを妬んだまま人生を終えてしまう。
それは「あの食べ物が嫌い」以上に、
もったいないことのような気がした。
食わず嫌いをすることで、自分を守っているようで、
私は傷付いていやしないだろうか。
だから、パリピを少しだけ知りたい。
パリピになろう。
パリピになれと言われた今日以外に、
パリピになるチャンスはめったにない。
さすがに顔写真をそのままアイコンにすることは、
個人情報を晒すことになるので私にはできない。
年に片手で数えるくらいしか撮らない
プリクラの画像にスタンプを押し、顔を隠した。
それでもパリピっぽさを目指して、
元の写りが結構いい画像を選んでみた。
自撮りはさすがに下手だからやめておいた。
上手くてもスタンプで隠すなら、
載せる意味はないけれども。
そして、最近の女子大生っぽい
プロフィールを作る。
学校名と学部をスラッシュで区切り、
好きな芸能人を並べて、
「夢のためにがんばる!」とか書いてみた。
こだわりは「がんばる!」というひらがなだ。
漢字でも構わなかったのだが、
なんだかひらがなの方が今どきの
女子大生っぽい気がした。
夢というのはパリピへの夢である。
「パリピになるためにこのリアアカを頑張る!」
という意思表示だ。
そして知り合いと、
同じ学部の人を片っ端からフォローしていった。
5月3日23時、
フォロー33、フォロワー30。
同じ学校の人とかフォローしてます!
なんて呟いておいたから、
まあまあのフォローバックが返ってくる。
半分くらい原稿終わったよ~!
続きは明日◎
とか言ってみた。
写真はwordに一時保存しているこの原稿を載せた。
肝心の「何が書いてあって」「何の原稿なのか」は
あえて書かない。
本文も加工して、スタンプで隠す。
いいね!0件。
こういう匂わせ系大好きなんじゃないの!?
私の知ってるリアアカツイッターは、
「頑張ってる私」アピールには2いいね!くらい
来るっていう認識でいたんだけど、私。
一度冷静に、ポジティブになろう。
フォローした人は、
大体フォローを返してくれている。
「まだ遅くないぞ。おいでよ!パリピに!」
とでも言われているようである。
私はまだ、パリピに間に合う。
やってやろう、パリピ大作戦。
このゴールデンウイーク、
スタバの写真を載せ、
パンケーキ屋さんに並んで、
友達と語り合っている写真を載せよう。
そうすれば、きっと5いいね!くらい、
心優しいだれかがくれるはずである。
私はこのゴールデンウイークの
スケジュールを確認することにした。
4日、休日。
5日、6日、7日、終日バイト。
この原稿のチェックを、4日にやるとして。
ああ、ゴールデンウイーク、終わった。
パリピ大作戦のために
街に繰り出す暇もないまま、
ゴールデンウイークが終わろうとしている。