材料
たまねぎ
ひき肉(豚と牛のあいびき)
パン粉、卵
牛乳、塩、こしょう、ナツメグソース:ウスターソース、ケチャップ、赤ワイン
いよいよメインディッシュ、3品目はハンバーグです。
パン粉が牛乳に浸ったら、
みじん切りにしたたまねぎ、ひき肉、溶いた卵、
塩、こしょう、ナツメグを入れて混ぜる。
ねばりが出るまでよく混ぜます。
- 娘
-
ハンバーグって、家によっていろいろ違いそうだけど、
うちのはどこから来てるレシピなの?
- 母
-
これはねえ、わたしが高校生のとき
初めてハンバーグをつくった、
そのときのレシピそのままなの。
- 娘
- ええっ、初耳。
- 母
-
小さいときからよく遊びに行っていた
親しい親戚のおうちがスーパーマーケットで。
そのころそこでアルバイトをしていたんだけど。
- 娘
- あ、聞いたことある。
- 母
-
そこの人たちがみんなで食事するときに
パックに入って売ってるみたいな既製品のハンバーグを
美味しい美味しいって食べてたのね。
当時そういうものが発売されたばかりだったのかな。
- 娘
- ふうん。
- 母
-
でもわたしは、
外のお店でハンバーグを食べたことがあったから、
それを食べて「こんなのハンバーグじゃない。
本当のハンバーグはもっと美味しいんだから!」
って言って、「わたしがつくる!」ってことになったの。
- 娘
- うわあ、面白い。
- 母
-
なにしろ親戚のやっているスーパーだから、
そのハンバーグを作る日は、
もうアルバイトなんて早めに終わらせて支度していいよ、
ってなって。
「このスーパーにあるもの何使ってもいいから!」って。
- 娘
- なにそれ、最高! 夢のような話だね。
- 母
-
だから、好きだったさくらんぼの缶詰をもらって、
飾りに使ったりしてね‥‥。
- 娘
- ハンバーグの飾りにさくらんぼってあり‥‥?
- 母
-
そのへんが高校生だよね。
残りはほとんど自分で食べちゃった。
- 娘
- で、何のレシピを見たの?
- 母
- お母さん(*母の母)が買ってた雑誌に載ってたレシピ。
- 娘
- そうなんだ。
- 母
-
ハンバーグを手作りするのは
本当にそのときが初めてだったんだけど、
レシピどおりにしたらちゃんとできるんだ!
って感動したのは、いまでも覚えてる。
それがお料理についての原体験かも。
- 娘
- 美味しくできた? 反応はどうだった?
- 母
-
喜んで食べてくれてたと思うけど。どうかな。
まあ美味しかったんじゃないかな。
思わぬ歴史のあったわが家のハンバーグの由来を聞きながら、
しっかりタネがまざったら成型です。
叩きつけるようにキャッチボールをするようにまとめて、
少し高さを出して、フライパンへ。
火が通りづらい真ん中を少し、くぼませます。
油をひいたフライパンにのせ
片面は焼き目をつけるようにしっかりと、
サイドも、フライパンのふちに押しつけて
肉汁を閉じ込めるように焼きます。
ひっくり返したらふたをして
少し弱火で中まで火を通します。
最後は火を止めて、余熱で火を通してもいい。
肉汁をためこんでぷっくりふくらんだら、いい感じ。
竹串をさして、
出てくるのが透明な肉汁になっていたら完成です。
合間にソースもつくります。
ソースとケチャップを同量と、赤ワインをほんの少し。
混ぜたら電子レンジで30秒ぐらい加熱します。
焼きあがったハンバーグにソースをかけて、できあがり!

ハンバーグ
ハンバーグをつくるのは、
恥ずかしながらこれが初めてでした。
「ハンバーグは簡単だよ」と母は言います。
でも、わたしにとっては、
思い立ってさっと作りたくなるようなメニューではない、
手間のかかるものというイメージ。
今回のほかの2品に比べて工程が多いし、
生の肉を扱うという緊張感も少しあります。そんなハンバーグ、
高校生の母がほかの人のためにふるまったメニューだった
というのは初めて知りました。餃子を包んだり、お好み焼きを焼いたり、
そんなお手伝いは
わたしも小さいころからしていたような気はしますが、
わたしが初めてほかの人につくった料理はなんだったのか。
小学生のとき、少女漫画の雑誌に載っていた、
「オレンジジュースで練った白玉団子」に惹かれて
つくって両親に食べてもらったことがあるような。
(味は‥‥まあ、ご想像のとおりです)創作料理とも言いがたい、
ちょっと変わったことをしたがるのはそのころからで、
一人暮らしを始めたばかりのときも、
焼肉のタレをパスタのソースにできないかと
つくってみたら全然合わなくてがっかりしたり。
肉じゃがも、
家で食べていたのとは違う
しょうが味のものを作ってみたり。実家を出て、自分専用の台所を持って浮かれたわたしは
料理というより、実験のような、
遊びのようなことばかりしていたような気がします。この歳になって、
ようやくつくる料理に落ち着き(?)が出てきて、
金目鯛の煮つけとか、茄子の揚げ浸しとか、
まっとうな料理もするようになりました。料理上手な母を持った娘の迷走はもう終わりにして、
これからは、前よりまじめに
母の味を会得していきたいなと思っています。
(つづきます。)