もくじ
第1回入りづらい台所 2017-05-16-Tue
第2回にんじんのグラッセ 2017-05-16-Tue
第3回ポテトドフィーヌ 2017-05-16-Tue
第4回ハンバーグ 2017-05-16-Tue
第5回母の情熱 2017-05-16-Tue

食品メーカーを経て出版社勤務。繰り返し観てしまう映画は「四月物語」と「グッドウィルハンティング」。最近観て好きだったのは「オーバー・フェンス」と「ラ・ラ・ランド」。

料理をめぐる</br>娘の挑戦、母の情熱

担当・はまお

こんにちは。
ほぼ日の塾・第3期塾生のはまおです。

今回お届けするコンテンツは、
娘(わたし)が実家に帰って料理をつくる、というものです。
言ってしまえばただそれだけのお話です。

これを読んでくださっている方の中には、
毎日家族のごはんを作っていらっしゃる方も
たくさんいらっしゃることと思います。
そんな中で「家で料理作ります!」と意気込んでも、
なんだそれは、という感じかもしれません。

でも、わたしにとってはこれが
ちょっと勇気のいる一歩なんです。

よろしければ、全5回、お付き合いください。

第1回 入りづらい台所

母は、料理上手です。
家庭の主婦ですが、お店がひらけそうなぐらい、
美味しいし、見た目もきれいなんです。

家族が集まる日のごちそうはもちろん、
毎日の父の晩酌のおともだって、
小料理屋で出てくるような感じ。
小中高とつくってもらったお弁当も、
よく友だちにうらやましがられたものでした。

はやりのキャラ弁みたいにすごく凝っているとか
パーティー料理みたいにきらきら飾られているとか、
そういうわけではない、
ふつうの家庭料理だけれど、なにか違う。

そんな母の料理を食べて育ってきたので、
美味しいものに対して貪欲な食いしんぼうに育ちましたが、
料理をつくることに対してはどうもコンプレックスが‥‥。

わたしは実家の台所にはあまり足を踏み入れません。
これまで両親に料理をふるまうということが
数えるほどしかありません。
ほかのことで親孝行すればいいや! と思いながらも
してあげたい、という気持ちをなんとなく持て余したまま
だいぶ大人になってしまいました。

どうも実家の台所は居づらいのです。
うろうろしてると邪魔扱いされるし。
手伝おうか? と言っても、10回中9回ぐらいは
「いいから、自分のことをしなさい」
と言われます。

ほぼ日の塾への参加が決まったときから
最後に取り組むコンテンツのテーマとしてわたしは
「料理」を真っ先に思い浮かべていました。
実家で、自分がつくった料理を食べてもらいたい。
それだけでコンテンツになるかどうか
まだわからないけれど、
このチャンスに、一歩を踏み出したい。

企画趣旨を説明したら、母は協力を快諾してくれました。
ゴールデンウィークの連休を利用して計画実行です。

* * *

何をつくるか。
献立については、これだ、というものがありました。
じつは、一人暮らしを始めるとき、
母が持たせてくれたレシピがあります。
あれから早10年。
実は、まだそのレシピで作ったことがないのです‥‥

自分でも料理をしないことはないのですが、
自分のためだけにつくるのは、
麺類とかどんぶりとか簡単なものばかり。

一人暮らしといっても
実家とはすぐに行き来できる距離なこともあって、
そのレシピの料理はつくらないまま
いまに至ります。

それにしてもいったいどうなるんだろう。
ふだんも、聞けば料理を教えてくれますが
どちらかというと、教えたい! というタイプではなく、
料理しているところあんまりじっと見ないで!
と言うタイプ。
でも本当のところはどうなんだろう。
もっと娘に家で料理をしてほしいと思っているんだろうか。
そのあたりの本音も聞いてみたいな、という目的も秘めつつ。

* * *

そして5月。やってきましたゴールデンウィーク。
実家に着いて、
夕方、台所に立つ前から、さりげなくインタビューを開始。

母が乾燥機から取り出してきた洗濯物を
手に取ってたたみながら切り出します。

料理をするのは好きなんだよね?
うん、まあ、好きだけど‥‥。
でもだんだん息切れしてくるけどね。
昔みたいにはつくれなくなったし‥‥。
そうなの?
そうだよ。
結婚する前から料理はしていたの?
どうやっていまみたいに上手になったの?
おばあちゃん(*母の母)も上手だったけどね。
土曜日とか、休みの日の食事を
わたしが作ることになってた。
家族の分をつくってたんだ。すごいね。
でもわたしにはそういうことさせなかったんだね。
お父さん(*母の父)は毎日家にいる仕事だったから、
ごはんも毎食作らなきゃいけないのが大変で、
やってほしかったんだろうね。
パパ(*わたしの父)は外で仕事してるから、
わたしは家族の分を作らなくていい
のんびりできるときもあったから。
洗濯物たたみとかはわたしがやっても止めないし、
どんどん手伝ってって感じだと思うけど、
料理はなんか違うよね。
そうかなあ。そうかもね。
それって、なんで?
うーん、洗濯物たたみは簡単だから?
そ、そうかな?
学校とか会社で疲れているだろうから
家はそれを癒す場にしてほしいと思っているのかな。
あと、家事は自分の仕事として、
人に頼りたくない気持ちがあるのかなあ。

たしかに、家事を父やわたしに分担させるということが
あまりない母ですが、でも、「料理」に関しては
もっと他と違う何かがあると思うんだよなあ、
と娘は釈然としないままです。

実際に料理をつくりながら、もっと聞いてみるしかない。

さて、今回つくるメニューはこの3品。

にんじんのグラッセ

ポテトドフィーヌ

ハンバーグ

次回から、いよいよ料理を始めます!

(つづきます。)

第2回 にんじんのグラッセ