もくじ
第0回プロローグ 2017-05-16-Tue
第1回参考にしている植物たち 2017-05-16-Tue
第2回布糸植物(ふししょくぶつ) 2017-05-16-Tue
第3回季節を巡る植物 2017-05-16-Tue
第4回虫食いの葉も 味がある 2017-05-16-Tue
第5回自分が作ったものは 見届けたい 2017-05-16-Tue

京都・かもがわの近くに住んでいます。
普段は糸の専門店で情報を発信したりデザインの仕事をしたりしています。

布から生まれる植物の飾り

布から生まれる植物の飾り

担当・サク

第4回 虫食いの葉も 味がある

――
フィリテマテリラのお客さんって、はつみちゃんに似てる
と思う。
三嶋
そうなのかなぁ。
――
展示会の時に話してくれるお客さんのエピソードがすごく
素敵だなぁと思ってて。そのエピソードを聞いて、フィリテ
マテリラを好きになるっていう理由がすごくよくわかるなぁ
と思ったよ。
三嶋
わたしの知らないみんなの見てる季節や、きれいな話を
届けてくれる人がすごい多くて。
郵便屋さんで、押し花をしてる男の人もいたし、京大の植物
研究してる人が来てくれたりとか。キンモクセイの耳飾りを
見て、インターネットで買ってくれた人は自分の田舎の庭に
いつもキンモクセイが咲いてて、「あの匂いがしたら、あぁ
秋がきたなっていつも思ってた」って。「今遠くに離れて
遠くに住んでるから故郷を思い出してすごい嬉しくなりまし
た」って言ってくれた人とか。

協力:filithematerira
――
へぇー!
三嶋
春の展示の時なんかは、わたしが作った植物ってそんな風に
見てもらったり、感じたりしてるんだって思うことが多い
毎日で。
1人のお客さんは、山口の離れたとこから旦那さんが体調不
良で入院してたから行けないと思ってたけどなんとか持った
から頑張ってきましたって見に来てくださって。
すみれの花の作品を見てた時に、すみれが実家に咲いてて
思い入れがある花だったらしくて、ここ最近忙しかったり
大変だったり、辛い思いしたりとかがあってすごく苦しかっ
たけど、その花を見て自分の故郷のいろいろを思い出して、
来てよかったって思いましたって、泣きながら話してくれて、
すごいびっくりして。

協力:filithematerira
そんな記憶にまで繋がったんだ。よかったって思った。
こっちがやろうと思ってたこと以上の大きなものが帰って
きたから、一瞬ちょっと、抱えきれないくらいの嬉しい気持
ちになった。
自分で言葉にするには、うまくできないけど、それ以上に
感じ取ったり、思ったりしてくれてることがわたしの知らな
い所でいっぱいあると思ったら、嬉しい。
――
それは嬉しいなぁ。でもそれは、はつみちゃんがすごい
ストイックに考えて作ってるから、そういうのが伝わってる
んじゃないかな?
三嶋
そうなのかな。見て欲しいって思ってたことがそのままで
あったり、見てくれる人が感じたことを伝えてもらえる
ことにも毎回はっとすることが多いから、展示会には
やっぱり一日も外さずいたいなって思ってしまう。
「そっくりなだけじゃなくて、その先のことが表現出来てる
から、見てくれる人の記憶に繋がるんだと思う」って言って
くれた男性のお客さんもいて。
「あんなにリアルに作ってどうするの?」って、友達には言
われたりするけど。笑
こんなちっちゃいのにすっごいきれいに花びらがついてて、
どうやってこんな風にできるんだろうみたいな。

協力:filithematerira
実際にある植物のきれいとかすごいなと思ったことの
イメージ、見たものの印象を壊さないように伝えたいから
よりリアルになっていってるっていう話をしてた。
――
ボダイジュが飛ぶかどうか、とかね 笑。
三嶋
そうそう 笑。
でも単純になぜそんなことしてるかって言ったら。
展示やワークショップに来てくれたことがきっかけで、植物
の名前や由来をはじめて知りましたとか、見たことあったと
か、そういうお客さんの話を聞くのが嬉しいし、お客さんか
ら教えてもらうこともあるし。そこで自分のなにかに繋がっ
たりとか、誰かのこれからに繋がったり、お客さんとわたし
が会うことによって知らないことを聞けたりするのが楽しい
からだと思う。
「どこかからつけてきちゃったみたいな葉っぱ誰が買うの
?」みたいに言われる理由もわかるけど 笑。
――
笑。
三嶋
(作品を見ながら)それは、かわいいなと思ってかがんだら
ふたつ落ちてて。
ふたつ一緒にひろったから、セットで売ってるの。
――
へぇー!
ふたつとも味があって、同じ葉っぱでも、全然表情が違う。
この、虫食いがいいなと思う。
三嶋
そうそう。もっと、半分くらい虫に食われてる葉っぱを
ひろってきて、いいなぁと思って作ったことがあって、
展示会で置いてたときに、植物が好きな男性のお客さん
に、「この葉っぱを選ぶことがやっぱりちょっと変です
よね」って言われた 笑。
――
あはは、わかる気がする。今日話聞いてて思ったけど、
はつみちゃん、基本ちょっと変態だよね 笑。
三嶋
うん、変態だと思う 笑。「普通だったら、きれいな葉っぱ
を選ぶのに、あえてこの、半分以上虫に食われてるのを選
ぶっていうのは、ちょっと何かありますね」って言われて 笑。
「え、これすごくいいと思って選んだんですけど‥‥。」
って言ったら「あ、いい意味なんですけどね」って付け加え
てくれた 笑。
でも違うお客さんは見た瞬間すごくいいって言ってくれて
すぐ買ってくれたんだけど、「わたしはこれすごいいと思っ
て作ったんですけど。こういうことがあって」って話を買っ
てくれたお客さんにするっていう。ある人には、「食われ
具合がすごすぎて、野性的だね」って言われたり 笑。
――
笑。でもその話を含めて、いいと思うけどな。お客さん側が、
何かを思って来てくれるとか、そういうお話があったりとか、
なかなかはつみちゃんの展示くらいしか聞いたことがない。
三嶋
作る作品を通して、うまく伝えられてるかはわからないけど、
感じてること、少しは伝わってるのかな、と思うことはある。

(つづきます)

第5回 自分が作ったものは 見届けたい