もくじ
第0回プロローグ 2017-05-16-Tue
第1回参考にしている植物たち 2017-05-16-Tue
第2回布糸植物(ふししょくぶつ) 2017-05-16-Tue
第3回季節を巡る植物 2017-05-16-Tue
第4回虫食いの葉も 味がある 2017-05-16-Tue
第5回自分が作ったものは 見届けたい 2017-05-16-Tue

京都・かもがわの近くに住んでいます。
普段は糸の専門店で情報を発信したりデザインの仕事をしたりしています。

布から生まれる植物の飾り

布から生まれる植物の飾り

担当・サク

はっと息をのむような、繊細なお花の耳飾り。
胸元を飾る、木の実のブローチ。
身につけた瞬間、普段の自分とは違う少し背筋が伸びる
ような、ちょっと特別な気持ちにさせてくれるアイテム。

飾り作家の三嶋 初美(みしま はつみ)さんが手がける、
filithematerira(フィリテマテリラ)のアクセサリーやブローチは、
身につける人をそんな気持ちにさせてくれます。

三嶋さんが“布糸植物(ふししょくぶつ)”と呼ぶ植物の飾
りは、名前の通り1枚の布から色を付け、形作る、それらを
三嶋さん自身が一環して作られています。
どこかきりっとしたたたずまいの植物たちは、男性のかた
にも人気だそうです。

友人でもある三嶋さんとは、普段からものづくりについての
話をしているのですが、今回、改めてお話を聞きに行きました。

プロフィール
三嶋 初美さんのプロフィール

第1回 参考にしている植物たち

当日、はつみちゃんは資料やメモとして取っている、植物を
挟んだファイルとノートを持ってきてくれた。
植物のすみずみまでわかるように形を整えて、大切にはさん
でいた。下には植物の名前が書いてあり、植物をとった場所
も一緒にメモしていた。

――
普段からこういうのを参考にして集めたりしてるの?
三嶋
今まではこんな風にきちんと閉じたりはしてなくて、それま
ではどこかのメモにはさんでおくとか、ドライにしたり。
今年の春の展示会の準備をした時からちゃんとするように
なったかな。持っている古い標本がこんな感じですごく良く
て、こういう風にすればいいんだと思って。
――
いつも箱の中にいろいろな植物を貯めてるよね。
三嶋
箱に入れて倉庫みたいにたくさん保管してる。
でもメモみたいに押し花にするのもいいなと思って。
どんな形の葉っぱがあるとか、資料として取っています。
植物の名前って、どう読むんだろう?っていうちょっと変な
名前が多いんだけど、漢字を改めてちゃんと調べてみると
へぇーって思うこととか、そういう意味があったんだ、とか
があっておもしろい。
カタカナしか知らなかったのを漢字で見たりするのもおもし
ろくて。
――
おもしろいね。研究者みたい。
三嶋
なんとなく見てた葉っぱ、“クヌギ”“ケヤキ”“ムクノキ”
とかさ、名前は知ってるけど、どんな風になってるか詳しく
知らなかったものとか今になって調べて、こんな名前だった
んだーってわかったり、見かけたりすると楽しくって。

協力:filithematerira
生きてきた中の日常にどこを思い返しても葉っぱってある
やん?身近にあるものや、懐かしいものばっかりだから、調
べて行って、自分の記憶につながるとおもしろいって思う。
だからだろうね、こういうことしてるのは。
――
あぁー。なるほど。
聞いてたら、普通そんなにたくさん植物の名前知ってる?
って思ったけど 笑。
三嶋
もともと、雑草好きだから 笑。
――
そういう題材にする花とかって、
道で見つけてこれいいなぁと思って?
三嶋
うん、そういうのもあるし、もともと好きで作るものもある
よ。この春に展示した花は、好きでちょこっと作ってたんだ
けど、展示するお店のかたが「その花ものすごい好きなんで
す!」って言ってくれて。

――
これなんて言う花だったっけ。ポピー?
三嶋
これはナガミヒナゲシ。
――
あ、全然違う 笑。
三嶋
ポピーの野草版みたいな感じ。この時の展示は“道草”が
テーマだったから。DMの表紙になってるオオイヌノフグリ
とかは、みんな好きじゃない?

協力:filithematerira
2017 Mar. “道草のつづり” 
――
これ何の花だろう?って思ってて。
三嶋
オオイヌノフグリです。
――
だんだん作るものがちっちゃくなってる気がするけど 笑。
三嶋
次またひろい集めてる植物がすごいちっちゃくてどうしよう
かなぁって 笑。
――
大丈夫? 笑。
2〜3年位前、シャツと飾りの2人展の時に飾ってた花、
すっごい小さくてびっくりした。

協力:filithematerira
2014 Nov. ” 寧日” シャツと飾り
三嶋
あれはワレモコウっていう小さい花の集合体みたいな、
赤茶色で、楕円がいっぱい密集してあるような花なんだけど。
いっぱい作ってくっつけたらやりすぎて、目みたいで気持ち
悪くなって‥‥。出来上がったけど出さなくて、作った証に、
展示会にはカケラだけ並べた 笑。
――
笑。
三嶋
一緒に展示してた子から、「え!なにこれ。小さすぎじゃな
い!?」って言われて。植物に近づけるって言っても、
うまくいくときと、ただ気持ち悪くなるだけの時があるから、
あれ以降やりすぎ注意みたいなところがあるんだけど‥‥。
いい度合いを見ながらしないと恐ろしいことになる。

淡々と作業をしながら、はつみちゃんは言う。(作品が今
手元にほとんどないからと、この日の撮影用に花を作ってく
れていた。)話に集中していながら、手元では細やかな作業
がどんどん進んでいる。

彼女は、入り込んだものには深く調べて徹底的に作る、とい
うところがあって、それは作品1つひとつに繋がっている。
作品を見たときのかわいさとは裏腹にある花の形の細かさや、
そこにたたずむ作品の空気感は、まるで生命が宿っているよ
うに感じる。

(つづきます)

第2回 布糸植物(ふししょくぶつ)