当日、はつみちゃんは資料やメモとして取っている、植物を
挟んだファイルとノートを持ってきてくれた。
植物のすみずみまでわかるように形を整えて、大切にはさん
でいた。下には植物の名前が書いてあり、植物をとった場所
も一緒にメモしていた。
- ――
- 普段からこういうのを参考にして集めたりしてるの?
- 三嶋
-
今まではこんな風にきちんと閉じたりはしてなくて、それま
ではどこかのメモにはさんでおくとか、ドライにしたり。
今年の春の展示会の準備をした時からちゃんとするように
なったかな。持っている古い標本がこんな感じですごく良く
て、こういう風にすればいいんだと思って。
- ――
- いつも箱の中にいろいろな植物を貯めてるよね。
- 三嶋
-
箱に入れて倉庫みたいにたくさん保管してる。
でもメモみたいに押し花にするのもいいなと思って。
どんな形の葉っぱがあるとか、資料として取っています。
植物の名前って、どう読むんだろう?っていうちょっと変な
名前が多いんだけど、漢字を改めてちゃんと調べてみると
へぇーって思うこととか、そういう意味があったんだ、とか
があっておもしろい。
カタカナしか知らなかったのを漢字で見たりするのもおもし
ろくて。
- ――
- おもしろいね。研究者みたい。
- 三嶋
-
なんとなく見てた葉っぱ、“クヌギ”“ケヤキ”“ムクノキ”
とかさ、名前は知ってるけど、どんな風になってるか詳しく
知らなかったものとか今になって調べて、こんな名前だった
んだーってわかったり、見かけたりすると楽しくって。

協力:filithematerira
生きてきた中の日常にどこを思い返しても葉っぱってある
やん?身近にあるものや、懐かしいものばっかりだから、調
べて行って、自分の記憶につながるとおもしろいって思う。
だからだろうね、こういうことしてるのは。
- ――
-
あぁー。なるほど。
聞いてたら、普通そんなにたくさん植物の名前知ってる?
って思ったけど 笑。
- 三嶋
- もともと、雑草好きだから 笑。
- ――
-
そういう題材にする花とかって、
道で見つけてこれいいなぁと思って?
- 三嶋
-
うん、そういうのもあるし、もともと好きで作るものもある
よ。この春に展示した花は、好きでちょこっと作ってたんだ
けど、展示するお店のかたが「その花ものすごい好きなんで
す!」って言ってくれて。

- ――
- これなんて言う花だったっけ。ポピー?
- 三嶋
- これはナガミヒナゲシ。
- ――
- あ、全然違う 笑。
- 三嶋
-
ポピーの野草版みたいな感じ。この時の展示は“道草”が
テーマだったから。DMの表紙になってるオオイヌノフグリ
とかは、みんな好きじゃない?

協力:filithematerira
2017 Mar. “道草のつづり”
- ――
- これ何の花だろう?って思ってて。
- 三嶋
- オオイヌノフグリです。
- ――
- だんだん作るものがちっちゃくなってる気がするけど 笑。
- 三嶋
-
次またひろい集めてる植物がすごいちっちゃくてどうしよう
かなぁって 笑。
- ――
-
大丈夫? 笑。
2〜3年位前、シャツと飾りの2人展の時に飾ってた花、
すっごい小さくてびっくりした。

協力:filithematerira
2014 Nov. ” 寧日” シャツと飾り
- 三嶋
-
あれはワレモコウっていう小さい花の集合体みたいな、
赤茶色で、楕円がいっぱい密集してあるような花なんだけど。
いっぱい作ってくっつけたらやりすぎて、目みたいで気持ち
悪くなって‥‥。出来上がったけど出さなくて、作った証に、
展示会にはカケラだけ並べた 笑。
- ――
- 笑。
- 三嶋
-
一緒に展示してた子から、「え!なにこれ。小さすぎじゃな
い!?」って言われて。植物に近づけるって言っても、
うまくいくときと、ただ気持ち悪くなるだけの時があるから、
あれ以降やりすぎ注意みたいなところがあるんだけど‥‥。
いい度合いを見ながらしないと恐ろしいことになる。

淡々と作業をしながら、はつみちゃんは言う。(作品が今
手元にほとんどないからと、この日の撮影用に花を作ってく
れていた。)話に集中していながら、手元では細やかな作業
がどんどん進んでいる。
彼女は、入り込んだものには深く調べて徹底的に作る、とい
うところがあって、それは作品1つひとつに繋がっている。
作品を見たときのかわいさとは裏腹にある花の形の細かさや、
そこにたたずむ作品の空気感は、まるで生命が宿っているよ
うに感じる。
(つづきます)