もくじ
第1回教室のはじまり 2017-05-16-Tue
第2回「おかえり」が似合う場所 2017-05-16-Tue
第3回童話をバレエ作品に 2017-05-16-Tue
第4回東京で得たもの 2017-05-16-Tue
第5回ずっと踊りのことを考えていたい 2017-05-16-Tue

1987年生まれ。出版社で働いています。最近、ブラックコーヒーを美味しいと感じられるようになりました。

あるバレエダンサーの話。</br>新宮 登さん

あるバレエダンサーの話。
新宮 登さん

第3回 童話をバレエ作品に

 
──
毎年の発表会では、色々な作品を
踊らせてもらいました。
 
中高生では古典的な作品(*3)も踊りましたが、
幼稚園児〜中学生までが主に踊る、
童話をバレエ化した作品も、個性的で魅力があって
印象に残っています。
登先生
「親指姫」や「みつばちマーヤ」、
「森は生きている(12月物語)」、
「マッチ売りの少女」「人魚姫」に「雪の女王」。
他にも色々演ったねぇ。
──
どれも先生が、発表会用に
オリジナルで振りをつけたんですよね?
登先生
そう。どれも、夢中で作ってたなぁ。
──
振りを教えてもらう時、
教室では前に上演した時のビデオも流していて、
それを見ていたので、ずっと踊り続けている作品なんだなと
思っていました。
登先生
教室のレパートリーとして、どれも大切な作品だね。
絢子先生
音楽も、ずーっと夢中で編曲してたよね。
──
音楽の話も、聞いてみたかったんです。
どうやって曲を繋いでいたんですか?
登先生
元から「親指姫」の曲があるわけじゃないから、
色々な曲を聞いて、
イメージに合うものを繋げて作ってたよ。
 
レコード屋さんに行って
バレエ楽曲以外のクラシックを聴いたり、
映画を観てサントラが良いなぁと思ったり。
学校の教材用の音楽も聞いて、選んだりしたよ。
──
教材用の音楽、ですか?
登先生
「嬉しい」「悲しい」みたいな
感情がタイトルになっている曲とか、
「風の音」をイメージした曲とかが収録されているの。
──
あぁ、なるほど〜。
色々な曲から選んで・・・・。
本当に、手作り感あふれる作り方だったんですね。
絢子先生
でも今聞き直すと、長いんだよね(笑)
登先生
ふふふ(笑)
──
長い、というと?
絢子先生
今年はこの作品演ろう、ってなって
ビデオを見返していると
「この場面、こんなに長く要りませーん!」って
思っちゃう。
登先生
夢中で作ってたからね、どれも長いみたいなの(笑)
だいたいは40分くらいに収めるんだけど、
「雪の女王」は、子ども向けの作品なのに
1時間にもなっちゃったよ。
──
思いを込めて作るから、大作になっちゃうんですね。
登先生
今は少子化もあって、
幼稚園の生徒たちは前より減ってもいるから、
その子たちが踊る場面は短くしたり、
列の並ばせ方も、
少ない人数でも見栄えがするように昔と変えたり、
少しずつ工夫してるかな。
──
そうだったんですね。
作品は今も、子どもたちに合わせて
変化や成長をしているんですね。
 
振り付けについても、教えていただけますか?
登先生
誰もが知っている童話をモチーフにしたから、
バレエで見る時にどう表現されていたら、
お客さまは面白く感じてくれるかなって
考えながら、振り付けしていました。
──
それはたとえば「親指姫」だと・・・・
登先生
カエルが、少女を連れ去っちゃう場面とか。
こわい雰囲気にもできるけど、
コミカルな音楽を選んで、カエルの泳ぎ方や
ジャンプの様子を取り入れたんだ。
──
しかもカエルは一匹じゃなくて、夫婦にしてましたよね。
掛け合いのマイムもあって、
面白い場面だから好きでした。
登先生
童話に出てくる
動物や虫のキャラクターとか、
木の葉や雪のような自然を表すダンスは、
どう踊ったらわかるかなってよく考えていたよ。
──
親指姫が助けるツバメも、
翼を表す腕の動きやマイムがたくさんありましたね。
登先生
基本はクラシックバレエなんだけど、
それだけだと堅苦しく見えたりしちゃうでしょ?
だからマイムとか、モダンバレエの動きも
混ぜたりしていたよ。
──
確かに、先生の振りにはどこか、
クラシックバレエの動きだけではなくて・・・・。
「登先生風」と言いたくなるような、
モダンバレエや他のダンスと
溶け合っている感じがありました。

 
(つづきます)


*3
チャイコフスキー作曲の
三大バレエ「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「眠れる森の美女」に代表されるような、
ダンスとマイムで物語を表現していく作品。
女性はトゥシューズを履き、チュールを何枚にも重ねたチュチュという衣装を着ることが多い。

第4回 東京で得たもの