- 糸井
-
高校生の時期っていうのは、
何をしてでも目立ちたいわけです。
「みんな俺をもっと見ないかな」
ということを服装で表現してみたり(笑)。
それは動物の毛皮の色みたいなもので、
自然ですよね。
やがてその気持ちを残しながらも、
嬉しいのは何かっていったら、
近くにいる人からモテることなんです。
だから彼女がいるというのが一番理想ですよ。この間、上村一夫さんの娘さんと
対談したんだけど、
『同棲時代』というすごい悲劇的な漫画を、
当時の僕はうらやましいと思って見てました。
気がおかしくなっちゃうし、貧乏なんだけど、
彼女いるからね。
3畳1間だか知らないけど、
そんなとこで女と
毎日寝てるんだぞみたいな。

- 古賀
- (笑)
- 糸井
- それさえあれば俺は何も要らないみたいな。
突っ込んでいきたかったんですよね、きっと。
恋愛至上主義に近いんですよ、若いときって。 - 古賀
- はいはい。
- 糸井
- だからってワーワーモテちゃったとしても、
ファンみたいに距離が遠いものは、
寄せちゃいけないんですよね。 - 古賀
- なるほど。
- 糸井
- 僕みたいな加減で目立ちたがったり、
目立ちたがらなかったりしてることが、
古賀さん世代の人に
よく見えているということには
気づいてますよ。
若い人達が僕を見たとき、
そんなにガツガツ目立とうとしなくても、
おもしろいことをやれるんだなと思えるのが、
ひとつの理由ですよね。
それは、
目立ちたがりが消えたんじゃなくて、
そのくらいの方が楽しいんだよ。
だってね、アイドルグループの子達だって、
すごく人気があるとしても、
実際の個人としてモテてたわけじゃないでしょ。 - 古賀
- 遠くでモテて。
- 糸井
- そうなんです、距離なんですよ。
人から見たら、
全部OKですよっていうお客さんが
会場を埋め尽くしてるはずじゃないですか。
でもそれは禁じられたことでもあるし、
仮にそこに突っ込んでいったら、
後始末が大変ですよね。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- そう考えるとそれは、
商品に手を付けるっていうか、
そういうことだから禁じられてるわけで。
それよりは、
たまたま行った誰かの送別会で
隣にいた女の子に、
「ワタシ送ってって欲しいんだけど」
って言われたら、
もうバリバリに鼻の下伸ばしますよね。(笑)

- 古賀
- (笑)
そうですね、うんうん。 - 糸井
- そこの実態の話で。
いずれみんなわかっちゃうんじゃないですかね。
まだ足んないなって僕、
あんまり思わないんですよ。
大体足りたって思うんです。 - 古賀
- はいはいはい。
でも、遠くの5万人とか、
遠くの50万人にモテてる俺っていうのを
喜ぶ人も確実にいますよね。 - 糸井
- それはものすごくおもしろいゲームだし、
僕の中にその気持ちはもなくはないんです。
何人読んでくれてるって。
まさしく100万人。
そこには「ええー?」っていう
嬉しさがあるじゃないですか。
例えば、そうだな、
ヒマラヤとか、
ああいうのが見える場所に
立ったことあります? - 古賀
- いや、ないです。
- 糸井
- ないですか。
たまたま立ったりしたときに、
「大きいなー」
って思うじゃないですか(笑)。 - 古賀
- (笑)
ナイアガラの滝で感じました(笑)。

- 糸井
- いいですよね。
- 古賀
- いいですいいです、うん。
- 糸井
- 「来てよかったなー」って思うじゃないですか。
- 古賀
- 思います、はい。
- 糸井
- 「もしナイアガラの近くに行くんだったら、
絶対行った方がいいよ」と思うじゃない。
あれですよね。 - 古賀
- はああ。
- 糸井
- だから僕は人に、
ピラミッドをすすめてますもん。
あと、仲間もピラミッドを見られるのがいいよね。
たとえば古賀さんが、
「すっごく、お金なんかないですよ」と言った子に、
「ちょっと今儲かったから連れて行ってあげます」って、
ピラミッドが見えるとこに立って、
「なあ」って言うと、
その子が「ほんとだぁ」って言うじゃないですか。
その「ほんとだぁ」が、
自分以上に嬉しいですよね。
この間あったじゃないですか、それ。 - 古賀
- はいはい(笑)
うちの子が。

- 糸井
- ヒットしたんだよね。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- あれですよ。
- 古賀
- 会社の子が10万部いって、
じぶんのこと以上に嬉しかったです。 - 糸井
- それは嬉しいと思いますよ。
「人が喜んでくれることこそが、
自分の嬉しいことです」
というのを、
綺麗ごととして言葉にすると
すごく通じないんだけど。
例で、あったでしょ、そういうことが。
例えばお母さんが子供に
じぶんは食べないで、
子供にイチゴを食べさせるみたいな。
あれも全く同じだし。
そういう経験をすればするほど、
人の喜ぶことを
考えつきやすくなりますよね。 - 古賀
- なるほど。
ひとつ質問なのですが、
遠くの5万10万、
あるいは億の人達とかを考えるとき、
例えばミリオンセラーになったら1億円だとか、
そういうようなお金を想像しますか。 - 糸井
- 人はすぐにそれを想像するんですよ。
その人の小ささに合わせて
自分像が見えちゃうのは嫌なので、
僕はお金に対してはちょっと警戒心があって、
お金好きですっていう発言を
時々するようにしています。
結構そこね、リスクなんですよね。
邪魔するのに、非常に都合がいいんですよ。 - 古賀
- 邪魔するのに都合がいい。
- 糸井
- 「糸井は、糸井の欲望のために何かしてる」
とふうに思うと。
例えば古賀さんがこれはおもしろいぞってことを考えて、
「俺もそれやりたいです」って言って、
「参加させてください」った人に、
「それをやればやるほど古賀さんが儲かる仕組みなんだよ」
と誰かが言ったら、動きにくいんですよ。 - 古賀
-
なるほど。
(つづきます)