もくじ
第1回売れてますね(笑)。 2016-05-16-Mon
第2回3年後、どこを向いているか。 2016-05-16-Mon
第3回家族でも、親戚でもなく、友達。 2016-05-16-Mon
第4回ほんとのことを言う偽物。 2016-05-16-Mon
第5回仲間とピラミッドを見に行く。 2016-05-16-Mon
第6回ヒット多様性。 2016-05-16-Mon
第7回気休めの鬼。 2016-05-16-Mon

わざわざ
プロフィールを
見ていただき
ありがとう
ございます。
おのたかひろと
申します。
野球とラーメンと
旅行が好きな34才。
2匹のネコと
暮らしています。

100万部というピラミッドを見てみたら。

第3回 家族でも、親戚でもなく、友達。

糸井
友達じゃない人から
いろんなことを言われたとき、
「うん、ありがとうね、ありがとうね」って言うけど、
やっぱり「ございます」が後に付くんだよね。

古賀
ああ、なるほど。
糸井
誰と誰によくしてもらったから
いつか返さなきゃとかさ。
放っといたらそう思っちゃう性格なので。
みんながストレートにわかってくれたり、
普通に「ありがとう」と
言い合える関係がいいんですよね。
友達という関係なら、
僕が普通のありがとう以上のことを
恩着せがましくしたら、
「ありがとう」って
言わないと思うんですよ。
やっぱりそこが基準でした。
あげればあげるほどいいと思ってる人も
いるじゃないですか。
古賀
震災のときに糸井さんは、
当事者じゃなさすぎるという言い方を
されてたじゃないですか。
特に福島との付き合い方とか、
距離感の問題とか。
当事者になることは
やっぱりできないので、
そこのヒントというかきっかけが、
友達ということになるんですかね。

糸井
そうですね。
たぶん僕にとっては
親戚って考えてもダメなんですよ。
一方で家族って考えると、
ちょっと大きすぎるんですよね。
それはもう当事者に近い。
古賀
そうですね。
糸井
例えば転校して行った友達がいて、
どうしてるかなと思った日に、
そんなことがあったみたいな。
そう考えると、悪口も言えるし。
古賀
うんうんうん。
糸井
「お前ほんとにマズイな」
って言いながらやり取りできるみたいな。
それで1本考え方が見えたかな。
古賀さんはその当時、
自分の考えをどう納めようと思った?
古賀
僕はちょうどcakesの加藤さんと一緒に、
5月ぐらいに出版予定の本を作っていて、
もうすぐ入稿というタイミングで。
このまま震災に触れず、
その本がポンと出てくるというのは
明らかにおかしいよねっていう話をしました。
それで本のテーマとは関係なかったんですけど、
とりあえず現地に行って取材しようと話して、
4月に著者の方と一緒に3人で現地を回りました。
そのときに思ったのは、
ほんとに瓦礫がバーッとなってる状態で…。
糸井
行くだけで大変ですよね。
古賀
そうですね。
交通手段も限られてるような状態だったので。
そのときに思ったのは、
もう今のこの状況は、
ほんとに自衛隊の方とか、
そういう人達に任せるしかないなと。
東京にいる僕らにできるのは、
とにかく自分達が元気になることだなと
思ったんですよね。

糸井
はい。
古賀
どう聞こえるかわからないですけど、
自分達が東京で下を向いて、
つまんない本を作ったり、
自粛したりするんじゃなくて、
東京の人間が
東を向いて何かをやるというよりも、
西の人達に俺達しっかり頑張ろうよと
言うというか。
俺達がやらないと、
東北の人達も立ち直ることは
なかなか難しいだろうと、
意識をあえて西に向けていた時期でした。
みんなが意気消沈という時に。
瓦礫を見た時の迫力を思い出すとそれしか…。
糸井
無力感ですよね、まずはね。
古賀
そうですね。
何もできないなと思ったので。
糸井
あの、何もできないという思いは、
形を変えて、ずっと僕の中にも小さく残ってますね。
除去をした人達に対する感謝と一緒に。
古賀
はいはいはい、そうですね。
糸井
いま、瓦礫はないんですからね。
古賀
ほんとに20年ぐらいかかるだろうなと思いました。
糸井
思いますよね。気配、ないですよ、ほんとに。
古賀
そうですね。
糸井
あの頃の話でいうと、
『モテキ』っていう映画を撮ってたのも
同じ時期で。
監督の大根さんと話したんですけど、
とにかくあの時期に
『モテキ』を止めないでやるって、
大変なことだったと思うんですよ。
止めないんだって決めるしかないわけで。
僕は、ごく初期の頃に、
「本気で決断したことは、
全部正しいというふうに思うじゃありませんか」
みたいに書いたんだけど。
僕は『モテキ』の話を結構あとに聞いたんですけど、
やっぱりそうだったなと思うんですよね。
古賀
うん、そうですね。
糸井
あのときみんなが、
生ぬるい被災地の物語を作っても
何の意味もないんですよ。
あと自分の肩書きって結構厄介で。
ライターだとか編集者だとか、
自分のできることを起点に考える発想を、
僕はなるべくやめようと思ったんです、実は。
その辺りが、さっきの古賀さんの、
ライターとしてという考えと
違ったところなんですよね。
一個人としてどうするかというのを、
とにかく先に考えようと思って。
そうじゃないと結局、職業によっては、
来てもらっちゃ困るとこに
行くことだってあるわけで。

古賀
そうですね、うん。
糸井
僕はだから、
豚汁を配る場所で列を真っ直ぐにする
手伝いみたいな(笑)、
その発想の延長線上で
ほぼ日ができることを、
可能なかぎり考えたかったんです。
でもずっと悩んでました、
わからなかったから。
古賀
そうですよね。
糸井
最終的に友達に御用聞きするって決めましたね。
ほんと、震災がなくて、
こういうことを考えなかったら、
今僕らはこんなことしてませんよ。
古賀
そうですね、うんうん。
糸井
まったくしてないと思うんですね。
どうしてたんだかわからないです。
古賀
そうですよね。
糸井
もっとつまんない、
虚しい小競り合いをしたり。
あるいはちっちゃな贅沢、
カラスがガラス玉集めるみたいなことを
してたんじゃないかな。
それに思想を追っかけさせたんじゃないかな。
カラスがガラス玉を集めるようなことを
僕らはしますみたいに。
もたないですよね、それじゃ。

(つづきます)

第4回 ほんとのことを言う偽物。