
- 古賀
- 震災に関わると決めたとき、
世間的にいいことに見えたり、
あるいは慈善活動とか、
そういうものに見えるって、
いい面と悪い面とあるじゃないですか。
誤解を恐れずに言えば、
糸井さんやほぼ日の活動を見てると、
そこをすごく上手くコントロールしてるというか、
しっかり正しい道を選んでるという感じがします。
俺達はいいことをやってるんだと
じぶんを規定しちゃうと、
結構間違ったことをしそうで。
だから「友達」という最初の起点が、
他とは違うんだろうなと思います。 - 糸井
-
やっぱり吉本さんですよね。
吉本さんは前々から、
いいことやってるときは悪いことやってると思え、
悪いことやってるときはいいことやってると思え、
ぐらい、まったく逆に考えるという。
大元で親鸞という人を考えてるときに
思いついたことなんだろうけど、
吉本さん自身が、
そうしようと思って生きてたのは、
よくわかるんですよ。僕にとって吉本さんは、
手の届かないぐらい
遠くにいる先輩なんですね。
でもその先輩は、
手の届く場所に
いつもいてくれるんですよ。
「それ何ですか」って聞いたら、
近所のアホな兄ちゃんの俺に、
こうだってことを言ってくれるわけ。
その接し方についてこの間、
吉本さんのことを想像しながら僕は、
「偽物だ」って書いた。
吉本さんも偽物なんだよって言うと、
ファンはものすごく怒るかも知れないけど、
つまり、そうなろうとした時点で、
偽物になってるんですよ。

- 古賀
- はい。
- 糸井
- 吉本さんの奥さんは、
吉本さんのことを
「お父ちゃんは偽物だ」
って言うわけ。
なぜならば、
吉本さんちのお父さんがいて、
あのお父さんは本物だった、
うちのお父ちゃんはいい人だけど、
そうなろうとしてなってるから
本物じゃないって。
その話を聞いて、俺、
今さら本物になれないじゃないですか(笑)

- 古賀
- はい (笑)。
- 糸井
- だから吉本さんの方法しかないんですよ。
そう考えると結局、
ほんとのことを言う偽物が、
なれる場所なんですよね。
谷川俊太郎さんなんかも結構、
僕は偽物で本物の真似をしてると
平気で言いますよね。
そういう考え方が姿勢として
あったんじゃないでしょうかね。
それが、ある種上手くいっていて、
社内の人達も、
案外そのことをわかって動けた気がする。
そこ、不思議なぐらい通じたよね。 - ——
- 糸井がこうしようとコンセプトを
述べることはほぼなくて、
いつもと同じようにみんな動いた感じはします。 - 糸井
- だから態度については、
これからも間違わないんじゃないかな
という気がしますし、
間違わないぞということでもありますよね。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- もし間違ったら言ってくださいねって。
ちょっといい気になってたら(笑)。 - 古賀
- なるほど(笑)。
ちょっと、今日のテーマというか、
話を戻すんですけど、
吉本さんだったり、
あるいは矢沢永吉さんだったり、
糸井さんの中のヒーローみたいな人達がいて、
出版のお手伝いとかを
されてきたわけじゃないですか。 - 糸井
- そうですね。
- 古賀
- そのときの糸井さんの気持ちっていうのは、
俺が前に出るというよりも、
やっぱりこの人の言葉を聞いてくれみたいな
感じなんですよね? - 糸井
- そのことでいうと、
僕がとっても驚いたよとか、
いいなと思ったよとか、
間接話法の形で僕の本になるんですよね。
だから自分を前に出す必要はまったくなくて。
おいしいリンゴを売ってる八百屋があって、
その八百屋から買ってくれる人がいたら、
またいいリンゴを売れるじゃないですか。
もしくは、
「売れないからリンゴ作るのやめようと思うんだよね」
っていう人に、
「俺売るから、ちょっと作ってよ」って(笑)。

- 古賀
- (笑)
そうですね、うんうん。 - 糸井
- 具体的に、うちで売ってる海苔とかそうだからね。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- 建造物としてのアートってあるじゃないですか、
ああいうのに似てますよね。 - 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- 古賀さんもそういう仕事してますね。
- 古賀
-
そうですね、うん、はい。
今だったら、
いろんな出版社さんの知り合いがいますし、
この企画をやりたいと言ったら
できるような状態になったと思います。
10年前はやっぱり、
自分がやりたいと言っても、
なかなか実現しなかったりとか、
お願いされるお仕事しかできなかったりして。例えば糸井さんが
『成りあがり』でやったようなことが、
今は『ほぼ日』で毎日のように
できてるんじゃないかなと思うんです。
こんなおもしろい人がいるから紹介したいとか、
あとは「ほぼ日のTOBICHI」でその人の展覧会を開いてとか、
そういう… - 糸井
- 場所づくり。
- 古賀
- はい。
場所を作って、その人達を紹介していく。
だから結構そうですね、
僕が今やりたいことと、
すごく重なる部分があります。
『ほぼ日』の中で毎日、
「今日のダーリン」という
大きなコンテンツはあるんですけど、
「俺が俺が!」って糸井さんが
前に出てる場所ではないじゃないですか。
それよりも、
こんなおもしろい人がいてねっていう場所になってる。
その姿勢というのは、
『成りあがり』の頃から一貫してるのかなと。 - 糸井
- 「あなたには目立ちたいってことはないんですか?」
って聞かれたら、
「ものすごくありますよ」
と言うんじゃないですかね。
ただちょっと掘るだけで、
「いや、いいかも、要らないかも(笑)」っていう。
浅いところでは目立ちたがりですけど、
ちょっと考えると急にどうでもよくなりますね。 - 古賀
- それは、それこそ30ぐらいのときに、
目立って痛い目に遭ったりした経験があるから…。 - 糸井
- じゃないですね。
- 古賀
- からではなく。
- 糸井
- じゃないです。
たかがっていうの、
ものすごく見えた感じがする。
だから、一番目立ちたがりだったのは
高校生のときじゃないですか。 - 古賀
- はいはい(笑)
- 糸井
- たぶん性欲の代わりに表現力が出るみたいな。
- 古賀
-
そうですね。
(つづきます)