糸井重里
・うちの犬は、わりとべたべたしてこない。
「大好きです大好きですわーわーきゃーきゃー」みたいに
全身でよろこびを表す犬も多いのは知っているが。
ぜんぶの犬がそういうものではないよ、ということが、
うちの犬を見ていてよくわかる。
先代の犬も、人より散歩が好きというタイプだったが、
毎晩、ぼくのベッドの足元でいっしょに眠っていた。
いまの犬は、まずは礼儀正しく「c(小)」をすませて、
おかあさんのベッドの枕元に飛び乗り、
しばらくおしりをくっつけていっしょに寝るのだが、
しばらくするとストンとベッドから飛び降りて、
じぶんのベッドでゆっくりひとりになって眠る。
なでられたりすることを望むこともないが、
なでられている間、それを拒否するということもない。
ほんとに、つきあいがクールというか平熱なのだ。
そういう犬だが、ぼくといるときに気が向くと、
唐突にぼくの手のひらをなめはじめる。
凶暴なまでに真剣な表情で、ぼくの手を前肢でおさえる。
手のひら全体をずうっと激しくなめつづけるのである。
左手が終わったら、右手を探してまたなめだす、やめない。
ぼくは、これを愛情表現と思おうとしていた。
しかし、あまりにも激しく荒々しくしつこいので、
愛情ということばにふさわしくなさ過ぎるのだ。
日頃お世話になっているお礼、ということでもなさそうだ。
さらに、手のひらの味や匂いに、ぼくは自信もない。
手を洗ったばかりのことも多々あるからね。
このことについて、いろいろ調べたがわからなかった。
AIには、時期を変え二度も質問したが、要領を得なかった。
で、結局、犬が、馬のアキレス腱だとか、木の塊だとか、
ぬいぐるみだとかを必死で飽きずに噛んでいるように、
理由などなく「手をなめたい」からなめているのだ、
という結論に至ってしまったのであった。
ぼくのほうが「WHY(なぜに)?」とさえ問わなければ、
最初からわかっていたようなことだったのだろう。
◆今日の質問no.071は、「なぜなのかやってることは?」
くせ?習慣?考えたらメールにも書いて送ってください。
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